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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

一緒に仕事ができそうな人と15分だけ会話する“今風な”マッチングサービス

オンライン上で人と出会うマッチングサービス。今や多数のサービスが存在するが、ユニークなサービスが話題になっている。「VIRTUAL LUNCH CLUB(以下、バーチャルランチクラブ)」だ。サイト上に表れる「いつか一緒に仕事ができそうな人とオンラインで15分だけ話してみよう」というフランクなお誘いに、ついついのってしまいそうだ。マッチング数を増やしているというこのサービスの仕掛けはどんなところにあるのか? これまでにも多数のマッチングサービスを開発し、同サービスの開発責任者でもある、エッグフォワード株式会社の山本大策氏に話を聞いた。

オンラインで初対面なら15分がちょうどいい

カフェ? はたまたアパレルブランド? バーチャルランチクラブを初めて訪れたなら、ロゴやデザインからそんな印象を抱くだろう。サイト内では15分オンラインで会話することを“ランチ”と呼び、ユーザーは興味のある人に連絡をとり、お互いの合意のもと“ランチする”ことができる。無料でも使えるが、有料会員になると使える機能の幅が増える……と、大枠は従来のマッチングサービスと一見同じだが、最大の特徴は「15分」にあると、自身もヘビーユーザーという山本氏は話す。

 

「私自身、もう何度も“ランチ”していて、サービス開発のチームメンバーとして入ってもらったデザイナーやエンジニアにもサービスを通して出会いました。実感するのは、15分というのが初対面の方と打ち解けるのにちょうどいい時間設定ということです。リアルだと『今日は天気いいですね』『このお店来たことありますか?』などと空間に付随する雑談から入る場合が多いですが、オンラインの場合はいきなり本題に入ることができる。初対面で本題だけで喋れるなら、15分で十分と思いますね」

例えば会話の初めから「プロフィールにこう書いてありますが、何か経験があるんですか?」などと、お互いの関心事にすぐに突入できる。

 

仕事上の関係性を目的にしているため、登録ユーザーの職種は幅広い。ベンチャーやスタートアップやフリーランスが目立つが、経営者、キャリア系、人材系、マーケティングなど多岐にわたる。人脈が広がった、仕事のパートナーに出会えた、転職が決まった、自社の社員には相談できなかったことを相談できる人に出会えた、といったものまで活用幅はそれぞれだが、共通するのは高いマッチング率。仕事上の相性の合う人と効率よく出会えることが、高評価の土台になっている。

リリース直後にサービスを変えた

バーチャルランチクラブのリリースは2020年7月……と、まさにコロナ禍が始まった直後。在宅勤務が増え、出会いの機会が減るなかで生まれたサービスというのには至極納得だ。しかし「実はリリース直後は全く別のサービスだったんです」と山本氏。

 

「『STREAMME(ストリーミー)』という、リモートサービスを誰でも簡単に作って販売できるプラットフォームを6月中旬にリリースしましたが、あまり反応が良くなくて。そこで、コロナで出会いが減ってしまったことに着目して、軸をコミュニケーションの方に置き直し、急遽サービスをピボットしました」

そこで生まれたのがバーチャルランチクラブというわけだ。従来のマッチングサービスでは「いずれどこかでリアルで会う」ことが目標になっているのに対して、こちらはオンラインで15分話したところがゴール。このゴール設定に、時代の価値観が現れていると山本氏は言う。

 

「初対面ならオンラインで15分話せたら十分、という人が増えていますし、むしろその方が相手にとっても失礼にならない、という感覚が定着していると思います。逆に、初対面なのにいきなりリアルで1時間ミーティングしましょう、なんて言われるとちょっと常識を疑ってしまう、という人が増えているんじゃないでしょうか」

 

確かに2年ほど前までは、「初対面なのにオンラインは失礼」だった。それが逆転しつつある。またもしもコロナでなければ、やはり最終的にリアルで会うことが変わらず重視されていただろう。「オンラインで初対面で15分」というのは、時代に合った絶妙なゴール設定といえる。

バーチャルランチクラブの程よい立ち位置

ゆるいゴール設定に加えて、フラットなデザインはカジュアルで親しみやすい。特に女性なら、マッチングサービスや出会い系アプリと聞くと抵抗のある方も多いが、そうしたネガティブな印象は一切感じられない。また登録時には性別を選ばない選択肢もあり、そうした細かな配慮にも、「多様性の時代」が映し出されている。

