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小中学生の探究心はどう養う?「リサーチ力」「分析力」「プレゼン力」伸ばすオンライン教材

2022年11月1日から11日にかけて開催された、日本唯一のオンライン教育・eラーニング総合フォーラムのレポートをお届けする連載企画。今回は小中学生向けのSTEAM教育がテーマ。教育現場でもカリキュラムが開始されているが、子どもたちの学習範囲が広がれば広がるほど、教師や家庭でのフォローが難しくなるという課題に、どんなソリューションが求められているのか。

 

小中学校向けの探究・STEAM学習サイトとして注目を集める「なるほど!エージェント」は、リサーチ力・分析力・プレゼン力を育成する教材。同サービスの開発ストーリーやこれからの時代に求められる学習法について、株式会社REKIDS 代表取締役・行正り香氏が「オンラインラーニングフォーラム」で語った。

日本と海外の探究学習のギャップとコンテンツの強み

「なるほどエージェント」は、学校または家庭での活用を想定して開発された探究・STEAM学習教材サイト。

探究・STEAM教育学習教材を開発した背景には、行正氏が感じていた日本と海外における教育法のギャップがあった。

 

行正氏は高校3年時にアメリカへ留学後、理系・文系を横断的に学習するSTEAM教育、Inquiry Based Learning(探究学習)に出会い衝撃を受けた。授業の主役は生徒であり、生徒は先生や他の生徒との対話を通して学びを深めていくものだったからだ。

 

「生徒は予習をして知識がある前提で授業に臨み、先生は生徒に質問をバンバン投げかけ、対話で考えを深めていく。情報リサーチ、プレゼンの土台となるパブリックスピーキングが求められ、自分の考えをまとめる力が身に付きました」(行正氏)

 

アメリカで5年の学びを積み重ねた後、広告代理店勤務や本の出版を経た行正氏。出産を経験し2人の娘の育児をしていく中で、自身の娘に主体的な学びの体験をさせるべく、「なるほど!エージェント」の企画を立ち上げた。

 

「日本の探究学習は『Project Based Learning』を意味することが多いようです。探究学習では自分で問いを立てることが重要視されていますが、土台ができていない子どもが自ら問いを立てるのはとても難しいことです」(行正氏)

海外での学習経験がある行正氏は、子どもが主体的に探究学習を進めるためにサポートの必要性を感じるように。特に、リサーチ力・分析力・プレゼン力は必須の能力だと考えていた。

 

「(アメリカで)先生のコーチングを受けて徐々に身に付けた力は、探究学習で最初から求められる“問いを立てる力”ではなく、まずはその土台となる、リサーチ力、分析力、そしてプレゼン力でした。これらの土台があって始めて、課題を自分で見つけ出し、自分で問いを立て、問題解決までのアイデアをプレゼンできるという、プロジェクト形式の学びができるようになります」(行正氏)

 

こうした着眼点から始まった「なるほど!エージェント」では、探究学習のために必要な土台作り、クリティカル・シンキングのサポートを重視している。

主体的・対話的な学びを実現する「なるほど!エージェント」

「なるほど!エージェント」の学習教科は全8科目。「理科」「社会」「国語」「算数」「英語」の一般的な教科のほか、「プログラミング」「SDGs」「健康&アート」が用意されている。どの教科においても、子どもの主体的かつ対話的な学びを狙いとして教材が構成されているのが特徴だ。教科ごとに設けられたトピックは、合計200種類以上に上る。

「子どもたちが科学や技術、算数、アートなどに好奇心を持ってくれるようにと祈りつつ、様々な分野の教育者、デザイナー、アニメーターの力をお借りして、STEAM教育分野をカバーする『なるほど!エージェント』を立ち上げました」(行正氏)

 

小中学校で活用する場合、学校のICT端末を使用することが想定されている。教師は探究学習やSTEAM教育のために特別な教材を用意する必要はなく、「なるほど!エージェント」の画面上のボタンをクリックするだけで学習を開始することができる。教材は、①情報をインプットする→②問いを立てる→③リサーチする→④分析する→⑤プレゼンする→⑥リフレクションするというステップで学習を進める。

 

教材には主に3つの特長がある。一つ目はキャラクターやアニメを活用して情報をエンターテインメント化したこと。子どもたちが楽しみながら、社会課題について学習できるよう工夫されている。二つ目の特長は、問い、ワークシート、評価ツールを一体化させた教材であること。国際バカロレアやインターナショナルスクールでも使用されているワークシートを用い、学習の密度を高めた。三つ目の特長は、開発に子どもたちが参加していることだ。

 

教材を活用した学習では、インプットとアウトプットの繰り返しによる探究的な学びが可能。インプットのステップでは、動画やイラストを見ながら幅広い情報を吸収できる。

「(インプット学習教材作成で目指したのは)情報を過多に伝えるというよりは、知りたくなる内容にすること。子どもの好奇心の扉を開くための短い動画を用意しています。一本の動画は3~5分と非常に短いのですが、動画の再生を止めながら、子どもに質問を投げかけてみてください。子どもに考えさせるきっかけになります」(行正氏)

 

アウトプットのステップにおいては、子どもが自ら問いを設定することの難しさに着目。そこで探究学習を自ら進める力が身に付く、4種類のワークシートを用意した。ワークシートの狙いは、主体的で対話的な学びを促進すること。アメリカの教育学者Donna Ogle氏が考案した「KWLシート」では、インプットした情報の振り返りや整理整頓をし、問いを立てる土台を作る。

「自ら問いを立てるのはとても難しいので、『こんなことも調べてみよう』というセクションを設け、問いのヒントとなる事例も用意しています。先生も生徒も少しずつ問いに慣れていくことが大事です」(行正氏)

はじまり(序論)・本題(本論)・おわり(結論)の3段構成を持つ「スピーチシート」では、プレゼン力をブラッシュアップ。

「ポスターシート」では、イラストや図を使って情報をまとめるデザイン力や情報の引き算を習得させる。

さらに「視覚分析シート」を使い、情報の分解やビジュアルの分析について学習する。

「『なるほど!エージェント』は総合的な学習やSDGs、キャリア教育としても活用できます。子どもは好奇心いっぱいなのに飽きっぽく、面倒くさがりなのに驚くような成長を遂げる存在。子どもたちが理系・文系を横断し、主体的に学べるようになれば、過去に学んだ知識や技術が時代を超えても、変化に合わせて正しい知識や技能に順応することができると思います」(行正氏)

 

「なるほど!エージェント」は無料で利用できるため、学校での授業利用や家庭での自宅学習など幅広く活用可能だ。学習では様々なトピックの教材が用意されているが、SDGsと環境教育に関するコンテンツは、現場で働く先生からの声を参考に追加されたコンテンツ。今後は学校の先生のニーズをさらにヒアリングし、さらなるコンテンツの充実を目指していく展望だという。

行正 り香

Rika Yukimasa

株式会社REKIDS 代表取締役

福岡出身。高校在学時にアメリカへ留学。カリフォルニア大学バークレー校政治学部を卒業後、株式会社電通に入社しCMプロデューサーとして活躍。出産後にデジタル教育コンテンツの作成に携わる。2007年の退社後、キッズ向けポータルサイト『なるほど!エージェント』の開発を開始。料理研究家としても活動している。

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