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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

「加齢の悩みの9割は“スマホ”で解決できる」シニアが執筆したスマホ指南本から学ぶ、高齢者とスマホのありかた

きたる2030年、そしてそれ以降、日本は「超高齢化社会」に突入する。労働人口の不足や災害時対応など、今後の課題は山積みだ。そしてそれを解決するツールは、身近な手の平にすでにある。高齢者こそスマホに親しむべき――そんなメッセージが具体策とともに詰まった書籍『老いてこそ、スマホ」(主婦と生活社刊)を上梓した牧壮氏、増田由紀氏に話を伺った。

高齢者における「スマホあるある」を凝縮、その解決策を提案

日本社会が高齢化していく中、さまざまな課題が積み重なっている。当事者としての高齢者自身も、若いころにはなかった悩みを抱えて日々暮らしている。

 

そんな高齢者、そしてその家族にスマホ活用を推進する書籍が発売された。それが『老いてこそ、スマホ 年を重ねて増える悩みの9割はデジタルで解決する 老いに親しむレシピ』(主婦と生活社刊)。現在86歳、シニア当事者である牧壮氏(デジタル推進委員アンバサダー)と、パソコン・スマホ教室を運営、日々シニアと向き合う増田由紀氏(スマホ活用アドバイザー・パソコムプラザ代表)の対話を中心に綴られた新刊だ。

「本を制作するに当たってこだわったのは、具体的な事例を盛り込むことです。スマホ教室で日々70代~90代の方々と向き合っていると、事例には事欠かない。シニアの方々の『スマホあるある』をたくさん紹介しています」(増田氏)

 

例えばシニアがスマホでつまずくことのひとつに「タップ」という操作がある。突然「タップして」と言われても、シニアにとっては聞きなれないカタカナの指示であり、困惑するのだ。

 

同書の中で牧氏は「タップ」を「赤ちゃんのほっぺたをつつくように」と表現している。するとこれまでギューッと画面を押し込んでいた人も、うまくタップできるようになるという。加えて高齢者は手が乾燥しがちなので、反応が悪い時は軽く湿らせるといいというアドバイスもなされている。

さらにシニアには文字入力が苦手な人が多く、それがスマホ活用に対する第一のハードルになっているという。そのため同書では音声入力のやり方をiPhone、androidそれぞれで解説。「例えば『ディズニーランド』のように、濁点や小さい文字が混在するワードは、シニアにとっては打ち方を覚えるのが大変です。それよりも口で言った方が早いんですよね」(増田氏)

 

同書は、こうしたスマホ活用のイロハだけではなく、高齢者の日々の生活を支えるための具体的な提案が網羅されている。例えばネットショッピングやネットスーパーの使い方、電子決済の方法、さらには物忘れの対処法としてカレンダーアプリの使い方などなど。

 

さらにはChatGPTの活用方法も提案している。年齢を重ねると親戚の結婚式のスピーチを頼まれるような機会もあるだろうが、そうした時のスピーチ原稿の作成をChatGPTで作ったというエピソードも紹介されている。

 

「わからなくなったことはネットで検索すればいいし、忘れそうなことはスマホに覚えておいてもらえばいい。加齢によって衰えていく脳もスマホがカバーしてくれるから、安心して物忘れできます(笑)。だから本のタイトルも『老いてもスマホ』ではなく『老いてこそスマホ』なんです」(牧氏)

シニアのスマホ普及率と使いこなす秘訣は

そもそも、日常的にスマホを使いこなしているシニアはどのぐらいいるのだろうか。総務省が行った令和4年通信利用動向調査によると、60代で約83パーセント、70代で約60パーセント、80代で27パーセントがスマホを所有している。予想の範囲内ではあるが、高齢になるにつれスマホの普及率は下がる。特に70代と80代の隔たりは大きい。

 

「80代の方はスマホが登場した時にはすでに70代だったわけです。新しいツールを覚える気力がなかった方もいるでしょう」(牧氏)

 

一方で80代でもスマホを使いこなしている人も。牧氏や増田氏の体感から、シニアは3つのタイプに分かれるそうだ。放っておいてもどんどん使えるようになる人が2割、スマホは断固拒否の人が2割、そして後の6割はスマホの必要性を感じながらも不安を覚えて一歩踏み出せない人たちだという。

 

使いこなせている人の秘訣を聞くと、「やはり好奇心や挑戦してみようという気持ちだと思いますね。わからないことを知りたいという思いがある人は、年を重ねてもスマホを使いこなしています」(牧氏)

 

さらにスマホの親しみ方には性差もあると指摘する。「女性のほうが『これをやりたい』『あれを知りたい』と具体的な目標があり、そこに向かって進む傾向があると思います。対して男性は、もっと体系的にスマホを学びたいという方が多い。『マニュアルはないのか』と聞かれるのは男性の方が多いですね」(牧氏)

 

「シニア男性の方には、人前で失敗したくない、失敗するのが恥ずかしいという思いを持っていらっしゃる方もいます。そういう方は、例えば気心知れたお友達同士で習いに行くなどがいいと思います」(増田氏)

 

さらにシニアにおけるスマホの普及率には地域差もあるという。NTTドコモが設立したモバイル社会研究所の調査によると、70代のスマホ所有で最も高いのは近畿の82%、最も低いのは北海道・東北の65%だという。

「やはり地方に行くほど近くにショップがなかったり、スマホ教室などが開催されていなかったりとスマホに触れる機会が少ないのが一因だと思います」(牧氏)

