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自治体導入支援も行う、生成AIコンサルティング企業が語った「AIの課題と希望」

企業そして自治体における生成AI導入について、いち早くコンサルティング業務を開始したPwCコンサルティング合同会社。企業、そして自治体へ導入支援を行っているなか、見えてきた課題とは。さらに企業に求められるものと自治体に求められるものの差異とは。日々導入支援に向き合うPwCコンサルティングの精鋭4人に語ってもらった。

生成AIには肯定的だが、ユースケースの創出が急務

ここ1年で「生成AI」という言葉を聞く機会が急激に増えた――ビジネスパーソン、しかもデジタル関連業務に従事する人の多くが、そんな感覚を持っているのではないか。さらには生成AIをビジネスにどう結び付けるか、現場にどう導入していくか、直近で思案・企画・実行している人もいるだろう。

 

そんな生成AI導入について、いち早く2023年4月からコンサルティングサービスを提供しているのがPwCJapanグループ。日々進展する生成AIに関連する動向を的確に捉え、クライアント企業のニーズに合った支援を包括的に提供している。

 

そもそも日本国内の企業は、生成AIに対してどのような捉え方をしているのであろうか。PwCコンサルティング合同会社は2023年5月、「生成AIに関する実態調査2023」を公開。同調査は副題に「加速する生成AIブームとビジネスシーンの実情:ユースケース創出が急務」とつけられている。それによれば、過半数にのぼる54%が生成AIをまだ認知していない一方で、認知層は生成AI活用に対してかなり肯定的である。ただ実際の取り組みはこれからで、さらなるユースケースの創出が望まれるとした。

出所:PwCコンサルティング「生成AIに関する実態調査2023」
出所:PwCコンサルティング「生成AIに関する実態調査2023」

たった半年で問い合わせの量も質も変化した

ただしこの調査が公開されたのは、半年前のこと。急激なスピード感を持って広まりを見せる今、調査後の半年間でも生成AIの認知度は向上している。PwCコンサルティング合同会社テクノロジー&デジタルコンサルティング事業部Analytics Insightsディレクターである江原圭司氏は言う。

 

「生成AIに対する問い合わせは増加しています。さらにその問い合わせの質も変化しているのを感じます。初期は新しい技術ゆえに、理解を深めたいというニーズが主でした。しかし、徐々に具体的な活用方法や技術的な仕組みに関する質問が増えてきています。例えば対話型生成AIを導入するにはどのようなITの仕組みが必要なのかなど、より自分のビジネスと結びつけた具体的な内容が増加しています」

 

江原氏は、生成AIのユースケースとして、会議における議事録の自動生成や営業メールの自動作成を挙げている。さらには「企業内で特定の人がナレッジを持っている状態、いわゆる暗黙知が見られます。その人がいないと商品開発ができないといった『業務の属人化』は多くの企業で課題です。こうした課題に対し、生成AIを活用して暗黙知を形式化し、ナレッジの共有を実現化できないかというニーズもあります」

 

シニアマネージャーの木村俊介氏も変化を肌で感じている。「当初、生成AIを活用する場面は、例えば文章を作成するなどサポート業務が中心だと考えられてきました。それが最近は自分の業務を生成AIにやらせてみようという動き、業務そのものも生成AIにまかせられないかと考える方が増えています」

 

さらに今後は、単に「生成AIを導入して業務の効率化をはかる」という、いわば“点”での活用だけでなく、複数のテクノロジーを繋ぎ合わせてDXを推進する動きが加速していくという。例えばRPA(ソフトウェアロボットによる業務自動化)、レコメンドエンジンなどとつなぎ合わせ、より大きなスケールでDXを推進していくという活動だ。

なくなる仕事がある一方で、新たに生まれる仕事も

一方で生成AIという新たな技術に対し、「従来の人間の仕事を奪うのでは」という懸念は少なからず存在する。そうした懸念に対し、同社では生成AIはどんなものかを知り、リスキリングすることで解決できると考えている。

 

「テクノロジーの進化により、なくなる仕事がある一方で、新しい職種のニーズも生まれます。生成AIで言うと、AIが高品質なコンテンツを生み出せるように指示を出す『プロンプトエンジニア』という新しい仕事が生まれました」(木村氏)

 

だからこそPwCコンサルティングでは、各企業の生成AI導入に関して、「土台作り」も重視する。セミナーや研修を通し、実務における導入案やその効果に言及。こうした啓蒙活動を通し、クライアント社内に生成AI導入の中核になるメンバーを確立することも、重要な業務のひとつだという。

 

さらに実際の業務への導入支援に入ると、意外な発見もあるという。「生成AIを使う場面がどのぐらいあるかと検討する段階になると、社内のテクノロジーにおける課題が浮き彫りになってきます。もともとの仕事の棚卸をするようなイメージで、それによって気づくことの価値は少なくありません」(江原氏)

 

一方で生成AIにはリスクがあることを伝えることもコンサルティング業務のひとつだ。「例えば生成AIでロゴ画像を作ろうとすると、後で他の人が作ったものとそっくりだったりすることがある。生成AIにはこうした権利の問題なども存在します」(江原氏)

 

今後目指すところは、単なる業務の効率化だけではなく、新たなアイデアの創出だと井原氏は語る。「生成AIと対話していくなかで、例えば新しいサービスや新規事業を生み出すところまで生成AIを活用していければと思っています」(江原氏)

