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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

あなたの話す力は何点? 「AIが数値化して人を分析する」逆転発想のラーニング

eラーニング市場は、コロナ禍以降BtoB・BtoCともに市場が拡大傾向にある。2023年度の市場規模は、3,773億円(前年度比1.8%増)と予測した(矢野経済研究所調べ)。

 

パソコン一つで自分のスキルを磨けるとなれば、スキマ時間を活用できて、忙しい現代人にはもってこい。eラーニングはさまざまな分野で浸透しているが、今回ピックアップするのは伝え方のトレーニングサービス「kaeka」。AI判定を積極的に導入しているのが特徴で、経営者や政治家向けの指導実績があるスピーチトレーナーによる分析も付随する。

 

人と人のコミュニケーションである「伝え方」を、AIがジャッジする? ユニークなサービスの実態を、サービスを提供する株式会社カエカ代表取締役・千葉佳織氏に聞いた。

AIならでは。均一な指標でブレずに話し方をチェック

リニューアルして1年。AI判定を導入した伝え方のトレーニングサービスkaekaが話題だ。話し方の訓練とは一部の「人前に立つ人」のためにあるように思うが、昨今ではSNSの発達などにより、個人単位でいかに爪痕を残す発信ができるかが問われる時代。伝え方を向上させることは、自分のステージを上げリスキリングにも繋がる。時代の波に乗った視点のサービスだけに、ニーズは右肩上がり。これまでの利用者数は、4,000人にものぼる。

 

kaekaのトレーニングはまず、最短30分でWeb受験できる「kaeka score(カエカスコア)」を受講することから始まる。パソコンに向かい、お題に対して30分間話をするという口頭診断だ。kaeka scoreは、AIによって話す力を数値化するもの。その試験結果を基に、伝え方トレーニングkaekaで、強みを伸ばし課題を克服することで、スキルをブラッシュアップしていく。AIがその人の話し方をどうスコア化するのかが、気になるポイントだ。

 

「私たちのサービスでは、判定基準を『内容』と『話し方』に項目を分けております。3年間の指導実績をもとに、伝える力のポイントとなる学習指標として独自の14要素を生み出しました」(千葉氏、以下同)

うち、「kaeka score」が分析する7項目がこちら。

 

  1. (言語化・内容構築)「PLOT」 筋の通る話をする力、話の筋を整える力 
  2. (言語化・内容構築)「FACT」事実を扱う力 
  3. (言語化・内容構築)「STORY」 ストーリーを伝える力、経験・思いを伝える力 
  4. (言語化・内容構築)「CORE」 核心を伝える力 
  5. (話し方・音声)「SPEED」声のスピードを効果的に使う力 
  6. (話し方・音声)「PITCH」声の高低を効果的に使う力 
  7. (話し方・音声)「PAUSE」 間を効果的に使う力 

 

この中でAIが重点的にジャッジするのが、5~7にある声のスピードや高低、間など「話し方」の部分。

 

「話し方は、『速ければいい』とか『ゆっくりだからいい』ということでもありません。その人らしさや状況に合わせて、適切な話し方は異なるため、正解は存在しません。AIが判断するのは、これらの特徴を可視化するという部分においてです。そのデータをもとに話の内容と合わせて専門家が傾向を分析していきます」

AIが出した事実ベースの数値をもとに、専門家が分析し評価をしていくという流れだ。ここにAIを導入する意味とはどういったところにあるのだろうか。


「属人的な部分を排除し、客観的な指標で判断するためです。伝え方や話し方は、『なんとなく』の部分が大きく、なかなか点数をつけるのも難しい。だからこそAIが均一な指標で分析するものが、評価の上で大きく役立ちます」

「伝え方教育」を会社研修や学校教育に取り入れる価値

話し方ひとつで印象ががらりと変わるし、「自分は会話下手だから意見を言うのをやめておこう」と主張の機会を失うのではもったいない。伝え方や話し方は、訓練すればよりよくなるもの。これこそが私たちが改めて知るべきことであり、今後はそれを学ぶことが当たり前になるべきだ、と千葉氏は語る。

