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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

食品・飲料のパッケージデザインをAIが自動で評価・生成「開発期間3ヶ月間を1時間に」

AIにより様々な業態の自動化が進むなか、同様のことがデザイン業界でも起きている。人間の最後の砦とも言うべきクリエイティビティをAIが持てるかどうか?について長年様々な議論がなされてきたが、その一つの解を導き出しているサービスがある。食品や飲料などの商品のパッケージデザインをAIが自動で評価・生成する「パッケージデザインAI」だ。サービスリリースから3年で既に860社が導入、2022年12月には「第4回 日本サービス大賞」総務大臣賞を受賞するなど、業界の域を超え注目を集めている。開発は今も進行中で、今後新たに追加する機能もあるという。サービスが目指すものやAI活用が加速するクリエイティブ領域の未来について、サービスを開発する株式会社プラグの根岸由紀氏に話を伺った。

1時間で1,000案を自動生成

「パッケージデザインAI」は、デザインの初案画像をアップロードするだけでデザインのパーツをAIが自動で組み替えることで、デザイン案を作ってくれるオンラインサービス。それも、そのまま店頭に並んでいてもおかしくないレベルのデザインを、1時間で1,000案も得ることができる。

これまでのデザイン開発は「スーツに例えるなら、フルオーダーの高級品でした」と根岸氏。それが「パターンオーダー」できるようになったことで、開発期間が短かいものや、予算の少ないプロジェクトでも、質の高い商品デザインを作れるようになった。

 

同様に、AIがデザインを自動生成するサービスは存在するが、「パッケージデザインAI」が優れているのは、デザインを生成するだけでなく、生成したデザインの評価もできる点にある。例えば、消費者にどれほど好まれるか?見る人にどんな印象を与えるか?といったいくつかの項目でデザインの評価を予測。1つの商品について契約期間内であれば、生成・評価を何度繰り返してもOK。生成と評価が一本化しているため的確なデザイン改良ができ、より商品ターゲットに合ったデザインを作ることができるのだ。

サービスを自社開発する株式会社プラグは、パッケージデザイン企業とマーケティングリサーチ企業が合併して誕生した、というバックグラウンドをもつ。現在もデザイナー/リサーチャーがそれぞれ30名ずつ在籍するという、国内でも珍しい形態だ。

調査と改善に多大なコスト

クリエイティブ業界というと長時間労働が多いイメージは強いが、あくまで漠然としたものだ。根岸氏曰く、パッケージデザインの領域には特有の課題があるのだという。

 

「商品デザインの開発期間は大体6ヶ月ほどです。前半の3ヶ月は幅広いデザインを作る創造の期間です。デザイナーに依頼して30案ほど作ることが多く、大型商品にもなると数社のデザイン会社に依頼して100案以上作ることもあります。そのなかから数案に絞った案を、後半の3ヶ月で調整し、改良を重ねます。消費者調査をしながら、ロゴの大きさや色を変えるなど、より商品コンセプトに合った改良をしていく。弊社ではこの後半の3ヶ月にお金と時間がかかりすぎているのを長年感じてきました」

 

具体的には、消費者調査は主にWEB調査やCLT(会場調査)の2種がある。どちらも消費者に、デザイン案を数案見比べてもらった上にアンケート結果を取るものだ。特にCLTでは、会場設営なども発生するため、企画から調査結果が出るまでに1〜2ヶ月かかる。そこからデザイン修正が始まるので、トータルで大抵3ヶ月ほどかかってしまうのだ。マーケティングリサーチ会社として、同社はこうした消費者調査の実態を間近に見てきた。後半の3ヶ月を短縮し、開発に大切なクリエイティビティの時間に充てるべきでは? そうした課題感が、後半3ヶ月の調査・改善を1時間で行うというサービス構想を導いた。

また、デザインとは主観が入りやすい領域でもある。デザイン案を絞り込む際、ブランドマネージャーや商品開発者が“直観や主観”で選んだり、または裁量の大きい役員などの“好み”が多分に反映されるケースもあると根岸氏。

 

「もちろん、ブランドマネージャーや商品開発者の経験による直観が正しいことも多くあります。ただ、デザインとは、好き嫌いが色々言えてしまうものです。部長さん・社長さんクラスが『こっちが良いね』と言えば、開発担当者の意に反して決まってしまう“鶴の一声”問題などというのも良く耳にします。そんな時には、やはり評価が可視化されたデータがあると議論を続けやすくなります」

ユーザー調査の結果をAIに活用

デザイン生成と評価の2軸で展開するパッケージAIだが、サービスが評価から始まっている点が興味深い。同社は2015年からオンラインによるパッケージデザインの消費者調査を毎年続けており、現時点で集まった調査結果は1,020万人以上。その結果を活用し、2019年4月にデザインの評価ができる「評価AI」を自社開発。その後も同社では消費者調査を重ね、また東京大学との共同研究も行うことで、AIの予測精度を高めてきた。

評価AIでは、パッケージデザインの画像をアップロードするだけで、様々なデザインの評価が約10秒で表示される。好き〜好きではない、までを5段階で表す「好意度評価」に、美味しそう、可愛い、といった19ワードのスコアを表す「イメージ評価」、またデザインのどこが見られているのか?を色で示す「ヒートマップ」など、AIが予測した様々なスコアを、一目で知ることができる。

 

2021年、こうした評価機能にデザインの生成が加わりパッケージデザインAIが誕生した。

AIが得意なのは過去のデータ

「AIが人の仕事を奪う」と危惧されて久しいが、特にこうしたクリエイティブ領域でのAI活用については戦々恐々としているアーティストやデザイナーも多いと思う。対して、AIは「ゼロから新しいものを生み出すことは苦手」というのが根岸氏の考えだ。

 

「AIは大量のデータを扱って、データ解析や予測を行うことが得意です。ですが、あくまで過去のデータを基に結果を導くだけです。その意味でもクリエイティビティ領域で新しいものを作り出すのは、やはり人間の方が長けています。今後は人がAIを活用することで、人間のクリエイティビティが触発され、より大きな力が発揮できるようになるのではないでしょうか」

 

確かに、パッケージデザインAIのデザイン生成でも、初案はデザイナーによるデザイン案が要る。このことからも、商品開発のコンセプトや想いなどの概念を初めに形にするには人のクリエイティビティが必要、という同社の考えが伺える。

世界的には、AIがテキストから画像を自動生成するサービス「Midjourney」や「Stable Diffusion」などが2022年に相次いでローンチしたように、クリエイティブ領域のAI技術は加速している。そんななか同社のパッケージデザインAIでも、こういった自動生成サービスを活用する研究開発を進めている。

 

AI技術でデザインの世界が活性化されることで、さらなる人の創造性が発揮される。そんな未来では、AIをいかにツールとして活用できるかがキーになるだろう。

根岸 由紀

Yuki Negishi

株式会社プラグ 経営企画室 広報

早稲田大学商学部でマーケティングを専攻。キッコーマン株式会社でマーケティングリサーチ部門を経て、プラグの前進であるデザイン会社に入社。マーケティングリサーチ、商品開発のプロジェクトマネジメントを担当。自身がリサーチを多数行っていた経験からパッケージデザインAIの魅力・有効性を多くの方に伝えたいと、2019年のパッケージデザインAIのローンチ時より広報を担当。

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