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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

壊されつつある〝言葉の壁〟の完全突破に挑む、AI通訳機「ポケトーク」の進化

「弊社の調査によると、企業の経営層の実に8割が通訳や翻訳のコストに課題を感じているという結果が出ているんですね。そうした企業活動を通訳機や翻訳ツールで代替していくには、〝なんとか通じた〟というレベルではなく、当然ながら一定以上の精度が求められてきます。そのときに、ポケトークの強みが活きてくるというふうに考えています」

 

そう答えるのは、若くしてポケトーク株式会社のCMO(最高マーケティング責任者)に抜擢された若山幹晴氏。近年、翻訳ツールやアプリの進化が止まらない。Google翻訳やMicrosoft Translator、DeepL、Papagoといった翻訳サービスは、人工知能や機械学習の技術を用いることで、大きく精度を高めることに成功してきている。そうした中、2022年12月に、発売から5年を経て累計出荷台数が100万台を突破したのがAI通訳機の「ポケトーク」である。

 

「言葉の壁をなくす」がミッションのポケトーク株式会社が提供するIoT製品の「ポケトーク」は、なぜ翻訳サービスが全盛を迎えた今でも躍進を続けているのか。その強みとは。そして、コロナ禍という荒波を乗り越えた現在、どのような展望を抱き、どのようにさらなる拡大を狙っているのか。ソースネクスト株式会社からスピンアウトした2022年2月よりほどなくしてジョインした若山氏に話を聞いた。

箱から取り出し、そのまま141カ国・地域で使える「クラウド+AI」の通訳機

同社はポケトークについて、「互いに相手の言葉を話せない人同士の会話を可能にする通訳ツール」と表現している。主な利用シーンとしては、海外旅行や語学学習、リモート会議や動画視聴、接客現場での外国語対応などがあるという。

 

ポケトークが発売されたのは2017年。当初より「言葉の壁をなくすこと」を目的に、ハードウェア(デバイス)として設計され、「ポケトークW」「ポケトークS」「ポケトークS Plus」と機能を進化させてきた。さらに、2020年来のコロナ禍での生活様式の変化、ニーズの変化に合わせ、それまで同社が培ってきた技術を応用し、リモート会議などに使えるソフトウェアの「ポケトーク字幕」を2021年に、スマホやタブレットにも使える「ポケトークアプリ」を2022年にリリースした。

 

「いずれも基本となる技術は同じとなります。84言語に対応しており、そのうち73言語が音声とテキストの双方に対応しています。たとえば私が日本語で話したことを、相手が中国の方であれば、中国語に通訳し、音声で出していく。逆に、相手の中国の方が話をした内容を日本語に通訳して日本語で音声に出していくという形で、双方向でコミュニケーションを取ることができるようになっています」(若山氏、以下同様)

 

ポケトークは、「翻訳機を超えた、夢のAI通訳機」を謳っている。その最たる所以は、常にインターネット上のクラウドを介して通訳がなされていることにあるという。若山氏はこう話す。

 

「世の中にある通訳機には、大きく2種類がありまして、1つはオフラインのもの。インターネットを介さずに通訳するものです。もう1つはオンラインのもので、常にインターネットを介した通訳がなされます。両者の違いは精度です。後者のほうが高い精度をもちます。ただ、当然ですが通信環境下になくては機能しません。そこで(ハードウェアとしての)ポケトークは、みなさんがお使いのスマートフォンと同じようにSIMカードが搭載されています。そして、特別な契約をせずとも141カ国と地域でそのままお使いいただけるようになっています。極論、箱から取り出して、スイッチを入れるだけで使えます」

「正確性」「スピード」「使いやすさ」の三拍子が揃っている

冒頭にも書いたように、ポケトークの強みは「精度である」とする若山氏。では、その「精度」とはどういうことか。若山氏は次のように話す。

 

「精度というのは、もちろん正確性という意味での精度が第一義ですが、それに加えて『スピードが速いこと』も重要です。ポケトークは後ほど説明する技術を通じて両者を兼ね備えたAI通訳機であり、2017年の発売から度重なる改良を経て、様々な用途やシチュエーションに合わせたUI、つまり〝使いやすさ〟も追求しています」

 

