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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

EV充電がおもてなしに? 充電器「PLUGO」がデザインする脱ガソリン社会

世界的な潮流に乗り、政府が2030年代にはガソリン車の廃止目標を発表するなど、日本でも脱ガソリン社会への環境整備が進んでいる。各自動車メーカーではEV車(電気自動車)の開発が進み、「乗り心地が良い」「音が静か」といった評判を耳にする機会も増えた。今回は、そんなEV車のユーザーからの気づきから生まれた、EV車向けの充電器「PLUGO」に着目。オンライン技術を用いることで、EV充電にどのような価値が生まれているのか? 同サービスの開発・販売をする、株式会社プラゴ代表取締役CEOの大川直樹氏に話を伺った。

大川 直樹

Naoki Okawa

株式会社プラゴ代表取締役CEO

1980年生まれ。2002年慶應義塾大学法学部卒業。株式会社電通に入社し、携帯電話市場におけるマーケティング業務に従事。2007年子会社のインタラクティブ・プログラム・ガイド社に出向し、放送通信連携に関わるベンチャー企業の経営に携わる。2010年大川精螺工業株式会社入社、取締役就任。2013年メキシコに駐在し、現地法人・工場を立上げ。2018年より日本に帰国し、代表取締役に着任。同年、株式会社プラゴを設立。

新しいおもてなしとしての充電サービス

大川氏のルーツは、創業1934年の自動車部品製造会社を営む家庭。家業に携わるなかで、部品の低コスト化が進むなか、中長期的に新しいチャレンジをしなければいけないという危機感に襲われていたという。2018年、EV車で東京から軽井沢へ向かった時に転機が訪れる。初めて乗るEV車は、デザインは先進的で居心地も抜群。しかし、非常に苦労した経験だったと大川氏は振り返る。

 

「思った以上に電力を消費して、軽井沢に着いた頃には充電がほぼ0%になっていました。充電スポットを探したものの見つからず、町役場にある急速充電器を借りて充電することになりました。そして、そこは長蛇の列になっていたのです」

 

その日から、同氏はこんな疑念を抱くようになる。

 

「自動車メーカーさんがどんなに良いEV車を作っても、社会のインフラがこの状況だったら普及しないのでは」

 

現在の国内EV普及率は0.9%、つまり100台に1台。対して目的地にEV充電器のある車室(駐車場の一台分の空間)は全体の0.6 %(プラゴ調べ)なので、数が足りていないのは明らかだ。2025年のEV普及率は推定4.1%(25台に1台)というのを考えても、充電スポットの増設は急務に思えた。

 

当時すでにEV車用の充電器メーカーは存在した。ユーザー登録をすれば充電でき、充電時間に応じて料金を払う。けれど、果たしてそれでユーザーは満足するのか。大川氏はこんなニーズに気づく。

 

「本来であれば、目的地で充電ができることが確約された上で旅に出たいわけです。例えば、充電の予約ができたり、空いている充電スポットを検索できたり。そんなユーザー側に立った充電システムを考えた時、こうしたサービスは目的地側にとっての新しいおもてなしの形になるのでは?と思いました」

おもてなしには普通充電が好相性

これまでにない、新しいユーザー体験ができるEV充電器を。そんな大川氏の思いから誕生したのがPLUGOだ。ここでは、オリジナルモデルであるPLUGO BARの具体的なサービスを見ていきたい。

まず、ユーザーはWebアプリ上から空いている車室(駐車スペース)の予約ができる。予約時間になると、予約中のサインとして柱型の本体が赤く光る。予約した車が到着すると、センサーが感知して「予約中の車室です。予約中の方はチェックインしてください」とアナウンスが流れる。つまり予約している車以外は停められない仕組みになっている。チェックインすると本体が緑に変わり、充電が可能になる。

 

さらに今後は、通常の電力か再生可能エネルギーかを選べる機能が加わる予定であるという。設置場所である空港やホテルのチェックインとの連動や、将来的には割引クーポンの受け取りができたり、ソフトウェアがアップデートされることで様々なサービスを付与できるのもPLUGOの特徴だと大川氏は話す。

 

「PLUGOの設置後も、ユーザー体験に新しい価値が生まれていきます。様々なビッグデータを活用するので、設置場所や特定のユーザーに合わせたサービスのカスタマイズも可能です」

 

現在は茨城県のゴルフ場に導入されており、導入した施設では、意外なことが判明している。これまでは充電器がないためガソリン車で来ていたが、充電器の存在を知ってからはEVで来るようになりました、というお客さんが多いというのだ。

