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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

「スポーツ指導の地域格差をなくす!」オンライン・リアルだからこそ成功するサッカー指導

スポーツ教育において、地域差が存在することは否めない。例えば離島だったり過疎地だったりすると、たとえ生徒にパッションがあっても、指導者が不在であったり、限られた指導者しかいなかったりすることがある。サッカーにおいてそんな地域差、機会の差をなくすべく、そして指導者自身が知識と経験をシェアできるようにと立ち上がったサービスがある。

 

「Footballcoach」(※1)は『指導者にスポットライトを。』をコンセプトに、Jクラブ、海外クラブ、街クラブなどさまざまなカテゴリーで活躍される指導者を中心に、指導現場に必要とされる考えやノウハウを伝えるイベントや指導者同士や保護者同士の交流会を会員向けに行っているオンラインサービスだ。

 

この「Footballcoach」を立ち上げた一般社団法人nukumo代表理事の尾倉侑也氏(※2)と、サンフレッチェ広島やロアッソ熊本、なでしこジャパンなどでGKコーチを歴任した澤村公康氏(※3)にデジタルを駆使した新たなスポーツ指導について伺った。

指導者にも選手にも保護者にも、新たな選択肢を

ひと昔前はスポーツの練習中に「水を飲んではいけない」という指導が存在した。近年はめっきり聞かれなくなったように、スポーツの世界において「こうあるべき」は日々変化している。

 

こうした時代の変化、そして指導法の変化に戸惑うのは選手だけではない。指導者もまた、日々「これが本当に正解なのか」と頭を悩ます。ましてやスキルも考え方も個性も異なる多数の選手を前にすればなおさら、思案することは多いだろう。

 

「これまでのサッカー指導の現場では、それぞれの指導者の経験やノウハウが情報共有されていないと感じていました。限定的な地域の中では交流があったりしますが、全国的な規模には至っていないと感じていました」

 

そう語るのはオンラインサービス「Footballcoach」を立ち上げた尾倉氏だ。

実際に長年指導の場に立ってきた澤村氏も、「これまで一番勉強になったのは、試合後にコーチや監督などと居酒屋で話している時だったりするわけです。指導者にとって大切なのは、自分たちのチームが試合に勝つこと、優勝することだけではないと思います。もっと広い目線で、将来的に良い選手を育てるために、オープンマインドで情報を共有できる場があればと感じていました」と語る。

 

情報が閉ざされた環境下では、選手にとって指導者の指示が絶対的になっていくことは少なくない。例えば指導者との相性が合わなかったり、必要なトレーニングがなされていなかったりした場合でも、他の選択肢があることを知らず、志半ばでスポーツの世界を去っていく選手たちもいるだろう。広く情報共有できる場があれば、指導者も選手も別の選択肢があることに気づく可能性がある。

 

「選択肢があることは指導者や選手はもちろん、保護者にも重要です。自分の子どもがどういう指導を受けているのかを知り、さらに日本や世界のいろいろなスタイルの指導に触れることで、改善できる部分があるかもしれないと気づけると思います」(尾倉氏)。

 

実際、Footballcoach内には、「保護者にもおすすめのコンテンツ」が設けてある。参考になるのは、指導方法や指導者の思考だけではない。もっと広く、例えば栄養学における「脂質」をテーマにした動画なども紹介されている。専門家が紹介する「太りやすい脂質とエネルギー源になる脂質の違い」は選手や指導者だけでなく、彼らの食を管理する立場にある保護者にとっても有益な情報だ。

ビジネスパーソンにも転用できる、指導者たちのメソッドやスピリット

Footballcoachは主に指導者向けのコンテンツをオリジナル動画で配信しており、その数は200本を超える。「指導者名鑑」というコンテンツでは、様々なフィールドで活躍する指導者がこれまで自身が歩んできた道について、そして自身の指導哲学やサッカーへの思いを語っている。普段じっくり聞く機会のないストーリーは、サッカーに直接関わっている人以外にも刺さる、上質なドキュメンタリーになっている。

 

こうしたコンテンツを見ていると、多くの選手を育ててきた指導者たちのメソッドやスピリットは、例えば部下の指導に当たるビジネスパーソンにも転用できるものがあると気づく。単なる指導スキルだけでなく、良いメンタルの保ち方、チーム内での円滑なコミュニケーションのとり方、ストレスの解消法など、サッカーというスポーツを超えて学べるものが少なくない。

さらにはFootballcoachではオンラインイベントを毎月10回以上開催している。その中には指導者同士の対談やライブ配信も多く、ここだけしか聞けないトークも少なくない。

 

「誰と誰をマッチングしてコンテンツを作ったらおもしろいかなというのは、常に考えています。掛け算をすることで、ここでしか聞けない話が出てくることが多い。例えばGoogleで検索すればさまざまな情報に触れられますが、こうした掛け算から生まれるストーリーはFootballcoachでしか見られないものだと思います」(尾倉氏)。

