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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

教師や保育士、親の「集金業務」負担を軽減! ペーパーレス化を叶えるSaaS「エンペイ」

キャッシュレス決済が飛躍的に普及した昨今だが、業界によってはまだまだ導入が進んでいないところもある。教育業界がそのひとつだ。

 

例えば保育園。延長保育料、おやつ代、おむつ代など、日々発生する様々な支払いは、現金を封筒に入れ、保護者が保育士に手渡すという昔ながらのスタイルのところが多い。払う側は現金の準備、受け取る側は現金の管理、請求・受領に伴う事務処理といった負担が生じる。

 

教師や保育士の業務負担の大きさが叫ばれる中、集金・支払いに関する課題を解決するためリリースされたのが、集金業務のキャッシュレス、ペーパーレス化を叶えるSaaS「enpay(エンペイ)」だ。

 

教育施設側、保護者側、双方の貴重なリソースを煩雑な手続きから少しでも解放することで、最終的に子どもたちが得られる恩恵を増やしたいというビジョンを掲げる、株式会社エンペイの代表・森脇潤一氏にお話を伺った。

あって当然、便利で当たり前の集金・支払いインフラに

生徒指導、補習に部活、それにあらゆる事務業務。教師や保育士の業務負担があまりに大きく、教育という本分に集中できない環境が問題になっている。煩雑な事務のひとつに集金業務が挙げられる。

             

「教材費や修学旅行費などを現金で回収しており、全校分の集金を担任21名と事務職員で担当していました」。こう話すのは、埼玉県川口市立前川小学校の近藤百合校長と小沢篤事務主査だ。

 

具体的には同校は「教員や事務職員が新学期に集金袋を作成して、その集金袋を集金の度に配付、回収して確認していた」という。

 

この煩雑さを目の当たりにし、解決に乗り出したのが森脇氏だ。「負担を軽減するためにはさまざまな課題があると思いますが、僕らのサービスで、集金という部分に関しては一翼を担いたいし担えると思うんです」(森脇氏)。

エンペイを使うと、保育園などの教育機関は、請求処理をブラウザ上で簡単に行うことができる。保護者には請求連絡がLINEで自動的に送られるので、保護者はその場でクレジットカードやpaypayなどのキャッシュレス決済かコンビニ払いなどの支払い方法を選択、キャッシュレスなら支払いまで完了できる。そのシンプルさと業務負担を軽減する効果の高さが評価され、エンペイは保育園を中心に広がっている。2022年春からは前述の前川小学校に導入。初めての公立小学校の導入事例となった。

 

前川小学校からは「集めた現金を銀行に預けに行く必要もなくなりました。銀行へは毎日ないし2日に1回は足を運んでいたので、業務効率が劇的に改善されました」と喜びの声が寄せられた。

 

教育関連以外にも、例えば医療福祉分野など事務作業が煩雑で、本来の業務に割くリソースが逼迫している業界は多い。

 

「教育以外の業界などからもお困りの声をいただくことが多いので、案を考えているところです。僕ら単独でやるより、いろんな企業や行政と連携しながらより良い状態を作っていきたいですね。行政の方も腰が重いなどと言われがちですが、やっていきたいという思いは当然皆さんお持ちだと思うんです」(森脇氏)。

埼玉県川口市立前川小学校

 

しかし森脇氏はこうした教育施設や保護者からの評価を喜ぶ一方で、反応がないこともまた嬉しいのだという。

 

「例えば、電気やガス、通信サービスに対して、普段にありがたいとわざわざ思わないですよね。なんとはなしに使っているけれど、実はすごく価値がある。でも当たり前だから誰も評価しない。インフラってそういうもの。ただし不具合があった時は一気にSNSに不満が書かれます。エンペイはto Cのサービスでもありながら不満の声がないので、すでに当たり前のインフラとして不満なく使ってくださっているのかな、と感じているんです」(森脇氏)。

