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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

個室トイレで生理用ナプキンを「無料提供」。ビジネスとして成り立つ仕組みとは?

「ジェンダーギャップ指数」とは、SDGsにおける17の目標の一つとしてジェンダー平等の実現が掲げられる上で、各国の男女格差を数値化したものだ。2023年の日本のジェンダーギャップ指数は、146か国中125位(世界経済フォーラム調べ)。前年の146か国中116位からさらにランクダウンし、先進国の中で最低レベルだ。

 

そういった現状に課題感を感じ、ジェンダーギャップを少しでも埋めるビジネスとして生まれたのが、「OiTr(オイテル)」。そのサービスとは、個室トイレに生理用ナプキンを常備し無料で提供するというもの。専用のアプリ(無料)をダウンロードしスマホを使うことでナプキンを受け取ることができる。OiTrのプラットフォームを活用し、女性のウェルビーイングを目指す。そんな同サービスを創出した、オイテル株式会社・取締役の飯﨑俊彦氏に話を聞いた。

ジェンダーギャップを是正したい

「社会がよくなる」に繋がることをしよう。そんなビジョンを掲げてスタートした、オイテル株式会社。社会が抱える課題はさまざまあるが、その中で彼らが着目したのは、日本のジェンダーギャップ指数が主要先進国において最低レベルであるという事実。

 

「ジェンダーギャップ指数は、『政治』『経済』『教育』『健康』の4分野の指数で算出された総合評価で決まります。この中での『健康』とジェンダーギャップの関係性はどうあるのかをリサーチするうちに、この指数の健康分野と直接関係ないのですが、女性特有の健康問題である「生理」が大きくジェンダーギャプに関わっていることが見えてきました。「生理」についてはなかなか理解が得られない部分も多く、それをフラットにしていくことがジェンダーギャップを埋める一つのカギと考えたのです」(飯﨑氏、以下同)

 

時代の流れは、随分と女性が社会で活躍しやすくなったように一見思える。データにもそれが現れており、2019年の総務省の調べでは、日本の就業者数 6,659万人のうち男性が占める割合が53%、女性が占める割合が47% と、男女の就業者比率はほぼ半々に。正規の職員・従業員の割合は過去5年間で男性が67万人増に対して女性は138万人増と、女性の伸び率が著しい。

「女性の生き方は、ここ数年で多様化しました。結婚し子供を産み育てるのが女性の幸せといわれていた時代から、そこに捉われずとも仕事をし続けるのも一つの幸せな選択といわれる時代に。この数字だけを追うと女性にとって就労環境が良くなっている気がしたんですが、そうなってくると男性と同等に働く現代女性にとって、毎月の生理がこれまで以上に大きな壁ともなるのです」

 

生理は、当事者以外に理解され難いことが多い。生理痛やPMS(月経前症候群)などの生理中の不快症状により仕事に影響があったとしても、なかなか休みづらい風潮が未だにある。生理休暇を導入している企業でも、実際に活用されているのは1割程度という。

 

さらに生理に最低限必要なものへのアクセスが困難、経済的困難、社会における生理への偏見など、生理の不条理は、社会問題としても問われている問題。生理用品などにかかる費用は1ヵ月で約500~1,200円、生涯で約40万円かかるといわれる。

 

「リサーチするうちに『生理用品はなぜトイレットペーパー同様にトイレに常備されてないんでしょうか』という声に出合いました。必要なものなのに、アクセスができない。この課題をビジネスで解決できないものか」

 

「個室トイレに生理用品が行き届く社会」を実現し、生理のある人が強いられるさまざまな負担を、幾分まかなえないかと思いから「OiTr」のサービスは生まれた。

生理用品を無料提供。「三方よし」な仕組み作り

2021年の8月にサービスがローンチされた、生理用ナプキンを商業施設や公共施設・学校・会社など出先のトイレに常備し、無料で提供する日本初のサービス「OiTr」。出先のトイレで生理用品を無料で使うことができるのであれば、当事者にとって便利に感じる側面が増えることは間違いなさそう。ただ「無料で」というのは、うれしい反面、いろいろ気になってしまうもの。本当にビジネスとして成り立つのだろうか。そこで同社ではさまざまな可能性を検討し、無料で生理用品を配布できるサービスの仕組み構築をしたという。

