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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

「クレカ不正利用を判定しEC事業者の収益増を」不正利用総額は430億円時代の対応法

年々増え続けるECサイトにおけるクレジットカードの不正利用。これに立ち向かうべく2012年イスラエルで創業したのがRiskified(リスキファイド)だ。どんな技術で、どう不正に立ち向かうのか。さらにはEC事業者にいかに寄り添っていこうとしているのか。最先端技術を用いたそのサービスを紐解く。

クレジットカードの不正利用は、オンラインショッピングが一般的になった現代において、大きな課題になっている。

 

日本クレジット協会は2022年、クレジットカードの不正利用総額が過去最高の436億円にのぼり、1997年の統計開始以降過去最悪を記録したと発表した。先日はシンガー・ソングライターのあいみょんが20万円のクレジットカード不正利用被害を受けたことを明かし、話題になった。もはや不正利用は身近な問題だ。

不正で最も多いのがカード番号の盗用で、フィッシング対策協議会によると、カード番号を盗むフィッシングサイトのURL数は過去3年で約6倍の約30万件に急増しているという。実際に被害にあわなくても、フィッシングサイトに誘導された経験がある人は少なくないだろう。

 

こうしたサイトに導入するメールなどで「怪しい日本語」に遭遇することもある。「日本はこれまで比較的不正が少なく、欧米と比べクレジットカードの不正対策が遅れていると言われていました。だからこそ近年、海外の犯罪組織からもターゲットにされるケースも多く、今後も増えてくると思われます」と語るのは、Riskifiedのパートナーシップリードである河合秀樹氏だ。

 

コロナ禍で家にいる時間が長く、また非接触が推進されたこともあり、インターネット上でのショッピングは市場規模が拡大を続けている。2021年には国内BtoC-EC市場規模は20兆円超の大台を突破。その約8割がクレジットカード払いで決算されている。「すなわち日本における約16兆円が不正の対象となります」(河合氏)

機械学習によりメンテナンスは不要で、チャージバックも保証する

こうしたEコマースにおけるクレジットカードの不正利用に対処してくれるサービスが、Riskifiedだ。その特徴のひとつが、機械学習アルゴリズムを取り入れた、AIの不正対策プラットフォームであること。

 

実は日本の事業者は従来、「ルールベース型」と呼ばれるサービスを採り入れてきた。これは例えば「海外発行のカードはブロックすること」「10万円以上の決済はブロックすること」などのルールを設定、それに沿って不正検知をするという技術だ。

 

「従来のルールベース型は、継続的なメンテナンスが必要となります。不正利用に関しては日々新しい手口が生まれていますが、それに対応するようにアップデートし続ける必要があるからです。一方、Riskifiedは機械学習によって自身で最適化し、さらに業界最大規模のデータサイエンティスト達が専門的にAIモデルをトレーニングするため、メンテナンスの必要がありません」(河合氏)

 

このように機械学習と人によるアプローチにより、まだ被害にあってないタイプの不正にも、先回りして対応することが可能だという。これまでのルールベース型では新たな手口に対しては事後対応になっていた。

 

さらにRiskifiedでは、チャージバックに対する保証を提供している。チャージバックとは、クレジットカードの保有者が不正使用などの理由により利用代金の支払に同意しない場合、クレジットカード会社がその代金の売上を取消しにすること。そうなるとEC事業者側がクレジットカード会社に代金を返金するなど、関連する業務を担う必要がある。

 

これに対してRiskifiedは完全な「チャージバック保証」を提供している。今まではEC事業者の負担となっていたチャージバックを、Riskifiedが対処してくれるのだ。自社の技術に自信を持っているからこそできる保証だろう。

不正利用の誤判定を防ぎ、注文増を目指す

こうした不正利用に対するリスク対策はEC事業者にとって重要だが、「疑わしきはすべて不正利用とみなす」のも回避したい。もしその中に正当な利用が混在していたら、それは売上機会の損失につながるからだ。

 

「弊社のアンケート調査では、ネットショッピングで決済がうまくできなかったとき、購入を諦める人が全体の4分の1以上います。これは非常に大きな機会損失です」と語るのは、事業開発を担当するナボン恵子氏だ。

たとえ自身の入力ミスであっても、うまく決済できないと多くの人が面倒な気持ちになる。ましてやそれが不正利用と見なされればなおさらだ。だからこそRiskifiedでは、誤判定を防ぎ、承認注文を増やすことを目指している。

 

「海外の事例ですが、大手百貨店でクレジットカードの承認率が約2パーセント上がったことがありました。約2パーセントといえども、大きなチェーン店にとっては相当な収益増になります」(ナボン氏)

 