家庭や学校に左右される子どもの将来への問題意識

子どもの頃から森脇氏には、家庭や学校といった環境に子どもの未来が左右されることに対する疑問と問題意識があった。子どもではどうすることもできない「家庭の差、貧富の差、教育機会の差」を目の当たりにすることが多く「全ての子どもたちは平等に人生を歩む権利があり、チャレンジできる環境を社会で担保しないといけない」と考えるように。

 

大学卒業後、いくつかの企業を経て「教育の機会格差を無くす」というミッションに共感しリクルートに入社。同社で森脇氏は保育園の連絡帳アプリや登降園管理、帳簿管理機能をもつサービス「キッズリー」を立ち上げ、保育園関係者や保護者のニーズを聞く機会に恵まれた。さらに自身にも子どもが生まれ、保育園に通う親の当事者に。

 

保育園における集金業務の煩雑さを目の当たりにした森脇氏は、リクルートを退職して起業し、当該業務のDX化/キャッシュレス化を通して課題解決に当たろうと決意して現在に至る。

 

まずは、現在のサービスを教育業界のスタンダードにしていくことを目指して突き進んでいる森脇氏だが、その先にはさらなるビジョンがある。

 

「例えば、奨学金を受けられないとか、塾に行くことができないとか、経済的な理由から進学を諦めなくてはならない人がいますよね。進学以外の分岐点でも、経済な制約条件によって未来が閉ざされている人も多い。ゆくゆくはそういう方々に、金融のアプローチから機会提供したいと考えています。直接金融の領域ですね」(森脇氏)。子どもの時からの問題意識に対するソリューションを自身の手で提供しようとしているのだ。

できないことはない。思い悩まずやるべきことをやる

ビジョンに対し、淡々と歩みを進める森脇氏。キャッシュレスが浸透していない業界にそれを広める過程は、ゼロを1にするようなもの。困難も多いのではないだろうか。

 

「やると決めたし、それに社会にとって必要だと思うのでやっているだけで、頑張っているという意識はないんです。苦手なことでも合理的な進め方を見出すのが楽しい性分なのかもしれません。だって人間にできないことってないですよね?」(森脇氏)。

 

すべてを「できる」前提で捉え、課題にぶつかっても思い悩まず「どうすればクリアできるか」と建設的に考え、実行する。失敗はない。うまくいかなかったら別の手を考えるだけ。氏の考え方は言葉にするととてもシンプルだ。でももちろん、誰もが実行できるかといえばそうではなく、氏の意志力や行動力は並外れていると言えるだろう。

 

2018年に創業し、これまで着々と成長してきたエンペイ。従業員は現在、35人を超える。ここまでは、前職の経験もあり、そこまで大きな課題にぶつかったことはないと森脇氏。ただし、今後の道のりは平板ではないと予想する。「既存の金融機関と高いサービスレベルで連携して、マーケットを拡大したり、これまでにない規模の資金調達もしないといけない。海外進出もしたい。ここからが本当の勝負なんだと思います」(森脇氏)。

 

教師や学校関係者の業務負担が軽減され、保護者の負担が軽減され、最終的には子どもや経済的事由で不利益を被る人が受益者となり、恩恵を受ける。その大きなビジョンに対し、舞台となる業界や国が変わったとしても、やるべきことをシンプルに、淡々とやり続けて道を拓いていく未来の森脇氏の姿が見えるようだ。

森脇 潤一

Jun-ichi Moriwaki

株式会社エンペイ 代表取締役CEO / Founder

岡山県岡山市出身。メディックス、博報堂DYを経てリクルート入社。AdTech、SaaS、FinTech等、一貫して新規事業開発を担当。その後、社内新規事業提案制度(NewRING)でグランプリを獲得し、子育て支援SaaS「キッズリー」の責任者として事業成長を牽引しEXIT。2018年11月に株式会社エンペイを創業。プライベートでは双子含め三児の父。経済産業省「グローバル起業家等育成プログラム 2016」シリコンバレー派遣メンバー/社会福祉法人どろんこ会理事。

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取材:小野好美

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