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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

なぜファミリーマートのレジ頭上には大型画面が? 平均滞在時間5分を狙った仕掛け

モノを買うのも、オンライン。情報を得るのも、オンライン。いまや私たちの生活はオンラインに頼り切っているが、そうなる前から変わらず足繁く通うリアルな場所がある。その一つが、コンビニエンスストアだ。

 

そこに注目し、店舗のメディア化にいち早く踏み切ったのがファミリーマート。レジ上に大型デジタルサイネージ「FamilyMartVision(ファミリーマートビジョン)」を設置し、消費者とオフラインで繋がれるタッチポイントであることを生かした施策を進めている。その効果とは、いかに? FamilyMartVisionを運用する株式会社ゲート・ワンの取締役COO・速水大剛氏に話を聞いた。

宣伝だけでなく、エンタメ性のある「見たい」番組を提供

株式会社ゲート・ワンは、店舗に大型デジタルサイネージを設置しメディアとしての機能ももたせつつ、その延長でリアルリテールの活性化も狙うことを目的に2021年9月に設立された。

 

「コンビニでそういった取り組みがされるのは、初めてだと思います。さらに店内取扱い商品の販促メディアとしてだけではなく、オリジナル番組をもちメディアとして成長させていこうという位置付けで捉えているのはうちだけではないでしょうか」(速水大剛氏、以下同)

 

初設置は、実証実験を開始した2020年9月。「ミタイ験の日常へ」をコンセプトとし、生活者の「見たい」という気持ちを刺激し、「未体験」の世界へ誘ってくれるような映像コンテンツを配信している。内容は、旬なエンタメ情報をはじめ、アート、ニュースなどさまざまだ。

「単なる広告ではなく、お客様の店舗体験をどう豊かに楽しくしていくかという大きな考え方で、このFamilyMartVisionを活用していきたい。コンビニは日常生活の動線上でたくさんのお客様が立ち寄る場所なので、メディアとなるポテンシャルが大いにあります」

 

ファミリーマートは全国で約1万6,500店舗を展開し、1日当たり平均で約1,500万人が来店するという。FamilyMartVisionは現在約7,000店舗に設置されており、ファミリーマート店舗全体の4割ほどの設置率だが、これから年末にかけて7割くらいに拡大する見通し。これは、訪れるファミマにはほぼ設置されているという感覚の数字だそう。実際の来店客はもちろん、さらにはオンライン上でのバイラルも狙う仕掛けを作っているという。

 

「吉本興業さんと組んだお笑いのコンテンツや、ソニー・ミュージックエンタテインメントさんと組んだ音楽系のコンテンツなど、思いがけずこんな番組に出合えたという『楽しさ』を大切にしています。エンタメ系でいうと、アーティストの新曲のMVをFamilyMartVisionで流したり。三面スクリーン仕様となるので、『ここだけしか見られない』価値のあるものとなります。『これをまた見たいからファミマへ行こう』となり、一定のファンのコミュニティにおいてSNSなどで拡散される、という波及効果も期待できます」

 

コンテンツの見たさに隣町のFamilyMartVision設置店へと訪れるという事例もあったという。確かに、「わざわざ」足を伸ばしてコンビニへいく動機になり得る。コンビニ選びは「利便性」だけというのがこれまでの常識だったのが、そこに新たな価値が宿るのだ。

 

「実際にFamilyMartVision設置店と、未設置店の1日あたり平均来店客を比較すると、設置店のほうが2人以上多いというデータも出ています。店舗数が増えることによって、1日あたりの平均来店客数がより増えるでしょう」

ファミペイとの連動で、消費者の「欲しい」気持ちを底上げ

顧客体験と並行して、商品の売上にも貢献している。中でも高い効果が出ているというのが、売り場連動企画。新商品の発売時期に合わせてサイネージで販促広告を打つという連動だけではなく、店頭の棚作りをも連動させるというものだ。

2023年3〜4月の2週間の期間で実施された日本コカ・コーラ社の「ジョージア」ブランドの店頭プロモーションの例がある。ファミリーマート全店のコーヒーカテゴリー全体は、前年同期比117%に。ファミリーマートで取り扱う「ジョージア」3商品合計の販売目標に対する達成率は139%と、前年同期実績および目標を大きく上回る販売実機となった。FamilyMartVision設置店舗と未設置店舗の比較では、設置店舗は未設置店舗の111%という高い販促実績を残した。

また、ファミリーマートの決済サービス「ファミペイ」にて顧客アンケートを実施したところ、ブランドリニューアルしたジョージアの認知度は、店頭POPのみを経由した認知率に対し、店頭POPとFamilyMartVision経由での認知度が21ポイント高いという結果となった。

