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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

アパレル、日用品、スポーツ……利益を生んでいない在庫は8割! 無駄をなくす分析・管理クラウド「フルカイテン」

アパレル、日用品店、スポーツショップ……など私たちの暮らしに身近な小売業だが、その在庫消化を支えるサービスがあるのをご存知だろうか。「FULL KAITEN」だ。在庫を利益に変えるための様々な在庫分析・管理機能を、クラウドサービスとして提供する。導入ブランドは現在170以上、年商30億から100億を超える大企業も多い。売れるはずもない量の生産・消費を回避するという意味で、サステナブル経営の文脈でも注目が集まっている。サービスの強さを探るべく、フルカイテン株式会社 代表取締役の瀬川直寛氏に話を伺った。

8割を占める不良在庫を利益に変える

在庫を利益に変えるというのは、小売業にとって業務の根幹とも言える。在庫は収益になることもあれば、不要に抱えすぎれば赤字に転じる原因にもなる。 「在庫を利益に変える」というフルカイテンが目指すところは一見当たり前にも思えるが、一体どういうサービスなのか。

 

「在庫を利益に変える。実は、これができていない企業さんは結構多い。2021年に弊社サービスを導入いただき2020年4~6月期のデータが得られた企業さんに導入時点で行った調査では、全商品の20%から利益の8割が生まれていることが判明しました。極端なケースでは、全商品の0.1%で8割の利益を生んでいたブランドもありました」

数字だけを見るとそんなことが可能なのかと驚くが、わずかな売れ筋商品が経営を支えているケースは、業界では「よくある」そう。売れ残った在庫は値引きして販売する他ないが、これでは赤字は免れるかもしれないが十分な利益はとれない。

 

「売れ筋を用意しなければ。でも、売れるかわからないのでとりあえず多数の在庫を用意。そのなかから偶然売れるものが出てくる。というバクチ的なところがこの業界にはあります。それもあらゆる判断が “経験ドリブン”といいますか、個人の勘や考えに基づいてなされている。なんとなく数が出ている商品を「売れ筋」としてしまう。でも、もし在庫が少なくてもこの先売れなさそうなら、不良在庫と言えますよね。その逆も然り。現状の在庫の数だけでは在庫リスクは測れないんです」

 

利益を生み出していないにも関わらず、在庫を占めていた8割の商品。そのなかから、不良在庫化を予見して、もしくはきちんと対策すれば売れるはずの商品を探し出し、早期に適切な手を打っていく。これにより、不要な値引きを極力抑えながら、在庫を利益に変えていける。業務効率化だけでなく財務改善にも直結するのがフルカイテンの強みだが、ここには瀬川氏が過去に直面した3度の倒産危機の経験が生きているという。

以前は、ベビー服のEC事業を展開していたという瀬川氏。詳細は割愛するが(詳しく知りたい人はフルカイテンのnoteを)、在庫をむやみに増やしすぎたり、送料無料の金額設定を見誤ったりしたのが原因で、3度の財務危機に陥った。しかしその都度、リスクになる不良在庫やまだ可能性のある不良在庫、はたまた客単価が上がる商品などを抽出する独自のロジックを考案しては危機を乗り切ったのだとか。これらが原型となっているからこそ、フルカイテンには“生きたロジック”があるのだ。

分析は先行指標を。AI予測は外れる前提で

様々な角度から在庫を分析する機能があるが、メインは「クオリティ分析」と呼ばれるもの。下図のように、「この先何月何日までに売り切れるか?(X軸)」「この先どれ程の売上を生むか?(Y軸)」という2つの軸で在庫一つひとつを評価し、店舗(実店舗・EC)ごとの在庫の「質」を可視化していく。これを使うことで、売り切りたい期日に向けたペースに沿って売れているかどうかが一目瞭然で、早期に手を打てる。その際にも、過去の傾向から、打ち出しを強化すれば定価でもまだ売れるのか? もしくはある程度値引きしないと動かないのか? などを予測してくれるので、適切な対策を取ることができる。

ただ、当然こうした販売分析は、これまでも各ブランドで行われてきたはず。それに対して、フルカイテンの分析の強さはどんなところにあるのか? 大学時代には慶應義塾大学理工学部で、統計の理論を使った研究を様々に行っていたという瀬川氏。小売業界に入ってすぐに、こんな衝撃を受けた。

 

「周りが行っている在庫分析の手法が、統計のお作法と違うことにはすぐ気づきました。統計学では、未来を予測するには必ず『先行指標』を使いますが、この業界では結果を表す『遅行指標』が当然のように使われていたのです」

遅行指標と先行指標のイメージ図 

 

一般的に、データ分析の指標には大きく2種ある。何かの結果を表す「遅行指標」とこの先の結果に影響を与える「先行指標」。小売業では、在庫が何%消化できたか? を表す在庫消化率が重視されるが、これを参考に未来の販売計画を立てることが多いのだという。結果を確認することは大事だが、在庫消化率は遅行指標であり、統計学的には未来予想に使える数字ではない。代わりに見るべきは、各商品の完売予測日や売上予想などの先行指標だ。まさにこれらは、フルカイテンで提供しているデータに重なるもの。加えて、AIについても統計学の考えを基礎にしている、と瀬川氏は続ける。

