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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

市場規模は3,000億円超!?誰もが楽しめる試合予想ゲーム“ファンタジースポーツ”がもつ可能性

ファンタジースポーツをご存知だろうか。実在するスポーツの試合で、選手たちの活躍を予想して競い合うシミュレーションゲームの1つのことで、その歴史は古く、19世紀には始まっていたとされている。Statista Research Departmentによると、最も盛んなアメリカではMBLやNFL、NBAなどを中心に、市場規模は1兆円を超えるともいわれている。アナログ発のファンタジースポーツだが、近年ではアプリやオンラインでシミュレーションできるサービスも増えている。

 

そんなファンタジースポーツを日本でも普及しようと立ち上がったのがドリームチームズ株式会社で、同名のサービスを2021年に開始。代表取締役社長を務める荒木敬明氏に、起業に至った経緯やファンタジースポーツの将来性などについて聞いた。

醍醐味はスポーツチームの“監督”や“GM”になれること

まず、ファンタジースポーツとはどういうものなのか。

 

「バスケットボールを例に挙げると、実在する好きな選手を全チームのなかから5人選んで架空のチームを編成し、その個々の選手の活躍を当てていくというものです。スリーポイントシュート、リバウンド、スチールなどの各プレーについてあらかじめポイントが設定してあり、選んだ5人の選手のポイントの合計で順位を競い合っていきます」

このゲームデザインだと、競技性がなく、面白みに欠ける。誰もが日本代表に選ばれるような有名選手ばかりを集めていくからだ。そこでいくつかの工夫を凝らしていくことになる。その1つとして荒木氏はポイントの付け方があるという。

 

「どんなプレーに何ポイントつけるのか、という部分はどうしてもどのファンタジースポーツも似てきてしまいます。そこで異なる指標を入れてゲーム性が高まるようにしています。サッカーであれば、ディフェンスの選手の1ゴールと、フォワードの選手の1ゴールでは、ポイントを変えています。また、イエローカードをマイナスポイントにするといった指標も入れています。また、意見が分かれるようなチャンスクリエイトという指標も入れ、他のファンタジースポーツとの違いを出しています」

 

もう1つのゲーム性を高めるための工夫として、荒木氏は仮想の年俸(期待値)も挙げる。

 

「差別化の点としては、チームを編成するためのコストの部分。ドリームチームズの場合は、選手ごとに仮想の年俸すなわち期待値というものを設定していて、これが試合ごとに変動するような仕組みになっています」

 

仮にその期待値に対して活躍が下回った場合、次の試合では期待値(仮想の年俸)が下がり、期待値以上の活躍をした選手はどんどん期待値(仮想の年俸)が上がっていく。その意味では、ファンタジースポーツはチームの監督的な楽しさに加えて、GM(ゼネラルマネージャー)的な醍醐味も味わえるといえる。

 

2022年度においては、同社はJリーグやWリーグにおけるファンタジースポーツ「ドリームチームズ」を運営した。ただし、これら国内のトップリーグ向けのサービスは、あくまでスタートラインに過ぎない。荒木氏のなかには、「地域スポーツを盛り上げるため」という長期的な視点もあるからだ。

大手IT企業よりも、地方テレビ局のほうが起業しやすい!?

実は、ファンタジースポーツの1つであるドリームチームズを立ち上げた荒木氏は、名古屋テレビ放送(メ~テレ)からの出向社員ならぬ出向“創業社長”である。

 

同氏は2019年に入社後、在籍2年目で応募したコンペ形式の「社内起業家支援制度」で採択されたことをきっかけに、同事業を立ち上げている。

 

「そもそもメ~テレに入った理由の1つが、新規事業をやりたいからでした。というのもメ~テレは僕が入社する数年前から、新しいことへのチャレンジを積極的にしていました。2017年にはコーポレートベンチャーキャピタルも設立しています。僕の個人的な見解ですが、入社数年の若手にとっては、大手IT系企業よりも、新規事業を立ち上げるチャンスにあふれていると感じています」

 

しかし、なぜテレビ局社員がファンタジースポーツの立ち上げを思いつき、採択に至ったのか。

 

「入社し、所属した部署で関わったのが地域スポーツでした。女子バスケットボールやハンドボールなどを取材者として目の当たりにしたときに、単純にプレーレベルが高く、非常に面白いと感じたんです。でも、観客席にはほとんど人がいない。そういうスポーツが愛知県を中心に、たくさんあることがわかったんです。一方で、もともと僕自身、学生時代からファンタジースポーツのユーザーでした。地域スポーツとファンタジースポーツをうまく組み合わせたら、実際に試合を見に来てもらえるきっかけにできるのではないかと考えたんです」

