ENILNO いろんなオンラインの向こう側

メニュー サイト内検索
閉じる

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

観る人によってエンディングが変わるVR作品『HERA』の衝撃!『攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver』監督率いる会社×WOWOWが共同開発中

舞台は近未来の東京。近郊には宇宙エレベーターが建造され、それを使えば衛星軌道上に存在する宇宙ステーションにアクセスできる。そんな世界で繰り広げられる男女とAIパートナーの3人の関係性を近未来SFとして描くのが、VR作品『HERA』だ。劇中には細かい分岐が織り込まれ、観る人によって自然とストーリーやエンディングが変わるという。東弘明氏率いるストイックセンス社とWOWOWによって、共同開発中のこの作品。東氏といえば『攻殻機動隊新劇場版Virtual Reality Diver』の監督を務めるなど、規格外の体験型映像コンテンツの演出×CGプロデュースを手がける映像監督。プロジェクト始動から4年目を迎え、完成が待ち望まれる今、気になる製作の現在地について、また作品の特徴である分岐やそれにより可能になる体験などについて、東監督に伺った。

観た人も気付かない自然な分岐

ゲームや既存の映像作品ではよく使われる「分岐」。画面に「逃げる」「戦う」といった選択肢が現れ、体験者の選択によって、ストーリーが枝分かれしていく手法を言う。そんななかで『HERA』の最大の特徴は、鑑賞者の視線を感知するアイトラッキング(視線を追う)センサーを用いることで、見ている方向や見つめている時間の長さがトリガーとなり、シームレスに演出が変わっていくところだ。

大きくは3つのエンディングがあるのに加えて、キャラクターのセリフや演出が変わるといった細かな分岐も各所に散りばめられている。鑑賞者が分岐や自分の選択に気づくことはない。

東氏は2018年にVR作品2つ目となる『攻殻機動隊 GHOST CHASER』を製作した後、次に作るべきはインタラクティブな作品だと感じた、と当時を振り返る。そこにシームレスな分岐を採用すれば、VRの没入感が阻害されることもない。

 

「2016〜2019年頃は、AIやXRのテクノロジーが急速に発展し始めていて、それらを組み合わせることで、人とのコミュニケーション方法やエンターテインメントが今後大きく変わる予感がありました。VR映画に限らず、こうしたシームレスなマルチエンディング作品の鑑賞は、自分自身が物語を紡ぐ最後のピースになるようなパーソナルな体験になり得ます。そこには、現実世界と同等の“第二の人生を生きている”体感が得られる。それらは、人の心を本当の意味で満たし、豊かにしてくれる体験になると思いました」

 

当時アイトラッキング機能を搭載したデバイスを使ったコンテンツ製作を企画していたWOWOWは、こうした東氏の思いに共鳴。自然な流れで共同開発がスタートした。

未来予想図としてのHERA

『HERA』は未来のエンターテインメント体験といえるが、ストーリー自体も未来予想として楽しむことができる。例えば、タイトルになっているHERAは主人公のARレンズ越しに存在するAIパートナーのことだ。HERAは日々の生活をサポートしたり、地上と宇宙で離れ離れになっている主人公と彼女との関係をアシストしたり、現実と仮想世界を越境しながら人間に寄り添う存在として描かれる。

そんなHERAと共に生活するなかで、主人公とHERAは互いに惹かれ合うようになる。人とAIが惹かれ合う、このような展開はどこから着想を得たのでしょうか。

 

「HERAには、未来はこうなるだろう・こうなってほしい、という私の未来予想全てが詰まっています。相手が仮想的な存在であったとしても、彼女、彼らとの交流を通じて芽生える自分の感情は、仮想ではなくどこまでも“リアル”なものだと思っていて。多くの人が映画や漫画といった創作物のキャラクターの言葉に救われた経験があるように、私も様々なコンテンツを通じて、喜びや悲しみや心震える瞬間などを経験してきました」

 

そこには、近年のSF映画のなかで描かれるAIやバーチャルな世界の描かれ方への思いも関係している。AIが氾濫を起こし、進んだテクノロジーが人々の実存を脅かし得る世界を描いたものだ。

 

