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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

増える先生の負担! ICT機器活用で「毎朝の電話対応」に70時間の時短も!

2022年11月1日から11日にかけて開催された、日本唯一のオンライン教育・eラーニング総合フォーラムのレポートをお届けする連載企画。今回はマイクロソフトが提供するツール、Microsoft Educationが教育現場にもたらす変革について紹介する。

 

日本では2019年から文部科学省の取り組み「GIGAスクール構想」が開始され、全国の児童・生徒一人に1台のICT機器が提供されている。奇しくも同時期にパンデミックに見舞われ、リモート学習も盛況に。一方で早くもその課題面も見えてきている。

 

IT企業の中で最も早い時期から教育市場向けのソリューションを提供してきたマイクロソフトは、そんな課題をいかに打破しようとしているか。全国の教育現場で数多く採用されているMicrosoft Educationの成功例を見ながら、ICT教育が目指すべき未来をひも解いていきたい。

パンデミックで10年加速したデジタル学習、一方で課題も……

「NWEAの調査によると、85パーセントもの教育者が『パンデミックがデジタル学習の未来を10年加速させた』と考えているそうです。さらに93パーセントの学生が『デジタル学習が教育に利益をもたらす』と考えています」。日本マイクロソフト株式会社の執行役員でありパブリックセクター事業本部、文教営業統括本部・統括本部長を務める中井陽子氏はそう語る。

 

実際、パンデミックにより日本のみならず世界中でロックダウンやそれに近い対策がなされ、生徒が学校に通えないという事態に。それを機に教育現場ではICT機器を利用したリモート学習が盛んに実施された。

 

「そんな中、70パーセントの教育者が『リモート学習で、魅力的で価値の高い学習体験を提供できるのか』という課題を感じているそうです。実際に学習達成度の中央値は、小学校高学年から中学生までの550万人の生徒の間で、数学で8パーセント以上、読書で3パーセント以上も低下したという結果が出ています」と中井氏は続ける。リモート学習は特にパンデミック下では必要なものだったが、一方で課題もある。

 

その課題を解決すべく、マイクロソフトはさまざまなITソリューションを提案している。「すべての学習者に公平な教育を実現するという信念をもって、教育現場におけるデジタル変革に取り組んでいます」(中井氏)。

公平さへの取り組みとして、「誰もが可能な限りアクセスできるインクルーシブなデザインが重要だと考えています」と中井氏は語る。その一例が、AIによる翻訳機能Microsoft Translatorの利用だ。これを使えば、パワーポイントを使ったプレゼンテーションの最中にも、スピーチを自動翻訳、字幕表示することが可能になる。これにより、聴覚に困難を抱える生徒や外国にルーツを持ち言葉の壁がある生徒も、取り残されず授業に参加できる。

 

実際に中井氏はセミナーの最中に自動翻訳機能を立ち上げ、自身の語る言葉を自動翻訳して見せたが、驚くほどのスピードとクオリティだった。今回はオンラインのセミナーゆえ参加者の表情はうかがい知ることはできなかったが、これがもしリアルのセミナーなら賞賛の拍手が送られたことであろう。

 

こうしたアクセスしやすい具体的なツールもさることながら、生徒一人ひとりの感情に問いかける工夫もなされている。その一例がTeams for EducationのReflectというアプリだ。これは先生がアンケート形式で生徒にテーマに沿ったその日の感情を問うもの。生徒は愛らしいキャラクターのアイコンとともに、「イライラする」「感謝の気持ち」など感情を表す単語をセレクトし、アンケートに応える。

 

「クラス全体の意識を探ることもできますし、一方で個々の生徒の感情の揺らぎもキャッチできます。ネガティブな単語が続く生徒を個別にフォローするなども可能です」と中井氏はその活用方法を示す。リモートで行う作業は常々「感情が伝わりにくい」という課題が付きまとうが、これならアイコンを選ぶ感覚で、生徒も素直に感情を表現できそうだ。

英語の音読はゲーム感覚で高得点を狙え!