自治体向けのガイドブックを無償提供、2040年問題も見据える

PwCコンサルティングはこうした生成AI導入支援を、民間企業のみならず自治体向けにも行っている。もともと同社は自治体DX支援事業も行っており、自治体とのコネクションは深い。2023年9月には「自治体における生成AI導入に向けたガイドブック」を作成、無償で提供を始めた。作成に当たっては日本マイクロソフト株式会社の協力を得ながら、全国計13の自治体と意見交換を行い、それを反映したものになっている。

出所:PwCコンサルティング

「自治体の方々にヒアリングしたところ、まずは生成AIをどのように自治体業務の中で使えるのかという質問が多かったです。一方でセキュリティーが気になるという声もありました。どの自治体も共通してユースケースを知りたいという要望があり、ガイドブックにはこうした知見と最新の事例を集約しました」。そう語るのは、同社の公共事業部ディレクターである谷井宏尚氏だ。

 

ガイドブックには「地域の変革に向けた自治体DX」、「生成AIとは 注目される理由とその将来性」、「自治体での生成AI活用に向けて」、「各国AI法規制・ガイドラインの動向」、「別添 自治体における生成AI活用ユースケース集」というコンテンツが並ぶ。

 

すでに自治体が生成AIを導入する動きは広まっており、実際のユースケースとしてプレスリリースやSNSの文章作成など広報活動に導入されている。そもそも自治体の業務は、膨大な公文書を扱う。それも住民からの問い合わせや申請書の処理、住民への情報発信など、言語を扱う業務が中心だ。その点、自然言語の解析と生成が得意な生成AIを導入することで、自治体職員の業務を効率化できる余地は大きい。

 

「さらに、いわゆる2040年問題もあります。今後高齢者が増えると同時に、自治体職員は減り、業務はさらに増えると予想されていることから、業務の効率化はどの自治体も喫緊の課題です。その危機感は一般企業より大きいかもしれません」(谷井氏)

 

すでに導入している自治体は政令指定都市が多いが、都市の規模に関わらず、生成AIを導入するベネフィットは小さくない。「自治体は違っても、その業務は共通するところが少なくありません。その点、活用事例があると、うまく横展開できるため、自治体における生成AI導入は一気に進む可能性を秘めています」(谷井氏)

自治体ならではの課題と、目指す未来

一方で自治体ならではの課題も認識しているという。「自治体の職員の方々は非常に真面目な方が多く、真摯に業務に取り組んでいます。生成AIは業務の効率化などに有効ですが、絶対的ではありません。生成AIが生み出すものをすべて真面目に受け止めてしまわず、『本当に正しいのか』と考えるリテラシーも自治体職員の方に求められています」(谷井氏)

 

公共事業部マネージャーである中砂彰範氏も自治体の特異性を指摘する。「自治体の方々が扱う情報には、住民の方の生活や生命とダイレクトにつながるものがあります。それらの扱い方を間違うと危険なことになりかねないので、そこは非常に気を付けながら向き合っています」

 

そんな中、自治体職員の意識にも変化があると中砂氏は語る。「生成AIは自分の業務に関係ないと思っていた方も、いざ知識を得てみると、業務にも活用できそうだと気づくシーンがあります。生成AIはまず触って、使ってみることでわかることは少なくありません」

 

いま生成AIに対し求められるのは、自治体でも民間企業でも必要以上に恐れずに、使って便利さを実感し、学びを深めること。そして正しく理解することだと、PwCコンサルティングの4人は強調する。

 

先の江原氏は今後を見据えて言う。「誰もが気軽に生成AIに触れることで、例えばインターネット黎明期のように、一気に広まる可能性があると感じています。目指すところは『生成AIの民主化』、巨大な文化を創出できればと考えています」

江原圭司

Keiji Ehara

PwCコンサルティング合同会社
テクノロジー&デジタルコンサルティング事業部 Analytics Insights ディレクター

メガバンクにて金融工学の専門家(クオンツ)、IT企業とコンサルティングファームにてデータサイエンティストとして様々なプロジェクトに従事し現職。主に金融業界を中心に、AI、アナリティクスを活用したコンサルティング業務に従事。

木村俊介

Shunsuke Kimura

PwCコンサルティング合同会社
テクノロジー&デジタルコンサルティング事業部 Analytics Insights シニアマネージャー

外資系システム会社、外資系統計解析ベンダーを経て現職。アナリティクスを活用した業務改善、顧客分析などに従事。最近では、生成AIなどの先進的なAI技術のビジネスへの適用を中心に手掛ける。

谷井宏尚

Hirotaka Tanii

PwCコンサルティング合同会社
公共事業部ディレクター

総合コンサルティングファーム、監査法人系コンサルティングファームを経て現職。公共、金融、製造等のクライアントにおけるITコンサルティング業務に長年従事。行政や公共機関へのデジタル戦略・計画策定やAI人材の育成・体制構築、DX推進支援を得意とする。

中砂彰範

Akinori Nakasuna

PwCコンサルティング合同会社
公共事業部マネージャー 

外資系コンサルティングファーム、監査法人系コンサルティングファームを経て現職。サステナビリティ領域のソリューション開発およびサプライチェーンの脱炭素支援や自治体での生成AI活用検討支援など自治体向けのコンサルティングを担当。

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