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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

見た目も性別も服装も自由自在! 好きな自分で学べるメタバース(仮想空間)の学校「MEキャンパス」とは?

文部科学省による最新のデータによると、令和3年度の小中学校における不登校児童は過去最高の約24万5千人。児童数自体も減少の一途であるため、深刻な社会課題の1つだといえる。この「不登校」という言葉を聞いて〝いじめ〟や〝家庭環境〟の影響ばかりを思い浮かべる人もいるかもしれないが、「旧態依然とした教育に意味を見いだせない」「他にもっとやりたいことがある」といったケースも少なくない。実際、文部科学省が行った調査「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、中学生における不登校の最大の原因は「無気力・不安」である。

 

そうしたなか、好きな自分で、好きなことを、好きな時間に学べることを謳ったメタバースの学校「MEキャンパス」が2023年4月に誕生した。ChatGPTなどの生成系AIを筆頭にした技術の急速な発展とともに、メタバース(仮想空間)は日常生活にますます密接に関わるようになってきており、コロナ禍の影響も相まって、教育分野も例外ではなくメタバースの活用が検討されている。次世代の教育の舞台が仮想空間に移行し、現実世界の教室に取って代わる日も遠くないかもしれない。

 

そこで本記事では、メタバース空間を活用して革新的な教育プラットフォームを提供する「MEキャンパス」について、運営会社MetaLabの取締役・北祐一氏に話を伺った。「メタバースの学校」がもつ、従来の学校にはない優位性はどこにあるのか。さらに、教育の未来を変えていく可能性があるのかを検討してみたい。

メタバースの学校では性別も年齢も見た目も運動神経も〝フラット〟になる

メタバースの学校「MEキャンパス」は、いわゆる学校という言葉から想起されるような、生徒が先生に教えてもらいに行く場所ではない。「好きな自分で、好きなことを、好きなように学ぶことが実現できる場」と、北氏は語る。言い換えれば〝フラットな場〟なのである。

 

このことは、「MEキャンパス」のコンセプトを築きあげるためのコンセプトワークの段階から常に意識していたのだという。

 

「とにかく好きな自分のままで学ぶ環境をつくる、ということを考えていました。メタバースというバーチャルな空間だからこその利点というのは、性別も年齢も見た目も、さらには運動神経などもフラットにでき、ゼロベースで作りあげた〝アバター〟を使って、自分らしく学べるところにあるからです」

 

2023年4月、MEキャンパスは開学した。現在は、提携している通信制高校の松陰高等学校(学校法人山口松陰学園)に同時入学できる3年間の「通信制高校同時入学コース」と、社会人も含めた誰でも入学できる1年間の「誰でも入学コース」の2つのコースがあり、それぞれ専攻として「メタバースプロダクション」「メタバースCG」「メタバースプログラミング」の3つがある。もちろん通信制高校同時入学コースは、高校卒業の資格も取得できる。

 

メタバースというこれから成長していく分野を担っていくような人材を輩出する形になっているが、これはあくまで後付けであるのだと北氏は話す。

 

「メタバースを使った学校をやるという計画が先行してありました。先ほども言ったように、バーチャルな空間であれば、好きな自分で、好きなことを、好きなように学ぶことができるからです。そのうえで、どうせならその学校を通じてメタバースのサービスを〝つくる側の人〟を増やしたいよねということで、メタバースを軸にしたカリキュラムを組んでいったんです」

課題制作を中心としたカリキュラムの利点と注意点

動画などを用いた教材(e-ラーニングシステム)による学習、業界をリードするような著名人による特別講義などもあるが、そのカリキュラムの中心にあるのは、課題制作である。学生にはテーマが与えられ、その都度必要なスキルや技術を学びつつ、個人やチーム(グループ)でアウトプットしていくという学習スタイルをとっている。

 

