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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

「女性活躍だけがダイバーシティじゃない」3.0時代における個性を生かした企業のエンパワーメント

「ダイバーシティ」という言葉が聞かれ、はや数年。経済産業省はその効果を最大化させるフェーズとして「Diversity 1.0」「Diversity 2.0」を提唱している。1.0ではダイバーシティ推進のKGI/KPIを設定し社内外に開示し、2.0ではトップダウンでの推進を行うというものだ。そして、さらに次なるフェーズとして株式会社LYL(リール)がミッションとして掲げるのが「Diversity 3.0」だ。

 

企業におけるダイバーシティが意味するのは、来たる労働人口の減少やビジネスのグローバル化、価値観の多様化などを背景とした「働き方の多様性」だ。ゴールには、多様な考え方を持つ社員がいきいきと働き、組織そのものを強くし向上させることを見据える。LYLではこれを「社員から選ばれる組織」と表現し、3.0の定義を「社員一人ひとりが自走している状態でその集合体として自走する組織を作る」こととしている。

 

そのために必要なこととは一体何だろうか? どういったフェーズを踏まえて実践していくべきなのだろうか?

 

ダイバーシティをこれから取り組もうとする企業や担当者に向けて、今回はLYL代表取締役・小山侑子氏に、同社が行うコーチングとコンサルティングを掛け合わせた「Diversity 3.0」への推進プログラムについて聞いた。

“Live Your Life”「自分の人生を生きよう」

LYLの考えるダイバーシティとは、女性活躍、障がい者採用、外国籍社員採用といった特定のセグメントを強化することだけを目指すのではない。それに加えて、働き方やスキル、価値観、健康状態をもダイバーシティの一環と考え、誰しもが持ち合わせている多様な個性を生かす組織づくりを目指している。

 

「一人ひとり、みんな違います。ライフスタイルや健康状態など全てを加味した上で、私もあなたもダイバーシティの一員です。この考えを企業に属する個人に深く啓蒙することで、一人ひとりの個性を生かした『自走する』組織へと導くプログラムをご提案しています」(小山侑子氏、以下同)

LYLのプログラムで大切に考えるのは、「一人ひとりの個性を活かす」こと。なりたい姿に近づけたら、ハッピーだ。その結果、属する組織のパフォーマンスアップにも繋がる。社員から選ばれる会社になり、企業のブランド力も上がる。このように、いい循環が生まれるのだ。とはいえ、これまでの旧態依然の社内体制を覆すのはなかなか難しそう……。ダイバーシティ3.0の推進では、どうテコ入れをしていくのだろう。

 

「意識を変えるのは、簡単なことではありません。ですので、数ヵ月というスパンで辛抱強く啓蒙を続けるプログラムをそれぞれの企業に対してこちらで作成します。その上で大切なのは、まずトップが変わること。組織のトップが理解していないと、企業内のダイバーシティは進みません。とはいえ、トップだけが意識が高くてもダメです。現場でダイバーシティを実践する人の意識こそが、大切になってきます」

 

3.0のフェーズを進めるポイントは3つ。1つは、社内でダイバーシティを推進するアンバサダーをアサインすること。2つは、アンバサダーを中心としてさまざまな個性を持つ推進メンバーを集めること。3つは、推進メンバーの取り組みに対してトップダウンで社内に反映するフローをつくること。

 

「トップの指示がなくとも、ダイバーシティの考え方が社内に浸透する状態。それが『ダイバーシティ 3.0』の目指す状態です」

 

大切なのは、個人の意識。LYLでは、企業向けのプログラムのほか、個人向けのプログラム「L MUSEUM(エルミュージアム)」も展開している。さまざまな分野のプロフェッショナルが伴走しつつ、自身の経験やスキルなどを棚卸しする約6ヵ月間のセルフデザインプログラムだ。

 

このようにある程度時間がかかる意識改革において重要な分岐点となったのが、コロナ禍でのリモートワークの浸透。オンラインやデジタルの力により多様な働き方が叶い、さらに個人の能力を引き出す機会が増えた。それにより、ダイバーシティを実践しようという意識へと拍車がかかった。

 

「コーチングは英語でも行います。例えば、エグゼクティブコーチの中には南アフリカ在住のコーチもいて、彼と繋がるのにオンラインは必須です。さまざまな国籍や環境の人が参加するからこそ生まれる新しい視点があり、多様な意見があります。オンラインの活用は、ダイバーシティの取り組みと切っても切り離せません」

女性の不調を知り会社をエンパワーメント

企業におけるダイバーシティ推進の中でもLYLが力を入れているのが、女性特有の不調の解消を目指し、社員のヘルスリテラシー向上をサポートするプログラム「QOLI Femtech(きゅおり フェムテック)」。「女性本人だけではない、男性社員や管理職・組織を巻き込んだアプローチ」「知識のインプットや理解促進に留まらない、行動変容にまで踏み込んだプログラム提案」を行う。

 

これはコンパッション経営と言われる、「従業員・経営者それぞれが、自分や他者への理解を深め、思いやりをもって寄り添う企業風土を実現する経営」を実現するためのものだ。ひいては女性が働きやすく、強い組織になることが目的だ。