「生理用品の自動販売機が女性トイレの一角にあることは多いですが、私たちはトイレットペーパー同様に生理用品が行き届く社会を目指すべきだと思い、個室に設置したいと考えました。個室に入ったときに生理に気がつくことも多いといいます。だからこそ、個室内につけることに大きな意味があったのです。さらにトイレットペーパー同様と考えると、無料提供であるべきだと。それを課題に掲げて、スタートしました」


OiTrとは、「One in The restroom 」の頭文字をとったもの。現在では施設のトイレには便座除菌クリーナーやベビーチェアなど、さまざまなものが設置されているが、生理用品が常備されているところはまだまだ少ない。「個室にあるべき大切な一つ=One in The restroom 」、それが生理用品であるというメッセージが込められている。

 

仕組みは、OiTrが設置されている個室トイレの壁面に掲示されているQRコードをスマホのカメラで読み取り、アプリをダウンロードすれば利用できるというもの。ユーザー登録が必要にはなるが、それを個室でするとトイレの混雑にも繋がるため、初めて利用の際はアプリをダウンロードしアプリの画面の取り出しボタンをタップしディスペンサーに近づけるとBluetoothが反応し、ディスペンサーからナプキンが1枚出てくる構造となっている。

気になるのは、ナプキンを何枚も持っていってしまう人がいないのか? ということ。そこは倫理観でカバー?

 

「おっしゃる通り、何枚も一度に取られてしまうと、本当に必要な人に行き届かなくなってしまいます。ですから、枚数制限をかける必要性は当然あります。そのために、個人のスマホと連動させているのです。1枚利用すると、2時間後でないと次の1枚が取り出せない仕組みになっています」

 

この「2時間」は、生理用品メーカーが生理用ナプキン取り替えのタイミングが2〜3時間に一度と推奨していることに準じている。さらに期間制限も設けており、正常な方の生理周期の平均値に基づき、その最短の25日間で最大7枚のナプキンをOiTrから受け取れる仕組みだ。

 

「25日間の期間で7枚全部使ったら、26日目にはまた7枚を利用できる仕組みです。私たちのサービスは、個人が必要とするすべての生理用品をまかなうものではありませんので、厳密な枚数制限をかけることで、ビジネスとしてまわしていけるというわけです」

 

あくまで、ビジネス。だがしかし、ナプキンは設置施設に買い取ってもらうのではないという。ここが、ビジネスとしておもしろい部分。このナプキン代は、広告収入でまかなうというのだ。そのためOiTrのディスペンサーには液晶画面がついていて、トイレの個室に入ると人感センサーが反応し動画広告が流れる仕組みとなっている。

 

「タクシーに設置されているデジタルサイネージ広告がヒントになりました。ある一定の確保された時間の個室というのが、タクシーとトイレでは共通しています。とはいえ、広告を見ないとナプキンを受け取れないわけではありません。広告を流すのは、トイレの個室に入った全ての人が対象。ナプキンを使う人数とトイレに入る人数は全く違うので、トイレに入る全ての人に広告を認知してもらわないと媒体価値がないと考えました」

 

OiTrの設置導入に際し、埼玉県富士見市の「ららぽーと富士見」で実証テストした際、1日あたりトイレ1個室に最大約200人もの人が出入りしていることがわかった。この数字を見て、媒体としての可能性を確信したという。

 

「女性トイレに設置しているため、ターゲットが女性であることは明確。設置施設によっても属性のターゲティングが可能に。例えば大学であれば学生に向けて、オフィスであれば働く女性に向けてなど。ターゲットを絞れるため、インプレッション数が高い広告を打つことができます。なおかつ、時間を遮るものがない個室という空間なので、非常に視認率は高くなります」

 

