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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

ブルーカラーワーカーやエッセンシャルワーカーにもリモートワークを! ロボット・AIと「人機一体」の技術

リモートワークにより、働き方の選択肢が増え、ワークライフバランスをより追求できるようになってきた。だがそれは、あくまで業種を限る。ホワイトカラーワーカー以外のブルーカラーワーカーやエッセンシャルワーカーにとっては、職場=現場。リモートワークなんて夢のまた夢……。

 

というのを過去の話にするサービスが、登場した。株式会社ジザイエが提案するリアルタイム遠隔就労支援プラットフォーム「JIZAIPAD(ジザイパッド)」だ。人間がロボットやAIと「人機一体」となり自分の意のままに動かす「自在化」という技術を使うことで、時空を超えて働くことが可能になるというのだ。サービスを牽引するジザイエの代表取締役CEO・中川純希氏に話を聞いた。

遅延ほぼゼロ。遠隔にしてリアルに現場を体感

「リアルタイム遠隔就労支援プラットフォーム」と聞いても、何を叶えてくれるものなのか、直感でピンとこない。簡単にいうと、遠く離れたところからでもロボットや機械の遠隔操作を「数秒の違いなく」コントロールすることができる技術だ。    

 

「遠隔操作で大切なのは、まるで現地にいるかのような臨場感で作業ができる『低遅延で高画質に送る』技術です。1秒でもずれが生じると、自分で操作している感覚はほぼなくなります。通信環境に左右されることなく遅延をできる限り短くし、まるで直接自分が操作しているかのような『自在化技術』をどう実現するか、東京大学の稲見先生と研究を進めています」(中川氏、以下同)

 

ここで重要なのが、操作や映像に遅延があったり、操作感が現実のものと大幅に異なる場合は、満足に業務を遂行することができないということ。オンライン打ち合わせの最中に画面が固まったり、音声が途切れたりすることがあるが、こういったことがあってはならないのだ。ジザイエのサービスは、これをちゃんとクリアしている。

この「自在化」とは、機械による「自動化」と並立する概念として東京大学 先端科学技術研究センターの稲見昌彦教授が提唱しているもの。稲見教授は時空や身体的な制約を超えてやりたいことを支援する技術を「自在化」と呼んでいる。自分以外でもできる作業は機械やコンピュータに任せ、身体の自在化により、できることが増えることで喜びや楽しみを感じられるようなポジティブな未来を想像させる研究である。身近な例ではパソコンでの文字入力時の「漢字変換」や「予測変換」などもそれにあたる。文字入力や調べものの手間をAIが減らしてくれることにより、内容にフォーカスできるというわけだ。

 

中川氏は2019年から稲見教授の研究室に所属し、『JST ERATO 稲見自在化身体プロジェクト』のプロジェクトマネージャーとして従事。しかし1年ほど経ったときに脳の病気を患ってしまい、ベッドで寝たきりの状態が1カ月ほど続いたという。

 

「入院中に周りの患者さんの話を聞いてみると、当然ながら思うように仕事ができないことをもどかしく思う声が多かったんです。自分が携わっていた研究は、こういったことに活かせると思いました。『自在化』によって身体や能力を拡張することで、病気や障害、年齢や環境にとらわれることなく社会に参画できる世界になれば素晴らしいなと思い、この体験が後押しとなって『JIZAIPAD』の開発にいたりました」

 

自身の実体験において感じる課題感がとても強く、実現にいたった。そんなJIZAIPADは具体的にどんな場面や人に活用されているのだろう。

ひとの働く選択肢が、思わぬ方向でグンと増える

この技術があれば、確かにリモートワークできる業種がグンと増える未来が想像できる。実際に活用されているのは、どんな領域なのだろうか。

現在多く活用されているのが、建設現場での遠隔操作。例えば、建設機械による土木・建築現場は危険が伴い、現地で操縦を行う作業員は常に事故などのリスクと隣り合わせにいるが、JIZAIPADを使うことで、遠隔地にいながらもまるで現地にいるかのように操縦することが可能に。安心安全な就労環境を実現する。

交通誘導の現場にも、導入事例が多い。人命に関わる判断も往々にあるため、完全なる自動化は不可能とされていたが、真夏の猛暑に炎天下で行う必要があるなど過酷な現場環境により、労働力不足が課題であった。JIZAIPADを使えば、遠隔地から現地のロボットに指示を送ることにより、とっさの判断や通行人へのコミュニケーションも可能になる。

 

厳格な品質管理が求められる食品工場の現場でも、JIZAIPADは活躍する。過酷な現場環境により労働力不足が課題となっているが、遠隔地から判断し、指示を出したり、検品することが可能なため、労働者は快適な環境下で就労することができる。