「特に近年、SF作品ではAIやバーチャルな世界がしばしばネガティブな側面で描かれることが多いと感じます。オーバーテクノロジーによってもたらされる危機的状況から生還し、リアルな世界を肯定するプロットはエンターテイメントとして非常にわかりやすく、面白い。自分も好んでサイバーパンクな世界観を描いてきたけれど、バーチャル世界が現実になろうとしているこの過渡期の今、警鐘を鳴らすばかりではなく、未来に希望を感じることができるポジティブな作品を作りたいと感じたのです」

製作開始から3年目の現在地

ここ数年で、クリエイティブ領域のテクノロジーは加速している。特に2022年以降は、テキストを入れるだけで自然な画像や文章を生成するAIサービスが毎月のようにリリース、アップデートされている。まさに『HERA』の世界観が現実味を帯びてきている一方で、製作においてはこんな戸惑いもあると東氏。

 

「宇宙エレベーターが実現する、数十年先の近未来という設定で『HERA』のなかで描いていたことに、現実が追いつきつつある状況です。個々がAIパートナーを作り、ARレンズを通じて自然な対話をしながら暮らす世界観は、ますます現実味を帯び始めている。HERAを早急に完成させなければと、少し焦りを感じています。今はCG映像や演出など細かなリメイクをしているところで、2024年春には完成させたいところですね」

 

2024年映画祭での公開を目指し、その後はVRアプリでのリリースを計画している。

『HERA』の体験を多くのファンが待ち望むところだが、「『HERA』の完成は未来のコンテンツの一つのプロトタイプに過ぎない」というのが東氏の考えだ。

 

「私は今、VRコンテンツを作っていますが、今後はARがメインのインフラになると思っていて。スマホのように誰もがARグラスを持つ時代になったら、現実世界にもう一つの世界が重なって見える世界観が実現します。さっきまでVR内で一緒に冒険していたAIキャラクターが、ARグラスをつけたら現実世界にも存在していて、彼らと渋谷で待ち合わせをして一緒に遊ぶこともできる。従来のように受け身での体験ではない、第二の人生とも呼べる新たなエンターテインメントとも言えます。『HERA』がそれを引き寄せられるようなプロトタイプになればと思います」

歩き回れるVR体験

現在東氏が構想しているのは、『HERA』をロケーションベースVRでも体験できるようにすること。ロケーションベースVRとは、従来のVR体験が座るか直立して体験するのに対し、実際の空間を歩き回ることでさらなる没入感が得られる手法だ。

 

「これまでのVR体験にもどかしさを感じていました。目の前に美しい情景が見えたら、誰しも歩き回りたいはずですよね。ロケーションベースVRでは、センサーで囲った約50平米のスペースを実際に歩き回りながら、AIパートナーとの物語を体験できる」

 

もちろんそこでは『HERA』を体験することも可能になるし、自然な分岐によるマルチエンディングのような『HERA』で培ったノウハウを別の作品製作に生かすこともできる。

 

「『HERA』は分岐VR映画で終わるのではなく、今後のテクノロジーに合わせて様々なメディアを横断しながら展開していければと考えています」

 

新しいエンターテインメント体験としてはもちろん、テクノロジーや未来の生活様式に対する私たちの視野を広げてくれる『HERA』。完成を楽しみにしたい。

東 弘明

Hiroaki Higashi

株式会社STOICSENSE 代表取締役・監督

VR・プロジェクションマッピング・全天ドーム映像といった体験型メディアを用いた創作活動を行う。監督及びCGプロデュースを手掛けた攻殻機動隊 VRフィルム2作品は、ヴェネチア国際映画祭、シッチェス国際映画祭など多くの映画祭でVR部門に正式招待され、国内外で高い評価を得ている。その他国内メジャーアーティストのMV、巨大LEDを利用したドームツアー映像総合演出など創作は多岐に渡る。
onedotzero作品招待 PROMAX・BDA三部門受賞 VFX-JAPAN AWARD2017/2018/2019優秀賞選出 2011年/2013年文化庁メディア芸術祭審査員推薦作品選出。

関連リンク

新着記事

お問い合わせはこちら

CLIP 暮らしにリプする IT・インターネットをより楽しむためのエンターテイメント情報満載

Netflix FreaksはNetflixをとことん楽しむための情報メディア。Netflixの最新情報や厳選したおすすめ作品・レビューを紹介しています。

OPTAGE BUSINESS