ひるがえって、翻訳ツールに関していえば、Google翻訳やDeepLなどが人工知能や機械学習、深層学習といった技術を通じて飛躍的に発展してきた。必然と、「スマホとGoogle翻訳があれば、わざわざ通訳機なんて用意する必要はないのでは?」という疑問もわいてくる。

 

「そのような質問や疑問を投げかけてくる方はとても多いですね。まずお伝えしたいのは、そもそもGoogle翻訳もDeepLも、その他の翻訳ツールも我々の〝競合〟ではないことです。どういうことか理解いただくには、ポケトークの仕組みからお伝えしなければなりません。

たとえば私が日本語で話している内容を英語に通訳する場合を想定してみます。最初に行われているのは、私が発話した日本語音声をテキストにするという作業です。ここでは音声認識という技術が使われています。その次に、そのテキストを英語に翻訳する作業が行われます。これは翻訳エンジンといわれるものが働いています。最後に、その翻訳されたものを音声化するという、3つのステップが動いているんです」

その3つのステップのそれぞれのAIを搭載したエンジンが動いているという。その中で、Google翻訳などの技術は、翻訳エンジンとして組み込まれているものになると、若山氏は説明する。

「ですからGoogle翻訳は競合ではないのか、という質問に関していえば、グーグル翻訳は私たちの重要な翻訳エンジンの1つであるという答えになります。そしてもう1つ、ここに我々の特徴がありまして、言語の組み合わせや、日進月歩のAI技術の進化に合わせた形で、常に最適な音声認識と翻訳エンジンをシームレスに繋げているんですね。だから、ポケトークは翻訳精度に優れており、かつ速度も速い、といったところが強みになっているんです」

 

常時、通信している状態にあるので、究極的なことをいえば、今使っているエンジンと、明日使うエンジンが異なることも。仮に1つの翻訳エンジンが何らかのトラブルで使用不可になった場合も、別の翻訳エンジンがバックアップで動くように設計されており、「現場で使おうと思ったら動かなかった」ということがないようにできているという。

専用機としての使いやすさを追求したからこそ、学習・教育分野にも広がっている

先ほどの若山氏の言葉の中に、「使いやすさ」や「UI(ユーザーインターフェース)」も追求してきたとあったが、具体的にはどんな特徴を持っているのか。

 

「1つはボタン一つでコミュニケーションが取れるような仕様になっていることです。たとえば駅員さんであれば、いきなり外国語で質問されるようなシチュエーションが考えらます。そんなときでも、ポケトークをポケットから出し、ボタンを1つ押すだけで音声認識が始まり、コミュニケーションを取ることができます。もちろん騒音下でも音声認識を可能にするノイズキャンセリングの機能も充実させています」

 

また、語学学習にも効いてくる要素として、「日本語でこういう表現を英語でなんと言えばいいのか」という場合にも、ボタン一つで瞬時に確認することもできる。

 

「日本語で〝覆水盆に返らず〟ということわざがありますが、これを英語でなんて言うんだっけというときに、音声で吹き込むだけで辞書のように使うことができます。語学学習の場面であれば、それを発音練習として活用することも可能です。本当に生きた英語といいますか、自分が実際に使いたい言葉の勉強ができるというのも、ポケトークの特徴になっているんです。また、発音練習機能も付いていて、その発音がネイティブに対してもきちんと通じるものなのか正誤判定をすることもできるようになっています」

 

そのほか、AI会話レッスンという機能もある。これは英語と中国語についていて、AI(ポケトーク)を会話の相手に据え、レストランや空港といったシチュエーション別に、会話のレッスンができるのだという。

そうしたことから、学校における語学学習として使われる場面も増えているというが、それには実は別の背景もある。仮にスマホなどを使用可能とした場合、学生がゲームやSNSなどで遊んでしまう可能性があるからだ。

 

「そこは通訳専用機としての強みが活きていると思います。実際、我々は小学校や中学校などの特定の学校とポケトークを活用した語学学習カリキュラムを組んでいます。授業の邪魔になるような余計な機能が付いていないからこそ、先生たちも安心して活用できるのではないでしょうか」

通訳機の導入によって「従業員満足度」と「パフォーマンス」を向上させる

2020年代に入り、ビジネスシーンで活用されることも増えてきた。背景にあるのは、労働人口の減少に伴う「人材不足」だ。人口減少社会に入って久しい日本は、「語学」というハードルがあることに加え、コロナ禍による人材の流出が起きた。国内の人材不足を補うため、技能実習制度を含めた外国人人材の受け入れが進んでいることも追い風要因だろう。実際、外国人スタッフが活躍している場面に接する頻度は日増しに高まっている。若山氏はこう話す。

