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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

SNSリンクを一つに。「Z世代トレンド 2022ヒット大賞」受賞のまとめサイトの価値

無料のSNSリンクまとめサービスlit.link(リット・リンク)が成長を続けている。2020年12月のサービス開始から2年強で、登録者数は180万人を突破。いったいどういうサービスなのか、そもそもこのサービスを立ち上げたきっかけや躍進する背景は。同サービスを提供するTieUps株式会社のCEOである小原史啓氏に話を伺った。

InstagramなどのSNS、特にインフルエンサーのプロフィール欄で、lit.linkの文字を目にすることがある。InstagramやTwitter、TikTok、そしてFacebookなど、複数のSNSアカウントをまとめたひとつのページを作成できるのがlit.link(リットリンク)だ。サービス開始から2年3カ月で登録者180万人突破と、着実にユーザーを獲得している。2022年には日経トレンディ誌で「Z世代トレンド 2022ヒット大賞」も受賞した。

 

通常、ウェブページの制作にはサーバーの知識やHTML・CSSといった技術の理解が必要だ。簡易な制作ツールも多く登場しているとはいえ、Webサイト構築にはさまざまな準備や計画が必須である。

lit.linkは手軽に無料で利用でき、しかも簡単に自分好みのデザインにカスタムできる。運営するTieUps株式会社のCEOである小原氏に、こだわっている点を聞くと、第一に「モバイルノーコードであること」が挙がった。すなわちモバイルツールを使って、プログラミングを一切行わずともページが制作できる点だ。

 

「普段我々がウェブサイトをどうやって見ているかというと、ほとんどがスマホからです。そうなるとモバイルツールで作って、モバイルツールで見るのがむしろ自然だと思います。だからlit.linkはプログラミングの知識がなくても、エンジニアがいなくても、スマホなどモバイルツールだけで作れるものにしています」(小原史啓CEO、以下同)。

 

実際、総務省が発表している令和4年版の情報通信白書によると、2021年の個人による端末別のインターネット利用率は、「スマートフォン」(68.5%)が「パソコン」(48.1%)を20.4ポイント上回っている。スマホからWEBサイトをブラウジングする機会のほうが圧倒的に多いのだ。

 

lit.linkはスマホだけでページが作れること以外にも、「手軽さ」を追求している。

例えば初期登録もLINEのみで完結でき、アプリのダウンロードすら必要ない。現在、ユーザーの6割がZ世代で、その過半数が女性だという。「タイパ」(=タイムパフォーマンスの略。時間対効率)を重視する彼女たちに、幅広く受け入れられたのも納得がいく。

 

デザインは多彩なテンプレートが用意されており、そこから選ぶことができる。もちろん自分のお気に入りの写真や作品写真を利用するなど、カスタムも可能だ。スマホから指ひとつで自分好みのリンクまとめサイトが作れるのも、「世界観」を重視するZ世代にマッチしている。

「クリエイターを支援したい」が原動力

そもそも、小原氏がlit.linkを立ち上げたきっかけとは。

 

「もともと美術大学の出身で、周囲にミュージシャンだったり、アーティストだったりとクリエイターが多かったんです。彼らを見ていて、才能あふれるクリエイターの方々を支援したいという思いがありました。それに、これからはクリエイターの時代だという意識もあって。かつては国や企業といった大きな組織しか実現できなかったことが、インターネットやSNSの発達によって、一個人が企業に匹敵するようなものを作れるようになった。クリエイターが活躍しやすい時代になっていると感じていますし、クリエイターが社会を動かすことが増えていると思います」。

 

実際、lit.linkを活用している人の中には、インフルエンサーやクリエイターが少なくない。例えば作った作品をInstagramで紹介しつつ、商品をECサイトで販売しているクリエイターにとって、それらのリンクを一元的にまとめられるlit.linkと相性がいいのは言わずもがなだ。

 

そんな「クリエイターを支援したい」という目的をもって、まず最初のサービスとして発表したのがlit.linkだった。その経緯を聞くと、「きっかけはコロナです」と言う。

 

「新型コロナウイルスのニュースを聞いた当初から、『これは時代の変化が起こるな』という意識がありました。実は当時、コロナの影響で予定していた仕事が延期になったんです。それで急に時間が生まれて、やってみたかったサービスをいくつもリストに書き出していきました。その中のひとつがlit.linkです。選んだ理由としては、シンプルに一番興味があったから。それに需要もあると感じていました」。

「裏アカ」が大活躍した創業秘話と、起爆剤となったSNS

いざ事業を立ち上げるにあたって、その組織作りの方法がユニークだ。「創業メンバーをTwitterの裏アカウント(企業アカウントとは違う別アカウント)で募集したんです。当時、自分の裏アカウントにフォロワーが多くて。『エンジニア募集!』と声をかけたら、1時間で10人以上からすぐ手が挙がりました」。

 

Twitter、それも裏アカウントでチームメンバーを募集し、即レスポンスがあったのは、実に現代らしいエピソードだ。一方で顔が見えない人が集まることに対する不安はなかったのかと問うてみた。

 

「逆に顔が見えないからこそ本音を出せる、その人となりの本心がわかるのではと思いました。実際にリアルで会うのは少し気恥ずかしさはありましたが、背に腹は代えられない状況でした。最初の面接は、お互い顔を明かさず、Twitterのアイコンで声だけでやりとりしたんです」。

 

そうして裏アカを機に集まったメンバーと開発、ローンチしたlit.link。サービス開始直後からコロナ禍という時代の波に乗って、登録者数を増やしていった。

 