 

例えばかつて師弟関係にあった指導者同士のトークなど、深い付き合いがあるからこそ、心を許して語れる話もある。「かつては居酒屋でしか語られなかった話が、Footballcoachがあることによって日本中、世界中からアクセスできるようになったと感じています」(澤村氏)。

 

Footballcoachは月額会員制で運営している。無料で公開されているイベントや動画も多いが、有料会員になるとこうした動画をアーカイブで見られ、また会員向けのイベントに参加、さらにはその場で質疑応答ができたりする。

自身も九州でサッカー経験者であるという尾倉氏自身、「例えば有名選手に指導を受けるイベントなども、まずは首都圏での開催というのが一般的でした」と語る。スケジュールに限りがある以上、開催地が限定的になることはしばしば起こる。

 

オンラインであれば、こうした地域格差は解消される。「やはりキャリアのある選手や指導者に触れ、指導を受ける機会は、選手にとっては重要です。本物を知る機会にもなり、モチベーションの向上にもつながります」(尾倉氏)。

現地指導とのハイブリッドで地域格差解消を目指す「リモート指導」

ただしFootballcoachはすべてオンラインで完結するわけではない。「やはり直接の現場、オフラインで指導を受けることが理想ではあります。ただ、オフラインだけだと環境に依存する部分も多いため、オンラインとオフライン、うまく使い分けていければと思っています」(尾倉氏)。

 

たとえばFootballcoachで行っているリモート指導も、まずは現地指導から始まる。指導者と選手が同じピッチに立ち、コミュニケーションをとることを重視している。そこで目標や課題を見つけ、オンラインでの交換日記を活用した個別フィードバックを行う。ハイブリッド型を導入することで効率を上げ、地域格差を解消しようとしている。Footballcoachには広島県で実証実験を実施したレポートも掲載されている(※4)。

特に澤村氏が指導するゴールキーパーというポジションは、プロクラブでもゴールキーパーコーチという専門の指導者が在籍しているほど、特殊な指導が必要だ。こうした人材は地方では決して層が厚くなく、その点でもリモート指導を受けるメリットは少なくない。実際上記のレポートでも「今いるチームにはゴールキーパー専門のコーチがいない」と語る選手が、専門的な知識やテクニックを学びたくて応募したと動機を語っている。

 

「指導者がいないから、また良い指導が受けられないからと伸び悩んだり諦めたりする選手が一人でも少なくなればと思っています」(澤村氏)。

プロになるだけが目的ではない! スポーツの教育的側面とは

そもそもこのFootballcoachを立ち上げた背景には、サッカーはもちろん、ほかのスポーツも含めてもっと教育的な側面をクローズアップしたいという思いがあったという。日本において、スポーツの価値はもっと高くてもいいと感じていると尾倉氏は語る。

 

「サッカーもスポーツも、プロ選手になれないからといって、やっている意味がないわけではありません。たとえプロにならなくてもスポーツを通して社会に必要なことを学べることは多く、教育としても価値があります。子供にとって塾や語学学習同様にスポーツが重視される社会になればいいと感じていますし、それが社会に出てからビジネスにつながっていくことだってある。サッカーやスポーツのそうした教育的な側面をもっと広めたいと感じています」(尾倉氏)。

 

スポーツは必ずしも技術向上のためにやるだけではない。むしろFootballcoachには、指導者にとっても選手にとっても諦めずに続けるためのポジティブなヒントが詰まっている。

 

「Footballcoachが、サッカーの指導者や選手、そして保護者にとっての『お悩み相談所になれば』とても嬉しいです。このサイトに来れば、いろいろな意見があって、解決のヒントが見つかったりする。そんなサイトになっていると思いますし、これからもなっていければサッカー界の発展につながるのではと思います」(澤村氏)。

尾倉侑也

Yuya Ogura

一般社団法人nukumo 代表理事

「ありのままを表現できる社会」の実現に向け事業を展開する一般社団法人nukumo代表理事。「好きなことをやる。全部やる。」をモットーに、好奇心のまま生きる。"教育"をテーマに事業を展開。大好きなサッカーを通じて子供たちが「ありのままを表現できる」大人へと育ってほしいと、サッカーの指導法などを配信する動画メディア「Footballcoach」を運営。企業の事業コンサルにも従事。

澤村公康

Kimiyasu Sawamura

サッカー指導者/GKアカデミー ゴーリースキーム代表

1971年生まれ。サンフレッチェ広島、ロアッソ熊本、なでしこジャパンなどでGKコーチを歴任。GK育成に定評のある指導者であり大津高校、浜松開誠館中学・高校での指導歴に加え、現在はさまざまなカテゴリーのGKを毎月200 - 300人指導している。教え子には日本代表シュミット・ダニエル選手や大迫敬介選手など、プロ選手多数。

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