海外ではPRADA、DIESELといったアパレルブランドや旅行予約サイトBooking.comなどがRiskifiedの顧客である。日本では合同会社DMM.comや株式会社ユナイテッドアローズも採用を決定した。誰もがその名を知る企業だけに、クレジットカードを利用した売上の高さは想像に難くない。だからこそ、たとえわずかでもクレジットカードの承認率がアップすると、それがもたらす恩恵は大きい。

安心・安全かつスピーディーに買い物したい利用者に応える

このアンケート調査では、ネットショッピングの際に面倒だと感じるシーンについても聞いている。その結果、アカウント登録や配送先情報の入力に次いで、SMSを使った本人認証や、3Dセキュア(ワンタイムパスワード等)を面倒なことに挙げる人が約3割いる。さらに、こうした「面倒くささ」が理由で買い物をやめた経験がある人は、約56パーセントにも及ぶ。

 

「利用者は安心・安全を求めつつも、一方でスムーズに、スピーディーに買い物をしたいと思っています。こうした安心・安全とシームレスなショッピング体験のバランスが、EC事業者にとって大事です」(ナボン氏)

Riskifiedは不正検知のスピードに対しても自信を示す。例えば従来型のリスク対策でも利用者のデバイスの感知は可能だが、Riskifiedは「デバイスのなりすまし」も検知する技術を持つ。

 

また購入の際に利用するメールアドレスがいつ作られたかも判定し、不正かどうかを見抜く。クレジットカードの不正利用の多くが、カード番号などを不正に取得したあと、新たに作られたメールアドレスで利用されるからだ。

 

「こうした不正検知をRiskifiedは最新技術とAIで一瞬にして判断します。スムーズな決済ができることで顧客満足度につながり、それが事業者の売上増につながります」(ナボン氏)

ポリシーを濫用する利用者も特定する

さらにナボン氏はRiskifiedの強みとして、海外事情に強いことを挙げた。近年海外のECサイトの傾向として、決済時の不正からポリシー濫用被害へと拡大しているという。

 

販売ポリシーに対する不正とは、一例として「一人一個まで」という限定販売ものに対し、複数のアカウントを作成して何度も購入するケースが挙げられる。こうした行為は多くの場合、商品を転売する「転売ヤー」という存在にも紐づく。さらに別の例としては「初回10パーセントオフ」という特典を、やはり複数アカウントを取得して何度も利用するケースもある。

 

加えてアパレルなどでは、返品ポリシーの濫用も挙げられる。例えばひとつのセーターしか買うつもりはないのに、5枚のセーターをオーダーして試着、最終的に残りの4枚を返品するという行為だ。中にはこうした行為を常習的に行う利用者も存在する。

 

「こうしたポリシーを濫用する利用者は、EC事業者のマーケティング戦略からすると好ましくありません。ウォールストリート・ジャーナルの調査によると、返品処理にかかる費用の割合は、その商品の価格の26パーセント以上にものぼります」(ナボン氏)

 

Riskifiedではこうしたポリシーを濫用する利用者を正確に特定し、不正とみなす。これにより転売ヤー対策、そして返品処理にかかる費用の軽減化を目指す。

Eコマース市場で目指す、大きな目標

Riskifiedがイスラエルで創業したのは2012年。そこから約10年後の2022年度には、オンライン流通取引における判定額は約14兆円にのぼった。現在世界186カ国で不正の判定に対応。今後は世界第4位のBtoC市場と言われる日本市場で、さらなる事業拡大を目指している。

 

「Riskifiedが目指すのは弊社の成長だけでなく、EC事業者の収益増。RiskifiedとEC事業者、Win-Winの関係を築ければと思っています」(河合氏)

 

「大きな目標ですが、RiskifiedはEコマース全体の健全化を目指しています」(ナボン氏)

河合秀樹

Hideki Kawai

Riskified パートナーシップリード

Microsoftにてプロダクトマネージメント、PayPalにてChannel Partnerリード、そしてマネーツリーの営業部長として、IT、決済、フィンテックの各分野で要職を経験。日本市場における新規事業やビジネスの立ち上げに焦点を当てて活動し、企業の事業拡大に大きく寄与した。

ナボン恵子

Keiko Navon

Riskified アカウント・エグゼクティブ

Riskifiedで2020年よりジャパン・マーケット・スペシャリストとして日本市場全般を担当し、現在はアカウント・エグゼクティブとして活動。フィンテック業界に長年携わり、特にEコマースに精通。出身は東京で、14年間のイスラエル滞在を経て、2023年夏に帰国。Reichman University (旧:IDC Herzliya) でグローバルMBA (経営学修士) を取得、専門は事業開発と戦略。

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