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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

過半数が黒字も約5万の中小企業が廃業。原因となる後継者不足にどう立ち向かうか

地域の課題のひとつである後継者不足は、日本社会の喫緊の課題だ。2021年度版「中小企業白書」によると、2020年の中小企業の休廃業・解散数は年間49,698件。うち約60%が直前期に黒字なのに廃業に至っている。その休廃業・解散の大きな理由が後継者不足だ。

 

relay(リレイ)は、後継者を募集している企業と、事業の譲り受けを希望する人をつなぐ事業承継マッチングプラットフォームだ。こだわっているのは、オープンな形で後継者を募集し、事業や地域への想いを繋げること。そのサービスを立ち上げた背景、そして目指す未来とは。relayを運営する株式会社ライトライトの代表取締役である齋藤隆太氏に話を伺った。

事業承継マッチングプラットフォームrelay(リレイ)が立ち上がったのは2020年。そのきっかけは、創業した齋藤氏の経歴から紐解くことができる。

 

齋藤氏は大学卒業後、株式会社USENに就職。その後に株式会社サーチフィールドの創業にあたって、取締役に就任した。そこで立ち上げたのが、「地域」と「クラウドファンディング」を掛け合わせたサービス「FAAVO(ファーボ)」だ。立ち上げたのは、まだクラウドファンディングという言葉が今ほど一般的でなかった2012年のことだった。

 

その後、齋藤氏は2018年にFAAVOを株式会社CAMPFIREに事業譲渡し、同社に移籍。執行役員を経て退職したのち、株式会社ライトライトを立ち上げてrelayをスタートさせた。

 

「地域の方々を支援するクラウドファンディングを提供していて、色々な地方に行く機会が増えました。そこで地域の課題、特に後継者不足の問題は切実だと感じたんです。だからクラウドファンディングという形だけでなく、さらに地域に貢献できるサービスがしたいと思い、CAMPFIREを卒業させてもらってrelayを立ち上げました」(齋藤氏、以下同)。

5万近くの中小企業が廃業、その過半数が黒字なのに……

そもそも後継者不足は、何に起因するのか。

 

「ひとつは経営者が高齢化していることが挙げられます。そもそも絶対数として事業者の数に対して、経営したいという人の数が不足している状況です」。

 

中小企業及び小規模事業者の経営者の年齢は、日本が超高齢化社会となる2025年問題とリンクしている。2025年には経営者のうち約245万人が70代に突入すると予測されているのだ。そのうち約半数の127万人は後継者が決まっていない。

 

「特に後継者不足なのは、小売りや製造、飲食など、地域に根付くリアルビジネスです。昔はビジネスといえばそうしたリアルなコミュニケーションの場が中心でしたが、今ならITや技術職など、職業選択の幅も広がっています」。

 

特に家族経営のいわゆる「三ちゃん企業」ではその影響は大きい。経営者の子息が跡を継がない、継げない状況や、そもそも後継ぎがいない経営者が少なくない。

売り上げよりも大切なことは

齋藤氏はこの課題を打破するためにrelayを立ち上げた。特にこだわっているのは、事業者の情報が「オープンであること」。relayのサイトに行くと、現時点で後継者を募集している事業者が地域や業種別に多数並んでいる。

そもそも事業承継というのは、クローズなうちに進められるという文化がある。後継者を探しているとオープンにすると、「経営に問題があるのでは」、「あの企業は危ない」など、何かと風評被害を受ける可能性があるからだ。だから事業承継に当たっては仲介業者が入り、従業員にも知らせずに内々に取引し、決まった時点で公表するということが多く行われてきた。

 

閉じた場で事業承継が行われると、どんなことが起こるのか。買い手はまず仲介業者とコネクションがある人に限定される。売り手も、決して安くはない様々な手数料の支払いが必要になる。さらには業者を介し、その事業の財務情報を調べるところから入る。売上高や銀行への借入額など、財務面を真っ先に見るのだ。そのため優良事業者はすぐに買い手がつくが、財務面が芳しくない企業はなかなか買い手が見つからないという状況になる。

 

けれども事業承継には財務面よりも大切なことがあると齋藤氏は強調する。

 

「一番大切なのは、事業者の方、そして買い手の方の『想い』です」。

 

売り手はどんな想いでこれまで事業を続けてきたのか、どんな方に事業を承継してほしいのか。そして、買い手の方はどんな形で事業を受け継ごうとしているのか。relayによるマッチングでは、数字には表れない、そのビジネスの背景やストーリーが重視されている。実際、どれだけ財務的に十分な条件を提示しても、売り手へのリスペクトがない買い手は優先順位が下がることが多いという。

 

relayでは後継者を探している事業者がいれば、まずは面談を行い、そして取材をした上で記事としてrelay上で紹介し、後継者を募集している。記事内で明かされるのは、オーナー自身の言葉で語られる、事業承継者を探す理由。読んでいると、不思議とオーナーの人生劇場を見ているような気分になる。実際、オーナー自身が顔を出している案件も多く、コンテンツとしても読みごたえがあるのだ。

 

ここで明かされる事業を譲渡したい理由は、実にさまざまだ。高齢化が理由のケースはもちろん多いが、若きオーナーが事業譲渡を希望するケースも少なくない。事業自体は順調だが、自分が望む方向性と差異が出てしまった、別の事業が忙しくなったなどの理由だ。

 

relayサイト上にオープンに掲載された案件だけに、応募は全国から集まる。応募者がいると面談などを経て、事業者自身が検討し、決断する。

 