 

「地方で開催されるスマホ教室に講師としていくこともありますが、参加者の中にはかなり古い機種を使っておられる方もいます」(増田氏)

 

高齢者がデジタル化から取り残されないようにする政府の支援は、総務省を中心に行われている。スマホやマイナンバーカードの使い方を教える「デジタル活用支援員」について、2025年度までの5年間の事業を実施中だ。毎年度、5,000カ所で講習会を開き、5年間でのべ1,000万人の高齢者の参加を促している。ただしスマホを持ってはいるものの、うまく活用しきれていない層も少なくない。

 

「子供に持たされているけれど、電話以外の細かい使い方がわからないという人も多いですね。シニアがスマホに親しむには、上から『使わないとダメ!』と言われるかたちではないほうがいいと思います。歳の近いお友達同士、近所の方同士、『一緒に使ってみましょう』という方がスムーズに習得できる気がします」(増田氏)

 

「よく『購入するにはどの機種を買えばいいですか』と聞かれることがあるのですが、『親しい方と同じ機種がいいと思います』と答えています。そうすれば何かあったとき相談しあえますから」(牧氏)

親にスマホについて聞かれ、イライラする子供世代への助言

スマホを日常的に使っている人から見ると、同書には「なるほどシニアはここでつまずくのか」という気づきが詰まっている。そしてそれに対する明確な解決方法も。だからこそ「子供世代の方々から『親にこの本をプレゼントしたい』という声をいただくことは多いですね」(増田氏)

 

子供世代の中には、親にスマホの使い方を聞かれ、イライラしてしまった経験がある人も少なくないだろう。同書にはそうした子供世代の心構えも記されている。すなわち親がスマホを使いこなせるようになると、子供世代にとっても大きなメリットがあると冷静に考えること。牧氏は親世代に対しては、子供もスマホの専門家ではないと認識することも必要だと語っている。

 

「親がスマホで『これができない』と子供に言ってきたとき、『貸して!』と言って勝手に解決してしまうと、身に付きません。親が『〇〇ができなくなった』と言ってきたときは、『それはいつから?』『どうしたらできなくなったの?』と、まず質問してみる。こうすることで親自身が原因に気づくことが少なくありません」(増田氏)

 

同書にはさらにスマホに関するトラブルへの対処法なども解説されている。個人情報を抜き取ろうとするショートメールや、フィッシングサイトに関する対策などだ。こうしたスマホにまつわるトラブルを耳にし、スマホやデジタルに苦手意識を持つシニアも少なくない。

 

「スマホでトラブルに遭われるのは本当の初心者よりも、ある程度使いこなせる方が多い印象があります。対処としては知識をつけること。日々ニュースや情報に触れ、『これは怪しい』という感覚を身に着けることが必要です。それはなにもスマホに限ったことではないでしょう」(牧氏)

 

「気を付ける必要はありますが、やみくもに恐れる必要はありません。よく生徒の方から『このボタンを押しても大丈夫でしょうか』という質問をいただきます。『大丈夫ですよ、押しても爆発しませんから』と答えることも。シニアは未知なるスマホに不安を覚え、それがスマホを使いこなすときの障害になったりします。対策をしつつ、過度に恐れる気持ちを取り除いてこそ、楽しく使いこなせるようになると思います」(増田氏)

スマホそしてSNSがシニアの暮らしにもたらすもの

シニアからスマホに関するもので一番に多い質問は、LINEに関してのものだと増田氏は言う。それだけ日本において普及率が高いということだろう。ほかにも同書にはXやInstagramなど、各種SNSの使い方も解説されている。

 

「SNSの楽しさを知って、スマホが使いこなせるようになった方もいます。そこにコミュニケーションが生まれるだけでなく、本人の投稿がされていることは、生存確認にもなる。そんな投稿を見て、親も元気で過ごしているんだと確認している子供世代の方もいらっしゃいます」(増田氏)

 

「高齢になるにつれ、友人や知り合いの数も減ってきます。出かけるのがおっくうになる方も多いのではないでしょうか。そうした点もスマホが解決してくれます。LINEやSNSを使うことで、さまざまな人とコミュニケーションがとれ、新しい友達も増える。スマホを使っていて一番良かったのは、高齢者でも孤独にならないことだと思います」(牧氏)

 

牧壮

Takeshi Maki

デジタル推進委員アンバサダー、一般社団法人アイオーエスシニアズジャパン理事

1936年生まれ。慶応義塾大学工学部を卒業後、旭化成工業株式会社に入社。1999年にリタイアし、マレーシアでインターネットビジネスを展開する。75歳で帰国し、シニアのインターネット活用を支援する活動を開始。81歳で一般社団法人アイオーエスシニアズジャパンを設立。2021年にはその活動が評価され、デジタル庁から「デジタル社会推進賞・デジタル大臣賞」を授与される。

増田由紀

Yuki Masuda

スマホ活用アドバイザー、「パソコムプラザ」代表、デジタル推進員

2000年に千葉県浦安市でミセス・シニア・初心者のためのスマホ・パソコン教室「パソコムプラザ」を開校、パソコンやスマホのリアル/オンライン講座を実施。2007年よりYouTube「ゆきチャンネル」を開設、スマホの楽しい使い方やビジネスへの活用術を動画で配信している。シニアへのデジタルやSNS活用の啓蒙活動が評価され、2022年にデジタル庁から「デジタル推進委員」に任命された。

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