 

「全世代の人が『話し方』『伝え方』を学ぶ機会があるような世界線をイメージしています。会社での研修はもちろん、将来的には学校教育にも取り入れるビジョンをもっています」

 

伝え方や話し方とは、日々のこと。万人にとって、公私ともにさまざまな場面で必要になるスキルだ。個人単位の発信も求められているこれからの社会においては勢いのある市場であり、成長が楽しみだ。

 

ちなみにkaekaの受講前と受講後では、伝え方の変化は明らかだという。例えば腹式呼吸で発声を大きくコントロールできるようになること、また、受講者の間で効果的だとの声がよく上がるのが、「フィラー」と呼ばれるものがなくなり、伝えたいことを明確に伝えられるようになること。フィラーとは、次の言葉を選んでいる間の隙間を埋める「あー」「ええと」などの話し方のクセともいえるもの。確かにこれらは、自意識がないままに口走っていそうだ。

 

「さらに、話し方そのものだけでなく、話す内容にもいい変化が生じてきます。話すことに慣れてくるので自分の気持ちを汲みとりながら情熱をもっと話せるようになるため、より相手の心に残ります。それはkaekaの授業を通して、自分の経験の棚卸しも一緒に行っていくから。自分はどんな『話せるエピソード』を持っているだろう、といった振り返りも行っていくことで、『思い』を伝えるのが上手になっていきます」

2030年はAIが進化するからこそ「話力」を磨くべき

今後さらにAIが進化したら、分析内容にさらに幅が出るだろう。2030年のサービスおよびAIは、どんなふうに、どこまでのことができるようになっているのか。千葉氏の未来予想図を伺った。

 

「テキストベースのコミュニケーションは、さらにAIが介在していく場面が増えそうです。『話す』というアウトプットにおいても、AIがある程度の原稿を用意できるようになるでしょう。一方で、会話や瞬発的なコミュニケーションにおいては、人同士の間で変わらずあるもの。AIの介在が増えていくからこそ、人にしかできないこと、つまりは『相手の状況を見て伝えること』や『熱量を持って話すこと』はさらに大切なことになっていきます。こういったスキルは、引き続き習得すべきものではあるでしょう」

 

AIでも一定の会話ができる時代が来るからこそ、「あの人の話を聞きたい」「あの人にこう伝えたい」といった、特定個人の伝え方や話し方は、よりその人の価値となっていく。これからの私たちはAIと共存していく中で、コミュニケーションにおいて「思い」を伝える力が、より必要になる。AIが進化する中で、人がリスキリングするべきはまさに、「伝え方」「話し方」を磨くこと。当たり前のことだからこそ、あらためて注目するべきだ。こればかりは、AIは取って代われない部分なのだから。

 

「『こういうことを知って欲しい』『こういう気持ちになって欲しい』『これを買って欲しい』……など状況によりますが、ビジネスシーンだけでなく目的のある会話の場合は、どんなシチュエーションにおいても必要なスキル。相手に伝えたいことを情熱をもって伝えられたら、コミュニケーションがよりスムーズになっていくでしょうね」

 

伝え方や話し方を鍛えることで、自分の意見を言いやすくなったり、意見を言うことに抵抗がなくなったり。そのことが、いろいろな選択肢を広げてくれそうだ。

千葉佳織

Kaori Chiba

株式会社カエカ代表取締役

15歳から日本語のスピーチ競技や弁論をはじめ、数々の弁論大会での優勝経験を持つ。慶應義塾大学卒業後、DeNAに入社。その後、株式会社カエカを立ち上げ、伝え方トレーニングサービス「kaeka」の運営を行う。同時に、企業総会や国政選挙などでスピーチ原稿の執筆にも取り組む。2021年、世界経済フォーラム(ダボス会議)グローバルシェイパーズに選出。

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