「そこでも重要なのが、やっぱり『想い』なんです。成約の実績を見ると、必ずしも高い金額で事業を買ってくれる人に譲るケースばかりではありません。売り手にとって優先されるのは財務的な条件が合うことよりも、シンプルに波長が合うとか、リスペクトがあるかといったところが重要です。オーナーと希望者の想いが合えば、譲渡希望額がぐっと下がるということもよくあります」。

 

オープンであること、すなわち間口の広さが時にミラクルを生む。サービス名であるrelay(リレイ)は、バトンを受け継ぐ「リレー」、すなわち「受け継ぐ」の意味。事業承継で大切なのは、想いを受け継げるかどうか、なのだ。

受け継ぐ側の工夫次第で、売り上げは倍増する

一方でビジネスとなると、買い手側はやはり財務面は無視できないだろう。ただしそこにも単に数字を追うだけでは気づけない背景がある。

 

「財務状況が良くない事業者だからといって、決して将来性がないわけではありません。話を聞いてみると、オーナーが高齢だから飲食店でもお昼しか営業していなかったり、ITを使っていないから効率がよくなかったりする。生産性があげられる要素がたくさんあります」。

 

だからこそ事業承継者に求められるのは、アレンジ力だ。すでに存在するビジネスを、いかに現代に合ったものにアップデートできるか、腕が試される。

 

実際、後継者がビジネスをアレンジすることで、増収に繋がるケースは少なくない。先述のオーナーが高齢で昼しか営業していなかった飲食店では、夜もオープンしてアルコールも提供したところ、売り上げが倍になったという。

事業承継が与える、地域へのインパクト

立ち上げて3年目のrelayだが、後継者募集件数は順調に増え、現在は280件を超えている。デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社による調査の結果では、M&A・事業承継マッチングプラットフォームにおける商談率・成約率で、2年連続1位を獲得した。

手ごたえはクラウドファンディングを始めた時以上に感じていると齋藤氏自身は語る。ただしその「手ごたえ」は、ここでも単に財務面の話だけではない。

 

「relayの認知が広がっている、社会に受け入れられると感じることが増えてきました。relayが地域にもたらす影響力が少しずつ増えてきています」。

 

実は事業承継案件の8割以上が、移住を伴うものだ。これまでの事例では、シャッター商店街のシャッターを開けることに果敢に取り組んだ承継者がいた。事業承継者であり移住者が、地域の祭りに関わって地域を盛り立てるケースもある。

 

事業を承継することはすなわち、事業を絶やさないという側面だけではない。地域に活気をもたらす人材を送り込むことでもあるのだ。

 

日本全国には今日も「事業を承継してくれる人材がいない」と声をあげずに諦めている経営者が数多くいる。relayではこうした小さな声を拾い上げられるよう、行政機関や銀行など地域内のプレイヤーと協業しながらネットワークを築くことを命題としている。

 

そのひとつが「relay the local」という取り組みで、地域の自治体や商工会と連携して事業承継マッチングサイトを共同運営している。後継者候補探しはもちろんのこと、移住者の受け入れから事業の引き継ぎまで全面的にサポート。これまで宮崎県高千穂町や岩手県陸前高田市など10を超える自治体と連携している。

 

「事業承継は移住促進や企業施策とセットで行っていく必要があります。これまでも多くの自治体と提携してきましたが、今後はさらに注力し、拡大していきたいと思っています」。

「東京の一極集中に抗いたい」

relayの取り組みは、地域の人々にも恩恵をもたらす。例えば2022年9月にオーナーが体調を崩したことをきっかけに、一時は閉店してしまった福岡県柳川市の喫茶店「珈琲廊ゴンシャン」。relayで後継者を募集したところ、50人を超える希望者が集まり、マッチングを実現して今年3月に復活オープンしている。地域の名店の存続に、胸をなでおろすファンが多いのも想像に難くない。

だからrelayのサービスを提供していくなかで、「外部の人が入ってくるのが不安」といった声は聞かれないと齋藤氏は言う。事業承継が地域にメリットをもたらすことは、地元住民こそが理解しているのだ。

 

齋藤氏自身も2016年に東京から地元・宮崎県に移住している。relayを運営するライトライトのメンバーも、全国津々浦々に散らばっているという。齋藤氏は「東京の一極集中に抗いたいという思いがあります」と語る。

 

「事業承継する方が増えることで、地域に新しい風が吹けばと思っています。そうすれば地方に住む自分の身としても、きっとさらに楽しくなりますよね」。

 

relayのサイトを眺めていると、不思議と人生を考えさせられる。人口が増え切った大都市の中で埋もれるか、地域に根付く事業を受け継いで自分らしいビジネスとライフスタイルを確立するか――そんな問いを突き付けられる気がする。譲渡希望額が公表されている案件では、手が届きそうな額が提示されている事業が多いせいもあるだろう。

 

少しでも今の仕事や環境を変えたいという思いがあり、さらにビジネスや誰かの想いを受け継ぐことに興味があるなら、「relay」と検索してみるといい。そこから新しい人生が始まるかもしれない。

齋藤 隆太

Ryuta Saito

株式会社ライトライト 代表取締役

2007年、大学卒業後USEN入社。2008年株式会社サーチフィールド創業時に取締役に就任。2012年に「地域×クラウドファンディングをテーマにした「FAAVO(ファーボ)」を立ち上げる。2016年に宮崎県にUターン。2018年株式会社CAMPFIREに事業譲渡して移籍。2019年同社執行役員を経て退職。2020年株式会社ライトライト設立、代表取締役に就任。同年、事業承継マッチングプラットフォーム「relay(リレイ)」を立ち上げる。

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