農業や園芸の領域にも活用できる。広大な敷地の場合でも現場に赴くことなく、遠隔カメラから状況をリアルタイムで把握することができ、水やりなどの適切なタイミングを管理することができる。

 

「これまで建設業や製造業は人の目と熟練の技能がモノをいう世界であり、機械化に結びつけるのがなかなか難しい場合も多かったんです。こういった領域を遠隔で可視化できることによって、AIとロボットを自在に連携させて一元管理できるのがJIZAIPADです。現地には見習いの人材を配置して遠隔で教育するというOJTとしての可能性もあると思っています。働き方改革で人手不足が加速する現状においても、一つのソリューションになります。現在活用されている領域を超えて、将来的にはさまざまな現場の仕事が家やカフェなどからリモートワークでできるようになる未来を目指しています」

 

現状、時間交代制で対応している工場勤務も、時差を利用して海外在住の人材を活用しつつ、稼働を補うことも夢ではない、と中川氏は言う。現場の各工程に複数台のカメラが置かれているため、移動の手間も省け、1人で複数工程や複数現場を担当することも可能になる。

 

「より快適に働ける方法を追求したいですね。これがどんどん浸透すれば、家から出ることが難しい引きこもりの方が夜間警備を家からするといった就労の仕方が一つのスタンダードになる日も来るのかもしれません」

ゲーム性をもってモチベーション高く仕事を

将来の私たちの働き方を見据えた期待値の高いサービスを提供している中川氏の目線では、2030年の世界はどう写っているのか。聞いてみた。

 

「現在はVRゴーグルをつけてメタバースを体験したりしますが、そういったインターフェイスがより現実世界に浸透していくでしょうね。最近では『Apple Vision Pro』も発表されたり、現実世界にオーグメンテッドさせるARも浸透してきているように、バーチャル世界と現実の境界がだんだんなくなってくるのかもしれません」

 

稲見教授とよく話している構想があるという。

 

「私たちが開発しているリアルタイム遠隔就労支援プラットフォームで、今後はバーチャル世界と現実をうまく融合させることのニーズも増えるのではないかと思っています。不要な情報は削ぎ落とし、ゲームのように没入できる世界です。例えば、検品作業をただひたすら行うのでは単調な作業で飽きてしまうようなところを、なにかシューティングゲームのように検品がちょっと楽しくできるようなゲーム性の要素をAR的に入れ、遠隔からはゲームをしているような感覚だが、実際はリアルに作業をしている、といったイメージです」

 

就労者の士気や没入感も高まり、パフォーマンスもあがりそうな面白い発想だ。2030年の時点では、遠隔就労のシステムにこういった「ゲーミフィケーション」と呼ばれる仕組みが実装されているのではないか、と中川氏は予測する。

 

「そのためには、ブルーカラーワーカーやエッセンシャルワーカーなど、現場仕事の方にもよりリモートワークが浸透するといいなと思っています。現状では業務のほんの一部分だけが遠隔化している状況で、本当の意味で業務の効率化や生産性の底上げができているとはまだ言いづらい状況なので、そこがこれからの課題です」

 

ホワイトカラーワーカーにリモートワークが導入され、ワークライフバランスはグンとよくなった。これからは、ブルーカラーワーカーやエッセンシャルワーカーにもその時代が訪れる。さらに、いろいろな境遇で働くことが難しい場合も、それに合わせた就労のカタチが広がっていく。働くということが、より楽しくなっていきそうだ。

中川純希

Junki Nakagawa

株式会社ジザイエ 代表取締役CEO/東京大学 先端科学技術研究センター 身体情報学分野アドバイザー

東京大学工学部卒業、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大学院在学中に米ワシントン大学(Center for Sensorimotor Neural Engineering)へ留学し、同大学でもサービスロボティクスを中心とした研究に従事。
リクルートホールディングスに入社後、リクルートグループ全体の新規事業開発を担う部署(Media Technology Lab)で、複数プロジェクトの立ち上げに従事。リクルートホールディングス退社後は、CtoCのスマホアプリを開発/運営する会社を共同創業し、CFO兼マーケティング責任者として、創業時の資金調達を推進、軌道に乗せたタイミングで退任。
その後、JST ERATO 稲見自在化身体プロジェクトに研究推進主任として参画し、産学連携・知財管理や社会実装・アウトリーチを管掌。『自在化身体論』を監督出版。
2022年11月に株式会社ジザイエを共同創業。 「すべての人が時空を超えて働ける世界へ」をミッションに、最先端の研究シーズから新産業創出を目指す。

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