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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

「地方の足」をサポート。ライドシェアをマッチング

コロナ禍後のインバウンドの回復に伴い、菅義偉前首相はライドシェアの解禁に向けた議論推進を改めて述べた。河野太郎デジタル大臣がタクシーの拾いにくい地域や時間帯を対象にライドシェアの導入を検討する考えを示したのも、記憶に新しい。

 

このように最近では議論が白熱しているライドシェアサービスだが、日本ではまだ馴染みが薄い。国内での実施例としては、2007年に運営開始し、2022年にアディッシュプラス株式会社が事業譲渡を受けたサービス「notteco」がある。日本のライドシェアサービスの先駆け的存在として注目を集めている同サービスは、中長距離を対象とした「カープール型」のライドシェアサービスをうたい、タクシー業界とは一線を画しているものだ。

「ライドシェアには、2パターンあります。『カープール型』と『配車型』です。例えば海外の『Uber』や『Grab』、『Lyft』などはドライバーが有償の運送サービスを提供する『配車型』と呼ばれるものです。一方で私たちのサービスは、ドライバーに特別な料金が発生しない『カープール型』です。目的地を同じくする人をマッチングさせ相乗りできるサービスで、ヒッチハイクに近いイメージです」(石川氏、以下同)

 

カープール型サービスは、白タクとは決定的な違いがある。それは、ドライバーに報酬が発生しないこと。平成18年に「道路運送法における登録又は許可を要しない運送の態様について」が国土交通省より通達され、実費(ガソリン代・有料道路使用料)を超えない範囲の受け取りであれば、旅客自動車運送事業に該当しないことが記載されている。

 

「nottecoでは、運行にかかった実費を乗車した人数で均等に割ることを義務付けています。そういった方向性から、国土交通省よりも日本の道路運送法で取り締まるものではない、という回答を得ております」

 

利用例が多いのが、東京―大阪間の移動。実例だと、単身赴任で大阪住まいの人が週末に自家用車で東京へ戻る際などに使われているとか。同じ距離を移動する人とマッチングできれば、移動代が半分に済むというわけだ。

 

nottecoでは、マッチング自体に料金は一切発生しない。そうなると収益構造が気になるところだが、運営会社であるアディッシュプラスは、notteco以外のMaaS(=Mobility as a Service)サポート事業をおこなっており、そのうちの一環としてnottecoを運営しているという。彼らのサービスの根底には「地方の移動をサポートしたい」という思いがある。

 

「地方の移動手段確保の問題は、サービスを『売る』『買う』といった資本主義的な考え方だけでは乗り切れないという感覚があります。そこで提案したいのが『シェアする』という発想。『地域の足を地域で守る』という、シェアリングエコノミーの考え方を落とし込むことが必須になってきます。その場合、ライドシェアの考えは親和性が高いと思っています」


既に、北海道天塩町(てしおちょう)でnottecoを導入している事例がある。天塩町と稚内市を住民同士の車の相乗りで移動できるようにする、日本初の試みだ。車で移動する際の空いている席をシェアすることで、運転手にとってはガソリン代の節約に、同乗者にとってはこれまで移動できなかった場所へ行けるようになる。

 

「相乗りがシステムできちんと制御されていて、『相乗り承ります』という意思表示がある中で、乗りたい人が利用する。住民同士での相乗りがよりスムーズになることをサポートできたら」

日本ではなぜライドシェア市場が活性化しないのか

ライドシェア解禁の期待が高まるが、なぜ国内ではこれまで活性化しなかったのか。業界の動向が着目されている中、2030年に向けてどのように変わっていくのか石川氏の考えを聞いてみた。

 

「海外と比較すると決定的に違うのは、まず、日本のタクシーサービスが素晴らしいということ。逆に海外のタクシーサービスは安全面で懸念視されることも多いため、ライドシェア事業がさかんになるのでしょう」

 

タクシー業界で叫ばれているドライバーの減少についてはどうだろうか。インバウンドの増加により観光地での交通手段不足が起こるといった課題感がある中で、なぜライドシェアが浸透していかないのだろう。

 

