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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

日本全国に故郷をもてる幸せ。シェアリング活用で幸せの選択肢を広げる

ここ数年でシェアリングビジネスが急発展を遂げている。「自分のモノ」が価値とする所有欲が時代とともに薄れつつあること、見ず知らずの他人と一定のルールを守りモノを共有することの成功事例が浸透してきたこと、金銭的・時間的に無駄なくスペースを利活用できること、つくらない・捨てないというサステナブルであること、新しい体験により幸せを享受できること……と、その利点を上げればキリがない。

 

そんな「シェアリングエコノミー」業界における各サービスの普及と業界の健全な発展を目的とし、市場の活性化に邁進してきたのが「シェアリングエコノミー協会」。ここ数年で急成長を遂げているシェアリング業界の今とその未来は? シェアリングエコノミー協会九州副支部長の髙田理世氏に、話を聞いた。

シェアリングの先にある「人の幸せ」

個人が有する資産を活用するCtoC、企業が有する資産を活用するBtoBやBtoC、公共資産を活用するGtoC。シェアリングエコノミーには、いろいろなビジネスチャンスが転がっている。日本経済におけるシェアリングエコノミーの概念を牽引する「シェアリングエコノミー協会」は、2016年に発足以来、時代の流れに合わせてシェアリングの概念を浸透させるべく、市場や法の整備を進めている。

 

「『シェアリングエコノミー』という概念がこれからの日本の未来に必要不可欠だと私たちは考え、行動しています」(髙田氏、以下同)

 

シェアリングエコノミー業界の国内の市場規模は、2022年度は2兆6,158億円。2032年度にはその約6倍である15兆1,165億円と予測されている(シェアリングエコノミー協会公式サイトより)。どんどんそのニーズが高まっているという裏付けがある中、さらにその広がりをわかりやすく図式化したものが「シェアリングエコノミー領域map」。サービスの領域を「モノ」「移動」「空間」「お金」「スキル」の5つに分類しているものだ。こんなものもシェアできるのかというサービスも。

さらに認証制度も設けている。内閣官房IT総合戦略室(元デジタル庁)がモデルガイドラインとして策定した「遵守すべき事項」を基に、同協会が設定した自主ルールに適合しているサービスには「シェアリングエコノミー認証マーク」を付与。これをもって信頼できるオフィシャルなサービスとしてアピールができるというわけだ。

「『エコノミー』と謳うくらいですから、お金を生み出して経済を回すビジネスモデルの企業となりますが、それ以上にエンドユーザーのモチベーションに『サービスを利用すると幸せになれる』ということがあるサービスばかり。民泊やシェアハウスを例にとってもわかるように、金銭的な点だけでなく、シェアすることによる楽しさがそこにはあります。結局はそういった『人の幸せ』に繋がることが、サービス利用の動機の一つになるのだと思います」

 

他にも、なかなか出会えないような人と手軽に繋がることができたり、叶えられなかったことを体験できたり。サービスを使うことによる幸せの享受そのものがシェアリングの価値であり、だからこそ、ビジネスとしても成功し得るのだ。

都市住民と地方を繋ぐ「架け橋」に

シェアリングエコノミー協会が今特に力を入れている領域が、髙田さんの担当でもある地域課題の解決だ。「東京一局集中」により各課題が挙げられる中、これをすべて公共サービスで解決するにはリソースが足りないと言われる時代。

 

「それぞれが持つ地域課題の解決に対して、全国の自治体とシェアリングエコノミーの考え方をどのように活用していくかを、ともに学び協議する場を設けています。場所や物の共有はもちろん、各地で減り続ける人材を補う手段としてもシェアリングの考え方は注目されています。とはいえ地域においては『本当に東京の若い人が地域の仕事に興味を持ってくれるの?』『知らない人同士で寝食を共にするなんて嫌じゃない?』といった声も少なくないのが現状。だからこそ成功事例を増やし、『これまで訪れたことのないような人が訪れるようになった』というイメージや興味を持ってもらえるような拠点づくりを増やすことが大切だと思っています」

具体的なサービスとして髙田さんも利用している「ADDress(アドレス)」は、初期費用なしで初月4,800円(2泊滞在分、初回のみ)から始められる、住まいのサブスクサービス。全国に数百か所ある生活拠点を手軽に利用することができる。マッチングをスムーズに行うべく、会員と地域の橋渡し役である「家守(やもり)」のサポートがある点が特徴だ。

「地域に根ざした『家守』さんがいることで、宿の管理がきちんとされているという安心感のもと、初めての場所でも溶け込むことができます。オンラインを活用して働くことが当たり前になった今、海外も含めて自分の拠点を各地にもつアドレスホッパー、デジタルノマドといった生き方をする人が増えています。『ADDress』を利用することで『暮らすように滞在』しながらいろいろな地域をまわり、特に居心地がよいと感じる地域に移住するという方も増えています」

その他、九州支部の会員には棚田をシェアリングして所有するサービスもある。都心で働く人々にとってはなかなか叶え難かった「自給自足」に手軽に関わることができ、得られる心理的幸福も大きい。