「今後EV充電は、生活のルーティンの一部になっていきます。例えば毎週あちこちのゴルフ場に行っていた方が、EV充電を兼ねて特定のゴルフ場に行くようになる。そういったことが様々な目的地で起こると思います」

 

先述のように、現在EV車ユーザーは100人に1人。その数字だけを見ると、これまで施設としては、そこへ投資する意味を見出しにくかった。だがPLUGOでは、充電におもてなしを掛け合わせることで、その壁を壊していく。そこでは、急速充電ではなく普通充電の必要性が活きてくると大川氏は言う。

 

「PLUGOは、ゴルフ場やホテルや旅館といった駐車時間が長い場所に導入していただくことで、ユーザーにとっては長く停めている間に自然と充電が完了している。現在、サービスエリアなどに急速充電器が普及し始めていますが、さっと立ち寄って充電するとなると、結局時間のロスになる。これからは施設のおもてなしとして、普通充電のインフラを増やすべきだと思います」

 

金額的にも、普通充電器は急速充電器に比べ10分の1以下の価格で設置が可能。EV車ユーザーが急速に増える時代においては、1台の急速充電器ではなく10台の普通充電器を導入し、より多くのニーズに対応していく必要がある。

デザインされた充電体験

現在、PLUGOには3つのタイプがある。わずか155mm四方のスリムな柱型のデザインが特徴のPLUGO BARに、よりラグジュアリーな印象のPLUGO WALL。そして、2021年に発表されたばかりの、車止めのような見た目のPLUGO BLOCK。どれも初見では充電器だと気づかなさそうな独創的なデザインは、全てCDO/デザイナーの山崎晴太郎氏によるもの。なかでもPLUGO BLOCKは山崎氏のデザイン思想を究極に表しているものだと大川氏は指摘する。

 

「山崎氏が目指すのは、彼の言葉を借りると“環境ありきのプロダクトデザイン”です。EV充電スポットは今後の社会インフラになるものなので、(威圧感がある)電気設備がボコボコ乱立するような環境は避けるべきです。景観ノイズを最大限に抑えるには?を考えた時、今あるものに機能だけを付加し、新しい造作を加えない、というデザインにたどり着きました」

 

「社会を右脳で刺激する」がポリシーという山崎氏。彼のデザインには社会を変える力がある、と大川氏は続ける。

 

「環境に配慮したすっきりしたデザインは重要です。ですが、これまでにない体験価値をどう生み出すか?という点では、物の意匠だけでなく、サービス設計、ユーザーサービス、ユーザーインターフェース全てが、一貫してデザインされている必要があります」

デジタル技術がサステナブル消費を促す

今後は、ホテルやゴルフ場よりも滞在時間が短くなる商業施設や空港ターミナル駅、工場などの法人にも設置場所を広げていく。ソフト面では、予約機能に加えて、今後は課金システムやグリーン充電を選べる仕組みなども近々ローンチ予定だ。大川氏は、EV車の普及に向けた大きな課題として、再生可能エネルギーをあげる。EV車はエコで環境にやさしいイメージがあるが、実際に使う電気が、火力発電などによる電気なら本末転倒だからだ。

 

「再生可能エネルギーを適切に使うには、まだまだステップは多いです。まず、国策でのエネルギーの取引市場の整備が目下行われていますし、不安定な再生可能エネルギーを物理的に蓄え、それを消費者に渡していくテクノロジーも必要です」

 

2030〜40年に向けて、エネルギー市場もテクノロジーも、また法の整備も、着手すべきことは山積みだ。とはいえ、これまで発電元とユーザーは物理的な送電技術でしか繋がっていなかったのが、今ではデジタル証明書やブロックチェーンを使えば遠隔地でも好きなエネルギーを選べるようになったのだから、かなりの前進と言える。PLUGOでも「グリーン充電」を選ぶと、再生可能エネルギーの事業者によるデジタル証明書が付与され、再生可能エネルギーで充電したことが証明されるシステムを開発中。実際グリーン充電は、普通充電の数%〜数十%割高だが、ユーザーが自ら選択することに意味がある、というのが大川氏の見解だ。

 

「どちらを選ぶにせよ、自分で選ぶことでエネルギーに対する意識が醸成されていくはずです。PLUGOがサステナブル消費を喚起するきっかけになれば嬉しいです」

 

繰り返しになるが、PLUGOは単なる充電スポットではない。ガソリン車が廃止され、EV充電が街のあちこちに点在する未来の社会を想像してほしい。そこでは、PLUGOの存在感はますます大きくなっているはず。

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