「人の動きや各地域でのニーズが時代の潮流により変わっていく中で、当然、交通手段が不足することも起こり得ます。そういった部分をライドシェアでカバーできればいいと思っています」

 

「なかなかタクシーが捕まらない」というときにライドシェアという選択肢もあれば、よりユーザーにとっては便利になる。nottecoの位置付けはあくまでそういった部分である、と石川氏は語る。

安全面など不安材料はユーザー同士で自然淘汰される

とはいえ、知らない者同士が長い時間同乗することや、安全面の担保が気になるところ。登録免許証の類の提示が義務付けられているとはいえ、トラブル回避についてはどのようにしているのか。

図は、上が同乗者、下がドライバーに課せられた登録の流れ。ドライバーは運転免許証の提示が必須で、同乗者は身分証明書の提示が必須となる。

 

「本人証明書類の提示を義務付けていることで、かなりハードルが上がります。私たちのサービスではこの項目を入念にチェックする体制を整えているので、これまで運営してきている中で大きな事故に繋がったことはないです」

 

そして気になるのは、安全面。

 

「酒気帯び運転チェックのツールや車内へのカメラ設置などが考えられますが、現在ではそれを義務付けているわけではありません。ですが、信頼度の高いサービスを使うことでマッチング率が高まることに繋がります」

 

不安視されるものは自然と淘汰され、信頼性の高い利用者同士がサービスを利用することができる。その積み重ねでサービスの質も向上するというわけだ。

 

「現状では、決済も利用者間で行われていますので、今後はドライブ履歴を残すシステムや決済システムの導入を視野に入れています。利用者同士の相互扶助の精神で、サービスの質が向上する。利用者は選ばれるべくして選ばれるような形になっていくというのが、マッチングサービスやシェアリングエコノミーの世界の中では、あってしかるべき形だと思います」

「新しい移動体験」で新しいコミュニティを創生

nottecoが目指している世界は、単なる交通手段としてだけでなく、相乗りすることで生まれるコミュニティや体験という付加価値の部分だ、と石川氏は語る。

 

「例えば東京―大阪間でのライドで、道中の会話で新しいコミュニティができることもあります。地方で行われる音楽フェスやスキーに同乗して一緒に行くことで、同じ目的の中でコミュニティが広がるケースもあります。実は、そういう使われ方が一番nottecoとしては多いんです」

 

nottecoが目指しているライドシェアの世界は、目的地に安く行くということにとどまらず、新しい出会いや目的地までの行程の楽しさという、体験としての価値なのだ。

 

「ライドシェアにネガティブなイメージもまだまだありますが注目が集まっていることは確かだと思うので、私たちの目指すシェアリングエコノミーとしての世界観をお伝えしつつ、サービスに興味を持ってもらえると嬉しいです。『体験を生むいち移動手段』として、選択肢の一つにnottecoも存在するような世界になっていけたらいいと思います」

 

資本主義の世の中では、モノが作られ消費される。ただそれはサステナブルではなくこれからはシェアリングエコノミーの価値が見直されていくだろう、と石川氏。

 

「2030年の頃は、デジタルの浸透や技術の向上も含めて、よりシェアリングエコノミーが当たり前な世界になってくるでしょう。『買う』の選択の横には『シェア』がある。そうなれば、もっといい世の中になるのではという気がします。公共交通機関でカバーしきれない場所でも、nottecoがあれば訪れることができる。そういった価値を与えられたら」

 

遠いから……と諦めていた地方音楽フェスや秘境の温泉に行くのも、もしかしたら現実的になるのかも。ライドシェアをベースにした新たなマッチングサービスで、選択肢が増えていくのが、なんだか楽しみになる。

石川琢磨

Takuma Ishikawa

アディッシュプラス株式会社・代表取締役

2014年、株式会社ガイアックスにて社内制度化されたカーブアウトオプション制度(事業部のリーダーやメンバーが自らの意志で事業を法人化できる制度)を利用してアディッシュ株式会社の立ち上げに参画、取締役に。2015年にアディッシュの子会社であるアディッシュプラス株式会社代表取締役に就任。2022年2月にカープール型ライドシェアサービスの「notteco」を買収。MaaS向けカスタマーサクセスなどを展開。

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