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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

使わなくなったパソコンはどこへ?再生パソコン事業の最前線と意外な雇用

生活やビジネスになくてはならないパソコン。一人が複数台持つのも決して珍しくなく、子供も学校や塾などであたりまえに使用する時代となった。ゲームなどで求められるスペックは日々高くなり、OSの乗り換えや故障といった要因で新しくパソコンを買い替える機会も多々あるだろう。そうやって古いパソコンは増えていき、破棄せざるをえなくなる。そういった電子機器、いわゆる「電子ごみ」が昨今の大きな課題となっている。

 

「電子ごみ」の言葉の定義は、バッテリーや電気・電子回路を搭載している電子機器が廃棄物となった時の総称だ。2020年に国連が発表した調査では、世界の電気電子機器廃棄物の発生量は5,360万トンに上っており、日本では256.9万トンが排出されているという。大量の電子ごみはどういう末路をたどるのか、そもそも自分が使い終わった電子機器がどこに運ばれてどう処理されているのか、あまりにも無知なことに気が付く。

 

そこで本記事では、使用済みパソコンの買取り・再生・販売事業を行うポンデテック株式会社代表の財津氏に、再生パソコンのリユースを中心に話を伺った。そこには意外な雇用との結びつきがあった。

テーマは「遊休資産には社会課題を解決する力がある」

ポンデテックは2019年、「企業が保有する遊休資産には社会課題を解決する⼒がある」をテーマにベンチャー企業として設立。

 

「遊休資産というのは、例えば空き地になっている遊休地を有効活用するakippaや、空いた車をシェアするUber、空き家を有効活用するAirbnbなどさまざまなものがありますが、企業が保有する遊休資産を有効活用できないかと考えたのが設立のスタートです」

 

設立当初はいくつかのサービスを立ち上げてはクローズを繰り返したと語るが、次に注目したのは企業が破棄する大量のパソコンだったという。経済産業省の平成16年の資料によると、廃棄されるパソコン全体の72%は事業系のパソコンであるという試算もある。

 

「まだ使える品としてリユースされているのは三分の一程度しかありません。それ以外は部品・資材の活用や、海外へ輸出されています。また、国内の電子ごみとなると、正規に回収・リサイクルされたのは22.2%。残りの77.8%は確認されていないのが現状です」

 

そういった問題に着目し、企業などから不要になったパソコンを回収、清掃やSSD換装、メモリ増設などを行い、再生済み品として生まれ変わらせるのが同サービスだ。このリファービッシュ品は同社の通販サイトPC nextで個人でも購入ができる。しかもこの業界では手厚い1年保証付きだ。

 

こういった再生パソコン事業は、家庭用パソコンを対象にした地域密着型や店舗型などもあるが、同サービスでは主に企業から仕入れているという。その台数は一度に何百台にも。企業は保守の観点などから同じ機種のパソコンを使うことが多いため、同一機種が大量に仕入れられるのだが、これに意外なメリットがあった。

障がい者雇用と仕事を作る難しさ

ポンデテックの再生パソコン事業が他社と大きく違うのは、障がい者雇用を取り入れたことにある。

 

2021年6月厚生労働省が発表した障がい者の職業紹介状況(「令和2年度障がい者職業紹介状況等」)によると、障がい者の新規求職申込件数は対前年度比5.1%減となり、21年ぶりに減少したという。就職件数も対前年度比12.9%減と、こちらも12年ぶりに減少。障がい者の解雇者数は、2,191 人にも上っている。業種で見ると「製造業」「宿泊業,飲食サービス業」「卸売業,小売業」といった求人数が減少している。同社ではそういった障がいを持った方のため、作業を工夫し、雇用促進につなげているのだ。

 

「障がい者雇用において一番の課題は仕事を作る難しさと言われています」

 

再生パソコンの作業としては、ふたを開け、掃除、SSDの換装といった作業などがあるが、数百台もの同じパソコンが一度に入荷されるところがここに効いてくる。別々の機種のパソコンではそれぞれに応じた作業になり複雑化してしまうが、同じ機種なら作業もルーチン化できる。障がいを持った方でも、決まった作業なら誰でもできるようになるのだ。

 

これにより、株式会社かんでんエルハート、ヤマハモーターMIRAI株式会社などと提携。障がい者の方の新たな活躍の場として創出されている。

企業にとって避けられないSDGs

企業にとって避けられない取り組みとなったSDGs。12番目の目標「つくる責任 つかう責任」は、食品廃棄などの食品ロスが例として挙げられることが多いが、電子ごみの課題も含まれる。会社内で使用したパソコンを破棄せず、再生パソコンへ協力することは、これらの十分な目標達成になりうる。

 

「企業でのパソコン管理はおもにIT部門が担うことが多いと思いますが、業務はパソコンの管理だけではありません。IT部門としてもなるべく破棄の手間を減らしたいとおもいますし、その処理も代行しています。企業に応じた要望にも柔軟に対応もしています」

 

IT部門といえばさまざまなトラブルの解決に追われるものだし、在宅勤務が増加したことでさらに負荷が増したという話題も聞く。業務の一つである使用済みパソコンの廃棄に手を煩わせるわけにはいかない。一括で廃棄処理ができる同サービスのようなものはありがたいに違いない。気になる情報セキュリティも万全だ。

 

「データ消去についてはかなりのコストをかけて取り組んでいます。重要機密情報を扱うパソコンのデータ消去実績もある企業と提携しています」

2030年に向けて

在宅勤務ムードは比較的落ち着いてきた昨今だが、オンライン推進の勢いは止まっていない。仕事以外でもVR、eスポーツ、教育などさまざまなシーンでの利用が見込まれる。しかしそのたびにパソコンを新調するのは経済的な負担だ。

 

「子供の教育のためにパソコンを買うとしても二十万円前後の新品は高価です。再生パソコンなら数万円程度で購入できるのも特徴です」

 

実際、出荷される3割~4割程度は、プログラミング教室などで使用されるパソコンとして使われているという。

 

世界の電子ごみは2030年までに7,400万トンに倍増するとも予測されており、利用者としても決して看過できない状態になっている。今後も一人複数端末の時代が続けば破棄も増えることだろう。2030年にどういった未来になるのかを聞いた。

 

「現代は『新品』と『中古』といういびつで両極端な価値観になっていると考えています。少しでも触ったら中古として扱われ、価値が下がる。本当はもっと滑らかにあるべきだと思います。また、中古も価格ばかりが勝負だと差別化もされにくい。まだまだ認知されていない『再生』というジャンルが、もっと一般的になることを願っています」

 

同社ではパソコンだけではなく、タブレットやスマホの再生も手掛けている。その市場規模はパソコンの半数にせまるほどになっているという。2022年には関西電力が同社の全株を取得し、さらなる事業拡大も図っている。

 

ポンデテックはフランス語で「技術の架け橋」という意味だそうだ。企業、人、そして環境を繋ぐ架け橋になっていく再生事業に、今後も目を離せそうにない。

ポンデテック事業 社会的意義

財津 和也

Kazuya Zaitsu

株式会社ポンデテック 代表取締役

2011年、ITエンジニアとして関西電力株式会社入社。DX推進のジョイントベンチャー立ち上げなどに従事。業務外ではイノベーション活動団体 k-hack を立ち上げ、同団体発でTRAPOL合同会社、ゲキダンイイノ合同会社が事業会社化。2社の0→1での事業化に従事。2022年に株式会社ポンデテックの取締役副社長 CTO、2023年より同社代表取締役。

  • 公式Facebookページ

編集:ENILNO編集部

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