もともと「MEキャンパス」を運営するMetaLabの親会社である株式会社Brave groupは、IP事業やメタバース領域におけるプラットフォーム事業、インキュベーション事業を生業にしている。そのため、メタバース市場の成長に資する人材を育てるという相乗効果の意味合いだけでなく、「課題制作のテーマを設定したり、最新のメタバーススキルを指南したりするという側面でも、他の学校に対し優位性や独自性がある」と北氏は言う。

 

課題制作型のカリキュラムにしている狙いはほかにもある。在学中につくった成果物を、その学生のポートフォリオとして就職活動など次なるステップに活用してもらうというものだ。ただ、こうしたアウトプット型の学習方法だと気になるのが、急速に発展してきている生成系AIの存在だ。

 

北氏も「確かに生成系AIで手を抜こうと思ったらできる部分もある」としたうえで、次のように話す。

 

「ただ、やっぱり社会に出るときに大事なのは、ポートフォリオ(実績資料)そのものというよりも、どういう意図で、どのように作ったのかという思考プロセスだと思っています。ですから、自分がクリエイティブを制作したときの思考プロセスを自分自身で言語化できないと意味がありません。

このあたりは、単に課題制作を設定し、発表させるだけでなく、業界をリードする著名人による特別授業や学びをサポートするメンター、クリエイティブを制作するうえでのマインドセットを伝えるコーチ、メタバース上の潤滑なコミュニケーションを促すコミュニティマネージャー、カウンセラー、あるいは様々な役割を担うAIアバターなども含め、多面的に学生の学習を支えることで実現できると考えています」

5年を目処に社会で定着することを目標に、目の前の学生を全力でサポートしたい

冒頭でも触れたように、不登校の大きな要因として「無気力・不安」がある。これは「自己肯定感が低い」と言い換えられるだろう。実際、日本人の自己肯定感の低さは、様々な調査結果から数字で示されている。

「学生たちは、自分の好きなアバターを選択できます。気分によって服装を変えたり、性別だって変えたりできます。リアルな自分をさらけ出す必要がありません」

 

もちろん人によっては、リアルな自分がいいという人もいる。でも、オンラインがこれだけ発達し、様々なサービスが気軽に利用できる社会に生きる現代の若者にとっては、リアル(現実社会)にいる自分よりも、仮想空間にいる自分のほうに〝自分らしさ〟を感じる傾向は強まっている。MEキャンパスのようなメタバースの学校には、自己肯定感を高める可能性があるといえるのではないか。

 

「繰り返しになりますが、好きなことを学べるということも大事ですが、我々は〝好きな自分で学ぶ〟ということが上位概念にあると考えています」

MEキャンパスやそのカリキュラムを「プラットフォーム」とも呼ぶ北氏。〝好きな自分で学ぶ〟ということを突き詰めたプラットフォームを作ることができたら、学びの対象は現在のメタバース以外にも広げていける。もっといえば大学や進学塾、企業の研修などにも応用できるようになる。様々な要因で不登校になった生徒が学びたくなる場所もどんどん増えていくだろう。最後に北氏はこう締めくくる。

 

「私個人としては、この事業の成功は『メタバースの学校』というものが、社会に定着することだと考えています。これには最低でも5年はかかると考えています。その覚悟をもって、まずは1期生の学生さんたち一人ひとりと向き合って、全力でサポートして彼らの成功にコミットメントしていきます」

北 祐一

Yuichi Kita

株式会社MetaLab 取締役

カリフォルニア州立大学ソノマ校卒業後、デジタルマーケティング会社で様々なポジションに従事した後、同社取締役に就任し経営のキャリアを積む。その後、スタートアップ数社で主に事業開発領域の要職を歴任。2021年10月に株式会社Brave groupに参画し、2022年4月に株式会社MetaLabの取締役に就任(現任)。現在は、メタバースの学校「MEキャンパス」やメタバース上でのカウンセリングサービスなどを展開。また企業のメタバース進出などを支援している。

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