 

ローンチして2年目には、ドリームチームズはJリーグという日本でトップクラスのプロスポーツと手を取り合うことができた。これは、“テレビ局発”という信頼があったからこそ実現した面はあるだろう。

スポーツ中継をする米・メディアが軒並みファンタジースポーツを提供している

では、テレビ局というメディアがファンタジースポーツを提供するメリットはどこにあるのだろうか。

 

「1つは“視聴率に対するエンゲージメントが高くなる”を期待されているのだと思います。ファンタジースポーツをすると、視聴率の向上や有料会員の獲得など、ユーザーのエンゲージメント率は高くなるという結果がでていますし、実際にアメリカではESPNを筆頭に大手のスポーツ中継をしているメディアは、軒並みファンタジースポーツのサービスを提供していますから」

 

ファンタジースポーツというゲームを入り口にして、結果的にそのスポーツのファン層や競技人口の拡大へとつながっていく。そういった意味では、サッカーに詳しくない人でも気軽に購入できるサッカーくじのTOTOに近いかもしれない。しかし、荒木氏はやや方向性が異なると語る。

 

「TOTOの場合、どちらかといえば金銭的な補助の面が大きいかなと思っています。ドリームチームでも売上の一部は団体にお渡ししていますが、ドリームチームズを活用することで、プロスポーツとして見られるという集客の面で意義があると考えています。これは理想論ですが、地域スポーツの集客の面とお金の面、どちらもサポートしていけるようになることが目標です」

 

これまで日本のテレビには、チャンネル数という制限があった。しかし、インターネットや動画配信サイトが発達したことで、マイナースポーツにもライブ中継(配信)が可能になった。

 

つまり、スポーツ中継のノウハウをもつテレビ局が、そうしたマイナースポーツにスポットを当てるハードルは下がってきていると。だからこそ、ファンタジースポーツは視聴者獲得の導線として大いなる可能性を秘めているのだろう。

大事なのは続けること。将来的には3,000億円の市場規模にしたい

冒頭にも書いたように、ファンタジースポーツの歴史は古いが、アプリやオンラインを使った日本でのサービス展開は黎明期にある。しかしオンラインだからこその楽しみ方は、すでにそこかしこで見られると荒木氏は言う。

 

「ユーザーさん同士の交流は、想像以上に活発です。チャットアプリを通じたグループチャットなんかもできて、そこで積極的にコミュニケーションを取るユーザーさんも少なくありません。現代は、スポーツ観戦の方法も多様化しています」

 

たとえばSNSでつながりながら、オンライン配信で一緒に試合を見るという観戦方法があるが、その相手を見つけるときにファンタジースポーツが媒介になり得るということ。

 

「僕たちがオンラインでサービスを提供しているメリットが、そこには出ていると思っています。一緒に予想して競い合う仲間や友達を見つけるとか。ドリームチームズでは、試合ごとにランキングが発表されるのですが、その上位に入賞する常連さん同士があつまって、『今週はこんなチームを作ってみましたが、どう思う?』みたいな議論も繰り広げられているんです。ちなみにランキング上位がどんなチームを編成しているのか、ということもオンラインで確認できるような仕様になっています」

 

日本におけるファンタジースポーツの将来的な市場規模として、荒木氏は3,000億円程度と予想している。では、これからドリームチームズを含めたファンタジースポーツを日本で広めていくために必要なことは何なのか。

 

「最も大切なのは続けることだと思っています。法律的なところでの整備ももちろん不可欠ですが、それ以上にちゃんと僕たちサービス事業者側がちゃんと継続して、毎年スポーツの新シーズンが始まったときに、“今年もやっているんだ”とならないといけません。継続していくことで、ユーザーさんを積み上げていくことができます。当たり前のように、プロスポーツの傍らにある予想システムとしての地位を確立できれば、アメリカに近い市場規模まで近づくことは不可能ではないと考えています」

荒木 敬明

Takaaki Araki

ドリームチームズ株式会社 代表取締役社長

岐阜出身。中央大学卒業後、2019年に名古屋テレビ放送(メ~テレ)に入社。入社2年目で応募した「社内起業家支援制度」で採択され、2021年5月にドリームチームズ株式会社を設立し、CEOに就任。ファンタジースポーツ「ドリームチームズ」の普及を通じ、地域スポーツを含めた日本全体のスポーツ業界を活性化させるべく奮闘している。

  • 公式Facebookページ

取材:遠藤由次郎

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