 

プログラムは、ヘルスリテラシーテスト・ヘルスリテラシーUP研修・アクション提案という3ステップで構成される。この取り組みは、経済産業省が行う令和4年度フェムテック等サポートサービス実証事業にも採択された。

女性の立場では、これまでライフステージの変化や心身の不調を理由に、自分のキャリアプランについて諦めたり、働き方を変えざるを得なかったりということが多かった。生理や更年期障害だけでなく、不妊治療など、男性に理解されづらい理由を仕事上で伝えることに躊躇する例が少なくなかった。そういった事例をベースに、プログラムを受講した前と後での意識変化の調査を行ったところ、プログラムを受講した後では「セルフケアをしていいんだ」という思考で、無理なく働けるようになったという結果が出ている。

「周りの理解があるということは、とても心理的安全性が高いです。相談できる相手がいることで、前向きに自分のキャリアプランを組み立てられる。組織におけるエンゲージメントアップにも繋がります」

 

一方で男性の立場では、事後アンケートにおいて9割もの男性が「女性の不調について知りたい」と感じているという結果が出た。組織でマネージメントする際の知識としてはもちろん、プライベートにおいて妻とのコミュニケーションや娘の成長過程において、知っておかなくてはならない知識だという見解だったという。

「プログラムを受講して『とても良いきっかけになった』という回答が半数というのは、とても効果的であることを示していると思います。『まあ良いきっかけになった』を含めると、ほとんどの男性が女性の体の不調やライフステージの変化について理解を示したいと思っていることがわかりました」

 

実際にこのプログラムを導入した企業では、「女性の不調に対するセルフケアを実践する社員が増えた」「健康課題について、社内で話題になりやすくなった」「健康経営の施策検討がしやすくなった」という声が上がっているという。社内の空気が変わると、自身の健康についてひとりで悩む人が減るきっかけになる。

 

同プログラムにおいても、もちろんのことオンラインが活用されている。リテラシーテストは、zoomで。症状を入れるとそれが病院にいくべきレベルなのかの診断が下され、必要に応じてリコメンドメールが来るなど、忙しい合間で体調管理できるのはオンラインだからこそ。

 

「今後、協業先がたくさん増えてきたら、AIを駆使してリコメンドの精度向上、パーソナライズ化していくことも検討したいですね」

 

QOLI Femtechを実装してから1年。今後実績が積み上がっていった段階で、AIを駆使してより効率的にダイバーシティを推進する動きも視座にあるそうだ。

「ロールモデル」に縛られない未来へ

個人のダイバーシティへの意識が変わっていくことで、社会全体に浸透していく。2030年にはダイバーシティという考え方すらなくなり、もはや健康と同じくらい、人々にとって当たり前にある感覚になっていくだろう、と小山氏は話す。

 

「これは私の主観なのですが、『ロールモデル』という言葉がない時代になってほしいです。完璧な人なんて、いないんです。だから、1人のロールモデルに縛られる必要はないと思っています。ロールモデルがいないからと、何かを諦めてしまうことがない世の中になればいい。ロールモデルの有無は関係なしに『自分はどう生きたいのか』を追求し、自分の人生を自らで作り出す人が今よりも何倍も増えて、イノベーションを起こすような社会になったらうれしいですね」

 

男性だから、女性だから、父だから、母だから……。こういった言葉がネガティブに働かず、無意識の偏見による悪影響がなくなる未来。そうなるためには、やはり私たち一人ひとりが意識を変えていかないとならない。そのために、必要なリスキリングとは何かを聞いてみた。

 

「自分を知ることです。忙しいとなかなか自分と向き合う時間を取れなかったりしますが、第三者に『自分はこう思っている』『私はこうしたい』ということを、声に出して伝えることを意識してやってみることが大切。筋トレのような感覚でこういったエクササイズをすることによって、自然と意識も変わってきます」

 

自分軸を知り、自分を開花させるコーチングプログラムをオンラインで気軽に受講できるのは、一人何役もこなしている忙しい現代人にはうれしい限りだ。インターネット環境とPCさえあれば、自分のなりたい姿に近づける。日常生活を送りながら、これからの自分のワークライフバランスに目を向けることができる。そのことで社会全体も、よりエンパワーメントされるであろう。

小山侑子

Yukiko Koyama

株式会社LYL代表取締役

ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC/カナダ)卒業。新卒で外資系経営戦略コンサルティング会社ローランド・ベルガーに入社し、5年間大手企業のビジョン策定や新規事業などに従事。その後、SEVENRICH GROUPに入社し、コンサルティングとコーチングのアプローチをかけ合わせ、ダイバーシティ3.0推進を伴走する法人向けの人材育成・組織開発サービスを展開するLYL(リール)を立ち上げる。2022年からは同グループで企業向けの健康経営支援事業QOLI(きゅおり)の事業責任者も務め、2023年4月に株式会社LYLのプログラムとしてQOLI Femtechを正式ローンチ。女性の不調をテーマにした「QOLI Femtech」は経済産業省の「令和4年フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」に係る補助事業にも選出された。

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