 

「さまざまなシェアリングの事例を通じて、ユーザーの幸せの選択肢が増えていくのはとても良いこと。シェアリングの魅力を伝え続けることで、課題先進国である日本に少しずつでも明るい光を差し込んでいけたらと思っています」

 

DXとの関わりも深い。デジタル庁が推奨する、デジタルによる地域活性化を進めるプロジェクト「デジタル田園都市国家構想」においてもシェアリングエコノミーの考え方は大きく取り入れられている。都市から地方への流入が増えることは、地方住民のデジタルリテラシーの引き上げの必要を促し、結果DXを推進することに繋がる。

「暮らす」と「働く」が同居する未来

シェアリングエコノミー協会が発足したのが7年前の2016年。各業界の指標として注目されている2030年が7年先。髙田さんが考える2030年を語る上で、まずは2016年を振り返ってもらった。

 

「1人1台スマートフォンを所有するのが当たり前になり、これまでは繋がれなかったような人と繋がることができるようになってきた時代でした。ニーズ同士をピンポイントでマッチングできる機会が増え始め、AirbnbやUber Eatsが日本に入ってきたのもこの頃でした」

 

その後のコロナ禍の到来が、オンラインでのコミュニケーションを私たちにとって当たり前のものにした。同じ7年を経た2030年の世界を、髙田氏はどのように描いているのだろうか。

 

                                                                                
「より多様化し、より分散する世の中になると考えています。特に、オンラインで働いたり学んだりすることができるようになったことで、移動に対するハードルは従来と比べるとかなり低くなっています。子育てをしながら複数の組織に属して働くことも、東京の企業で働きながら世界中を旅することも、二拠点生活をしながら農業に挑戦することもできる時代になっています。今後ますます『暮らす』と『働く』の境界線が薄れていく中で、生き方や在り方といったより普遍的な捉え方、そして、自分自身の心の声に耳を傾けた、より自然な選択をする人が、ますます増えていくのではないかと考えています」

 

そのためにはデジタルの普及が欠かせず、オンラインは物理的な距離を縮める重要な役割を担っていくことは間違いない。

 

「とはいえ、まだまだデジタル化という言葉だけが一人歩きしてしまっているとも感じています。全国各地の自治体や事業者とやりとりをする中で『DXを進めると効率化するということはわかるのですが、私たちの仕事はなくなってしまうのでしょうか』といったご質問をいただくことがあります。そのような場合には、AIやIoTなどのデジタルに仕事を『奪われる』のではなく、『力を借りる』ことによって、そこで捻出された人材や時間を地域住民や地域課題と向き合う時間にあてていく。そのためにDXが求められているということを伝えるようにしています。このように、デジタルに対する警戒心を取り除くことも、一人ひとりが生き生きと働き暮らす地域づくりという、DXの先にある社会における豊かさを実現する「シェアリングエコノミー」を伝える、私たちのミッションだと思っています」    

    

          

「例え定住しなくても、そこに行けば帰ることのできる第二の家がある。そこに行けば、心の置けない友人がいる。そこに行けば、心洗われる自然がある。そんなふうに、一人ひとりが各地域に独自の「意味」を持っていく未来を描いています。各地域の自然の恵みや人々との温かい繋がりをより多くの人が享受するとともに、それらが未来に続いていくために一人ひとりがアクションをする、そんな状態をつくっていきたいです」

 

各地域に関わる人が増える、つまり流動性を高めることで、日本経済が回り持続していく。そこにおいても、一人一人の動機を高め行動を促すことができるのがシェアリングサービスだ。   

 

「これまでは、幸せのカタチにも『こうなっていくことが幸せ』といったような正解のようなものがあったと思います。それが今、私たち一人ひとりの意識のなかで大きく変化してきていると感じるんです。シェアリングサービスは、これまでの「所有する」の一択だけではない、多様な選択肢を私たちに提供してくれる存在。自分自身が楽しさや幸せを感じることができる選択をするために、活用してみていただけると嬉しいです。「シェアする」ということの本質的な魅力がもっともっと広がっていくことで、『自分の心の声を聞いていれば幸せに繋がるんだ』、そう感じる人を増やしていきたいです」

シェアリングサービスの活用により生き方の選択肢が広がり、より自分らしい幸せを追求できる。シェアリングエコノミーが今よりも当たり前になる未来は、期待でいっぱいだ。

髙田理世

Riyo Takata

一般社団法人シェアリングエコノミー協会九州副支部長・エリア支部サポート

1998年、福岡生まれ。大学在学時よりデジタルを活用し地域や世代を超えて地域課題解決や人材育成に取り組むNPOの各種プロジェクト推進、FMラジオ番組のパーソナリティを務める。2022年に一般社団法人シェアリングエコノミー協会に参画し、九州をはじめ全国の企業や自治体が既存の枠組みを超えて新たな価値を生み出す環境づくりに邁進中。その他、組織のコミュニティマネージャーやトヨタ九州が運営するコミュニティスペースの運営サポートなども行う。

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