設置条件として、基本、動画広告を流すことで、施設もナプキンのコストはかからない。設置施設にとっては人のさらなる流入が期待でき、広告主にとっては媒体価値があり、利用者にとってはウェルビーイングに繋がるというわけだ。

 

「この『三方よし』である仕組みこそが、人や社会にとっての価値創造になっていると考えています。利用者にとっても、今自分が生理用品を必要としていなくても広告を見ているというその行動が広告主を増やすことに繋がり、その結果、今生理用品を必要としている誰かをサポートしているのです」

 

現在設置されているのは、2023年11月末現在で25都道府県ほど。設置台数は、195ヶ所の施設に2,590台。

アプリのダウンロード数は85万。これからどんどん設置を増やすべき、価値あるサービスだと飯﨑氏は語る。

これから先は「価値観」こそが繋がるキーワードに

スマホを介して、いままで考えもつかなかったサービスが享受できるようになった現代。OiTrのサービスもその一つだ。トイレの個室にいながらして、スマホさえあれば生理用品を受け取れるなんて、数年前では考えてもみなかったこと。2030年の時点では、どんな世界になっているのだろうか。

 

「時代の流れをみて、今までは不動産、所有物、学校や会社、さまざまな既存のモノたちに縛られてきました。しかし、インターネットが普及しコロナ禍でさらに加速し、個人個人が自由に移動、活動することをバックアップするインフラや社会システムが構築されてきています。このことにより、人々はいろいろなモノから解放されていくと思います。これからもっと加速していくでしょうね」

 

メディアの役割もどんどん多様化している。いままではメディアといえばある程度限られた領域のものを指していたが、OiTrのような社会貢献の役割を持つデジタルサイネージ広告メディア、新しい発想のメディアが次々と出現していきそうだ。さらにメディアで届けられるのも、広告に限らずAIにより、もっとパーソナルな情報を適切なタイミングで提供できるようになっていくだろう、と飯﨑氏は語る。

 

「コロナ禍で大きく、人々の価値観が変わりました。リモートワークが当たり前になったのが、いい例だと思います。在宅前提での就職活動も、今では当たり前ですよね。社会に変化にともない、人も変わっていきます。より社会や人が多様化していく中で『バラバラ』に向かう中、人々を繋ぎとめられるのは『価値あるものだけ』だと思っています。この価値というものに着目し、どういったサービスとして私たち企業が提供できるか、繋がれる仕組みづくりをどう構築するのかが、人と人を交流させる一つの策だと思っています。繋がることができる価値を創造することは、唯一無二になっていくでしょう」

 

人々の「価値」の橋渡しをするのが、これから先のメディアの役目。メディアとは情報伝達の媒介になるという役割に留まらず、人々の交流の場所ともなっていく。そういったムーブの中で、スマホは最も重要なプラットフォームとしての可能性を秘めているというのだ。

 

「未来がどうなるかは、当然予測はつかないです。ただ今の時点で分かるのは、今までの固定観念はどんどん壊れていくこと。壊れるということは、始まるということです。2024年を目前にした今は、世の中が変わる過渡期でしょうね」

 

壊れながら、生まれていく。そのために生まれるサービスやビジネスで、世の中の当たり前が変わっていく。ジェンダーギャップの課題がどんどんクリアになり、よりジェンダーフリーな世界へ。そんな未来予想図を想像すると、いまある社会課題は決してマイナスなことではなく、プラスに働きかける前兆である気さえしてくる。

飯﨑俊彦

Toshihiko Iizaki

オイテル株式会社 取締役

「あなたによくて、社会にいいこと」をビジョンに掲げるオイテル株式会社の創業メンバーとして、革新的な「OiTr(オイテル)」の企画立案・事業戦略に従事。これまでもエイベックス・グループでのエンタテイメント養成スクール「avex artist academy」、新オトナ・ラボ「avex lifedesign lab」の企画立案を担当。また、IT・デジタルコンテンツ人材養成スクール「デジタルハリウッド」の拠点展開など、多岐にわたる事業開発とプロデュース経験を有する。

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