こうした生徒の参加しやすさ、さらに自主的に参加できる工夫もICT教育では重要だと中井氏は言う。その一例として挙げたのが、Microsoft Teams for Educationで無償提供している、Reading Progressだ。これは生徒が自分の音読を録音して提出すると、AIが発音をチェックし、採点を提示してくれるもの。

 

日本で義務教育を受けた人の多くが、人前で英語を音読することに恥ずかしさを覚えた経験があるだろう。けれども、これは自分で音声を録音して提出する仕組みなので、その恥ずかしさが障壁になることはない。「しかも音読したファイルは何度でも撮り直しができるので、中には納得がいく読み方になるまで何度でも繰り返し読む生徒さんもいるそうです」(中井氏)。ゲームで高得点を出したくなる感覚で、音読のAI判定に夢中で臨む生徒の姿が目に浮かぶ。デジタルネイティブの生徒たちのやる気スイッチを押す、巧妙なプログラムだ。

 

さらにこのReading Progressは教師側のメリットも大きい。「例えば1人1分の音読でも、1クラス40人いればそれだけで40分かかり、かなり手間を要する作業になります。さらに教師が聞いても客観的に得点をつけにくいという課題がありましたが、それもAIが判定して数値化してくれる。生徒に客観的なフィードバックができるようになります」(中井氏)。Reading Progressは日本のみならず、英語教育に力を入れるアジア各国でも加速度的に普及しているという。

ICT機器がもたらす、年間70時間もの時短

こうした生徒側への働きかけのみならず、教師側のサポートもマイクロソフトが目指すところだ。「ICT機器を教育に採り入れることは、先生たちの負担の軽減にもなります。日本の教育現場では常に先生たちの忙しさが課題になっていますが、マイクロソフトではそれをデシダルでサポートしていきたいと考え、実践しています」(中井氏)。

 

例えば多くの学校で課題となっているのが、保護者からの欠席連絡など毎朝の電話対応だ。これをMicrosoft Formsへの連絡にすることによって、約9割、時間に換算して1年間で約70時間もの削減を実行した中学校の例がある。

 

またコロナ禍において、多くの学校で実施しているのが、体温測定などの生徒たちの健康観察。保護者が記入した手書きのカードを収集するというアナログな学校も多いなか、Microsoft FormsとPower Automateでのシステムに移行した学校では、毎朝の教員の業務軽減につながったという。登校前に健康状態の把握ができるうえ、要観察者や未入力者の判定も自動で行われるからだ。

 

そのほかマイクロソフトでは学校や自治体に対し、クラウドの導入を推進している。セキュリティーを心配することなく安心して使えるクラウドシステムを整備することで、教師は自宅でも職場と同じ環境で仕事ができるようになり、さらにこれまでの作業を省略することも可能だ。

「ゆとり」の先にある、現場のノウハウが詰まったデジタル教材

こうしてデジタルでサポートすることにより、教師側にもゆとりが生まれ、新たなチャレンジをしようという姿勢が出てくる。そんな時にもマイクロソフトは様々なソリューションを提供している。

 

例えばMicrosoft Hacking STEMは、実験・データ分析・問題解決ができる無償STEM学習コンテンツ。教師が教師のために書いた、中学の基準に基づいた授業計画だ。その中にはNASAと協働開発した「宇宙飛行士の撮影した地球の写真を分析して、気温の変化を予測する」、身近なものから風速計を作って「風速を分析する」など、大人が見ても魅力的なコンテンツが詰まっている。こんな授業が実現できるなら、教師になってみたいと思う生徒もいそうだ。

 

さらに先生方の教材・指導案共有サイト「Kyouzai.jp」では現場のノウハウが詰まった教材・指導案などがダウンロード可能だ。このウェブサイトはマイクロソフトの公認を受けたマイクロソフト認定教育イノベーターなる教師たちが全面協力し、例えば「Microsoft Teamsを使って学級のポータルサイトを手軽に作る方法」などが公開されている。

 

「先生方の中には、『多忙でICT教育どころではない』という方もいらっしゃいます。そういう方こそデジタルでサポートしたい。先生自身が幸せでないと生徒に愛情を注げない。先生方の幸せが生徒に波及すると考えています」(中井氏)。

 

中井氏はセミナーの間、しばしば「幸せ」「ウェルビーイング」という言葉を口にした。デジタル端末を使ったICT教育が目指す先には、生徒、教師、そしてそれを見守る保護者たちの「幸せ」というシンプルな言葉がありそうだ。

中井 陽子

Yoko Nakai

日本マイクロソフト株式会社
執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長

1997年に日本マイクロソフト株式会社入社。2008年オーストラリアのボンド大学にてMBA取得。マイクロソフトコーポレーション(米国本社)グローバル テレセールス ストラテジー コンサルタント、日本マイクロソフト株式会社 ディベロッパー & プラットフォーム ソリューションセールスリードなどを経て、2015年5月より業務執行役員 Windows & Office カテゴリー戦略本部 本部長に就任。2022年1月より現職。

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