「こうしたサービスは、最初の2カ月の伸びが重要だと思っていて。そこで何か起爆剤があって爆発的に広がると、その後はゆるやかに右肩上がりになってくれると思っていました。lit.linkはまさにそんな流れにはまった感じがあります」。

 

起爆剤のひとつが、音声SNS「Clubhouse」。lit.linkの立ち上げ直後、2021年1月下旬~2月に爆発的に広がったサービスだ。当時、Clubhouseには直接的なリンクがなく、アカウントをSNSで告知してもユーザーIDをコピーしてアプリにアクセスする必要があった。このような動線では途中で離脱するユーザーが多かったのだという。その煩雑さを解消すべく、lit.linkでは即座にClubhouseフォローリンク機能を追加した。

 

この起爆剤をきっかけに、インターネットの世界で存在感を増したlit.link。その後は既存ユーザーのSNSでlit.linkが貼られているのを見たことを契機に、新規ユーザーが加入するパターンが続き、サービス開始から1年10カ月で登録者数150万人を突破。「ゆくゆくの目標は、世界5,000万人ですね」と、見据える先は世界だ。実際に2022年9月には英語版をリリースしている。

多彩な活用方法。推し活にインフルエンサーマーケティングに

登録者の増加に伴い、ユーザーへのメリットも拡大している。スマホ、特にSNSを通して情報と触れ合う機会が多い現代、lit.linkを通して、情報の深度を深めることができると小原氏は言う。

 

「SNSなどで見て興味を持った人に関して、Twitterや他のSNSに即時に繋がることで、物事を顕在化する速度が速まります。最初はちょっとした繋がりで興味をもった情報に対し、さらに深い関係性を構築するきっかけになると思うんです」。

 

ちなみにlit.linkの「プロフィール、リンクのまとめ」というサービスと聞くと、かつて大流行した「前略プロフィール」といった自身を紹介するページを思い浮かべる人が多いかもしれない。ただし実際のZ世代にとっての利用法は、これだけに限らない。

 

というのも「推し活」が一般的になってきた今、lit.linkは「推しのプロフィールをまとめる」用途にも広く使われている。例えば非公式ファンサイトとして、推しの活動をまとめつつ応援を呼び掛けるページは少なくない。それもファンの間から自然発生的に作られるのだ。

 

「特に推し活を意識してサービスをスタートしたわけではありませんが、親和性は高いと感じています」と小原氏。「推し活」が一般的なZ世代にとって、自分の興味、「推し」を紹介することこそ、自身のプロフィール紹介とクロスオーバーするのだろう。

 

小原氏はこの「推し活」を推進するツールも新たに発表している。

それが2022年12月に発表したコミュニティデザインSNS「WeClip」だ。100万通りのオリジナルデザインのコミュニティが作れるSNSで、lit.link同様、タップ、スワイプなどの直感的な操作で作成、編集ができるのが特徴だ。

 

「lit.linkを作って、世の中の見方が変わったんですよね。全然知らなかったけれど、世の中にはすごい人はたくさんいるなと感じました。ただそういう人がSNS上で活躍できているかというと、そうではないこともある。SNSはフォロワー数などの数字の世界ですが、数字が少なくともすごい人はいます。そういう人が活躍できる世界を作りたいと思ってWeClipを立ち上げました」。

 

今後lit.linkの知名度を武器に、「WeClip」がどこまで拡散していくのか、注目が集まる。

無料で固持する「世界観」と、新たなマネタイズ策

Z世代の間で特に親しまれているlit.linkだが、メインユーザーであるZ世代以外からも別角度で評価されている。「これは実際に他社の方に言われたことですが……」と前置きをしながら、小原氏は以下のエピソードも教えてくれた。

 

「インフルエンサーマーケティングなどをやっている会社の方に、インフルエンサーを採用するときに、Instagramなどのプロフィール欄にlit.linkが貼ってある方から選ぶという話を聞いたことがあります。lit.linkを使って『ここに来れば私のプロフィールがわかります』と上手くまとめることで、ロジカルな考え方ができる人だということが伝わるのかもしれません」。

 

推し活にインフルエンサーマーケティングと、lit.linkの使い方は単に「プロフィールまとめ」に留まらない。さらにはこうしたlit.linkのサービスがすべて無料で行えることも、支持される一因だろう。

 

lit.linkはすべてのサービスが無料で利用できるのに加え、広告表示も見当たらない。「今後も広告を貼る予定はありません。自分が作ったプロフィールの世界観に、知らない広告が出てくるのって、違和感があると思うんですよね」。

 

一方で2023年3月にはコミュニティデザインSNS「WeClip」のビジネス版を発表した。こちらは有料にし、収益化を図っている。「企業が有料版を利用することで、ユーザーにとっても価値がある情報、信用できるコンテンツが流通します。ユーザーにとってもプラスになると思っています」。

 

先日はGMOペパボとの業務提携を決定した。外部パートナーとの接続が増えていると語る小原氏。「我々だけではできなかったことも、外部パートナーと協働することでさらに大きなプロジェクトができればと考えています。今、まさにそんなプロジェクトが進行中です」。

小原 史啓

Fumihiro Ohara

TieUps株式会社 CEO

1984年生まれ。横浜美術短期大学(現・横浜美術大学)卒業。株式会社ノジマに入社し、同子会社の責任者や店舗開発・アプリ開発などを担当。株式会社マクロミルでのリサーチとマーケティング経験を経て、株式会社SnSnap(現・GENEROSITY)の1号社員として立ち上げと事業開発を行う。広告代理店とメディア事業で独立後、TieUps株式会社を創業。2020年にlit.link、2022年にコミュニティSNS「WeClip」を開発する。

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