「リアルとオンラインの双方における海外とのビジネス商談や、外国人観光客をおもてなしする現場での使用、さらには外国人人材との社内コミュニケーションなど、幅広く活用されている」

他方で、ポケトークが行った「ビジネスシーンにおける言語に関する意識調査」によると、企業の経営層では8割以上の人が「翻訳・通訳のコストが負担になっている」と答えたそうだ。

「そうした企業活動を通訳機や翻訳ツールで代替していくには、〝なんとか通じた〟というレベルではなく、当然ながら一定以上の精度が求められてきます。そのときに、(先に言及したような)ポケトークの強みが活きてくるというふうに考えています」

 

通訳機の導入によるメリットは、ただ単にコストが下げるだけではないと、若山氏は続ける。

 

「負担軽減による従業員満足度の向上もできます。どういうことかと言いますと、通訳や翻訳、あるいはそのアサインなどが本来の業務ではない従業員がたくさんいるんですよね。そうした方々は、本来やるべき自分の業務に集中することが可能になります。特に語学ができる従業員には、本来の業務ではないにもかかわらず、現場では〝翻訳作業をやらせる〟といったことが起きていました。そうした不公平感もともなう負担が、従業員のやる気を削いだり、パフォーマンスを下げてきたりした面があります」

 

とはいえ、ポケトークのようなAIを用いた最新型の通訳機や翻訳機にメリットを感じつつも、なかなか日本の企業の中には、二の足を踏むケースが少なくない。その要因の1つはセキュリティの問題である。

 

「法人利用が増えてくるにつれて新たに出てきた課題が『セキュリティ』です。企業活動を行ううえでは、どうしても機密性の高い情報が出てきます。ですので、そのやりとりがAIの機械学習などに使われてしまうのではないかという懸念を抱かれるケースが出てくるのは理解できます。そこでポケトークでは、通訳機としてはあまり例がない、アメリカのセキュリティ基準であるHIPAAと、ヨーロッパ(EU)のGDPRにも準拠しています。いずれにしても、弊社はグローバル展開をしていたこともあって、欧米における個人情報保護法の動きやニーズをキャッチできていたことから、早めに通訳データを残さないような仕組みを整えることができたという背景があります」

〝言葉の壁〟があるあらゆる場面で「ポケトーク」がソリューションになることを目指して

最後に、ポケトークの今後の展望について、若山氏は次のように話している。

 

「まず市場としては、日本から生まれたブランドですので、現在は日本の売上比率が最も高いのですが、欧米市場も年々成長しています。ですので、真のグローバル企業として、各マーケットとも同じように注力していき、アメリカ、ヨーロッパも含めて本当に全世界でポケトークが使われているという状態にしていきたいなというふうに思っています。

 

また、プロダクトの中身を見ていると、最初に販売を開始したハードウェア(デバイス)が最も売上比率が高くなっていますが、オンラインで使えるようなポケトークのソフトウェアやアプリなども市場としてはポテンシャルが大いにあると考えていますので、売上を伸ばしていきます。

 

最後に、ビジネスユースを筆頭にしたBtoBか旅行や語学学習といったことに代表されるBtoC市場かという二択もあります。優等生的な話になってしまって恐縮ですが、どちらも伸ばしていきたいですね」

 

大事なことは、どんな相手に使ってもらうかということではなく、〝言葉の壁〟で困っている状況になった際に、思いつくソリューションがポケトークであるようにしておくこと、と若山氏は締めくくる。そこまでいくのは平坦な道ではないかもしれない。しかし、日本発のサービスとしてポケトークがグローバルなポジションを獲得することに、大いに期待を寄せたい。

若山幹晴

Masaharu Wakayama

ポケトーク株式会社 取締役兼CMO

2013年に名古屋大学大学院工学研究科機械システム工学専攻修了後、P&Gに入社しブランドマネージャーに従事。2019年に株式会社ジーユーに転じ、最年少でマーケティング部長に就任。2021年にはマーケティング支援を行うワカパルを設立。その後、ポケトークのブランドオーナーを経て、2022年3月にポケトークに入社。

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