「売り場を巻き込んで連動させていくのは、ステークホルダーが多く大がかりなプロジェクトでもあります。企画を実現させるにあたり、ファミリーマート社内だけでも、マーケティング本部・商品本部・営業本部・デジタル金融事業本部という4つの部署の連携が必須です。この4つの部署を連携させ、加盟店さんにアプローチしていくわけです。現在はどういったクリエイティブだと効果が出やすいかについて、だんだんラーニングがたまってきている段階です」

 

とはいえ、コンビニに行った際にこういったサイネージの類のものを見ているという人は、そこまで多くないのではないか。自らを振り返ってみても、見ている記憶もあまりなかったりする。

 

「そうなんです。だからこそ『お店に入ったら自然と見ちゃうよね』という行動を、いかに作るかが、カギなんですよね。店頭の平均滞在時間は約5分、レジ前の平均滞在時間は約27秒といわれています。FamilyMartVisionの視聴タイミングは、6割がレジで会計をしているとき、残りの4割は店内を回遊しているとき。店内に滞在している5分間の広告接触チャンスを増やすために『圧倒的に面白い』か『圧倒的にトクをする』をベースとした番組作りをしています」


そこで役立っているのが、属性情報や購買履歴。実際に何を購入しているかを探り、消費者の興味を探る。


「ファミマに行くと欲しいものがすぐに見つかるとか、ちょうど欲しいなと思っていたものが安くなっているとか。そういったものがお店に置いてある状況を効果的に作り出し、商品開発に繋げていくこともできます」

 

消費者にとって本当の意味でメディアとしての価値づけができ、売上にも繋がり、商品開発にも役立ち、ひいては生活者の幸せにも繋がる。そんな、新しい可能性を幾重にも秘めたメディアでもあるのだ。

近い未来は、広く情報を伝えるメディアに立ち返る

SNSもメディアの主流となっている時代。新しいメディアとして発展しつつあるFamilyMartVisionだが、これからのメディアの変遷についてはどのようになっていくのだろうか。新しいメディアが出続けていくのか? 速水氏に聞いてみた。

 

「テクノロジーがどんどん進化していくことで、一方的に情報を見るというよりは、消費者とインタラクションするメディアが増えていくと思います。一方で、私の個人的な見解なのですが、世の中に広告とのタッチポイントが増えすぎて消費者が情報過多に疲れてしまう状況も訪れるのではないかなと。そうなったときに、新聞のようなより広い情報を広く伝えていくメディアに立ち返るのではないか、とも感じています」

 

自分の興味範囲にヒットする情報をピンポイントで享受できるのも忙しい私たちにとっては効率的だが、さまざまな情報に接することができたら、より新しい視野が広がりそうだ。

 

「ザッピングして見出しで興味あるテーマを発見できるのが、新聞のいいところ。一方で自分の興味範囲でカスタマイズされた体験には、そういった出会いが少ない。そういった意味でも、FamilyMartVisionのポテンシャルは高いと思います。強制的に見せるメディアではないので、視聴者の時間を奪うこともないですし。日常生活動線上でふらっと寄ったときに得られる情報でありつつ、接触頻度が高いため効果的に刷り込むこともできるのです」

 

いろいろな視点でさまざま情報を届けるメディアが、近い将来は復活の兆し。と同時に、進化したメタバースやAIが掛け合わさり、ディスプレイなどはどんどん進化するのも楽しみだ。それが「コンビニエンスストア」というリアルなリテールの場で繰り広げられ、新たな化学反応が生まれる。

 

「また、多くの人が訪れる、地域のインフラとしての役割も持っているファミリーマート店舗にあるメディアということで、FamilyMartVisionで流れているものは信頼度が高いという印象も持っていただいています。そういった情報の信頼性という観点も、メディアにおいてこれからどんどん重要になっていくでしょう」

 

FamilyMartVisionでは、今後は視聴者や地域参加型の番組にも着手していきたいという。例えば、視聴者のペットを紹介したり、地元の学校行事をアナウンスしたり。

 

「そうなると『ここは私のコンビニ』だという、コンビニに対するエンゲージメントも高くなります。そういったところまで目指していけると、さらにメディアの可能性も広がりますね」

 

エンターテインメント、お得な情報、まだ未体験な情報。これらが近所のコンビニで享受でき、さらに地元コミュニティの場としても機能する。これこそ、リアルな場所がデジタルの力を借りて拡張される最たる例なのかもしれない。ファミリーマートに行くのが、これからはもっと楽しくなりそうだ。

速水大剛

Daigo Hayamizu

株式会社ゲート・ワン取締役COO

1972年生まれ。現株式会社ゲート・ワン取締役COO。プライスウォーターハウス、グーグルブランドソリューション営業本部統括部長、グレイワールドワイドCOO等を経て、2022年2月より現職。

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