 

「統計学ではAI予測は『外れる』というのが常識です。特に、予測後に起こる不測の事態にAIは全く太刀打ちできない。例えば緊急事態宣言などはもちろん、販売スタッフの突然の欠勤や、ライバル店舗の突然の値下げなど、事態の変化は日々起きるもの。AI予測は外れる。だからこそ早く気づき、悪化する前に手を打つ。という部分を大事にしています」

表面的なサステナブル経営では通用しなくなる

不要な在庫・廃棄を抑えられるという意味で、フルカイテンは環境配慮の文脈からも注目度は高い。瀬川氏は「大量生産が必ずしも駄目なわけではない。売れるはずもない量を大量生産することが問題」と前置きした上で、身近な例を取り上げる。

 

「ちょっとしたTシャツ(100g)を1枚作るのに、3トンの水を使います。これを聞けば、地球規模で水不足が深刻化する今、環境負荷がどれほどかイメージしやすくなるはずです。さらにこれが売れるはずのないものだとすれば、社会に対する負のインパクトは甚大です」

アパレルブランドの「サステナブル」転換が次々と起きているように、小売業にもSDGsやESG経営が求められる時代。やはり業界全体の環境意識は高まっているのだろうか?

 

「残念ながら、ポーズとして表面的に打ち出している企業さんがまだまだ多いのではないでしょうか。私も経営者として、そうした企業の気持ちも理解はできます。でも、それ以上に世の中の変化をひしひしと感じていて。例えば今、高校生が課外授業で日本のファッション企業の採点などをしているのです。そうした教育を受けた若者が、既に社会に出始めている。企業が今後取らないといけないスタンスは、もう明らかだと思います」

 

ここ数年、同様の変化があちこちで起きている。それらを過小評価してはいけないと瀬川氏は警鐘を鳴らす。経営者にとっては、そうした部分に資金や人材の投資をする時期と言える。

 

「日本においては、もう『物不足』ではなく『物余り』の時代です。物欲が満たされて幸せを感じることは随分減りました。もっとその瞬間瞬間の、個々のちょっとした願いが叶えられた時に心が動かされる。幸せの価値観が細分化しています。にも関わらず、多くの在庫ビジネスでは、未だに大量の在庫を用意することが顧客の幸せにつながると考えられている」

 

物量勝負ではなく、個別のニーズに応える付加価値を生み出すこと。そこに投資するためには、小売企業が今よりもっと利益体質に変わる必要がある。フルカイテンが未来を見据えた企業に注目されている理由は、こんなところにもある。

「利益の拡大」の時代へ。業界全体で利益体質に

導入ブランド・企業一覧には、ミズノ、オンワード樫山、アーバンリサーチ、スリーコインズ、ムラサキスポーツといった、全国展開している有名なブランド名や社名がずらり。年商30億円以上の企業が多いのも特徴だ。そこには、こんなわけがあると瀬川氏は話す。

 

「それほどの規模になると、仕入れ、販売、マーケティングなどと部署や機能が細分化してくるからです。結果、在庫や業務の実態が誰からも見えない状態に陥りやすい」

 

実態が正確に把握できなければ、適切な戦略は打てない。その上規模が大きいとくれば、他部署や販売スタッフへの共有も課題になる。とある全国展開する有名ゴルフチェーンのクライアントでは、16.4%だった欠品率が2.9%まで下がった(=機会損失が減り売上に繋がった)という。かつ在庫も3割減ったというから、必要な商品を必要な量だけ増やして欠品率を抑えられたことになる。導入数を着実に増やす今、フルカイテンが実現に向けて動いているのはこんなことだという。

「メーカー、商社、卸企業に向け、新たなサービスを立ち上げる予定です。これまでの在庫に代わり、どれくらいの生産量が適正なのか? という予測機能を設けます。今後、在庫と生産量の2つの予測機能が揃えば、サプライチェーン上に流れる在庫量を適正化しつつ、余計な利益を失わないまま在庫消化を進めていくことも可能になります」

 

これまで在庫で培った機能を生産量にも展開していくわけだが、単なる転用ではない。フルカイテンでは現在、各企業の全販売チャネルの売上データを毎日蓄積している(例えば、2021年だけで約4,000億円分のデータが蓄積)。2023年度には売上データ1兆円蓄積見込みで、それらを活用することで、精度の高い需要予測ができるようになると瀬川氏は言う。例えば、A社が商品○○を売ったらB社の商品○○に悪影響が出る、などの相関関係の計算もできるようになる。

 

「日本のような資本主義が成熟しきっていて、かつ人口減少・高齢化も進む国においては、売上の拡大から利益の拡大へと、フェーズは変わっていくでしょう」

 

何もかもが一人勝ちでは持続しない時代において、同社は業界全体で利益体質に変わることを目指す。同社から生まれる良い循環に期待したい。

瀬川 直寛

Naohiro Segawa

フルカイテン株式会社 代表取締役

慶応義塾大学理工学部卒。IT企業数社を経て、2012年5月にベビー服 ECで起業。在庫が原因の3回の倒産危機から『FULL KAITEN』を着想し、在庫回転率が17回転を超えるなど事業を成長させる。EC事業を売却し、クラウドサービス『FULL KAITEN』を提供中。

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