山本氏ほど昨今のマッチングサービスを追い求めてきた人は他にいないかもしれない。10年以上、個人が一対一で出会うマッチングサービスの開発・運営を行ってきた。2012年にはカフェで会うことをゴールにした「コーヒーミーティング」、2014年には個人が気軽に時間を売れる「タイムチケット」というサービスを開発・運営した(どちらも既に売却)。他にも多数のサービス開発に携わってきた。「10年間マッチングサービスしかやっていない、しかもこれほどリリースしている人間は日本で私くらいに思います(苦笑)」という山本氏に、従来のマッチングサービスについて聞いた。

 

「国内では恋愛・婚活に特化したものと、会社の採用に振り切ったものが圧倒的多数でした。前者が『個人と個人』、後者が『会社と個人』とするなら、バーチャルランチクラブはちょうどその中間的存在です。採用を前提とせず、あくまで個人として出会って、その後相性が良ければ仕事に繋がる。こうした立ち位置のマッチングサービスはまだ珍しいと思います」

 

現在1年半の運営で、会員数は1万3千人/マッチング数は6万1千件というが、これはこれまで山本氏が携わってきたマッチングサービスに比べても多い数だという。

リモート時代に求められるコミュニケーションサービス像

リモートワークが浸透し、仕事を発注したい企業や個人がオンライン上で不特定多数に業務を発注するクラウドソーシングの働き方も定着している。業務委託なのか副業なのか、パートナーとしてなのか、その形態が問われることはない。大事なのは、価値観や人柄やスキル。こうした働き方について山本氏は「管理する→信じて仕事をお願いする時代に変わった」と言う。こうした多様性のあるチームで働く時代には、バーチャルランチクラブのように、多数の人と自分の相性を一気に確かめられるようなサービスは、今後も活用幅が広がっていきそうだ。

 

今後、マッチングサービスを含むこうしたオンラインの場作りはどうなっていくのか? 未来のコミュニケーションサービス像について、山本氏にぶつけてみた。

 

「今後も、オンライン前提のコミュニケーションサービスが増えていくと思います。そこで求められるのは、熱量のあるオンラインコミュニティをどう作っていくか? という設計です。コミュニティの熱量は、リアルイベントの場合は人数が集まると自然発生的に生まれたりするものですが、オンラインだとプロダクトのなかで熱量を可視化したり、体験できるような仕組みにする必要があって。その意味では、よりプロダクトの勝負になっていくと思います」

 

熱量の体感というのは、例えばオンライン中のメンバー数が表示されたり、投稿に対して反応したユーザー数をカウントされたりする機能のことだ。

その上では、「コミュニティへの貢献が自然に醸成される仕組み」もポイントになると山本氏は続ける。

 

「例えばユーザーがサービス内で何か“良い行動”をすると、自分へのインセンティブにもなる。そうした仕組みがうまく入れられると、長く使ってもらえるサービスになるでしょうね。サービス内で困っている人へのサポートなどを運営側が行うのではなく、ユーザーが主体となって行う。そんな空気を醸成できたら、素晴らしいコミュニティになると思います」

 

今後、オンラインの場は、これまで以上にあらゆるプロジェクトやサービスに欠かせないものになる。そうした設計者目線でバーチャルランチクラブをみると、また違ったものが見えてくるはずだ。

山本 大策

Daisaku Yamamoto

エッグフォワード株式会社 Chief Innovation Officer

1978年生まれ。みずほ情報総研株式会社、フィードパス株式会社、株式会社リクルートメディアコミュニケーションズを経て、株式会社レレレを設立。会社設立後は、コーヒー1杯を飲む時間を一緒に過ごしたい人と出会えるサービス「CoffeeMeeting」、個人が気軽に時間を売買できるサービス「TimeTicket」を運営。2016年10月にレレレの全事業を譲渡。2020年からエッグフォワード株式会社で新規サービスを開発中。これまでに開発したサービスを利用して出会った人たちは累計10万人を超えるなど、ネットとリアルをつなげる新しい仕組みを生み出し続けている。

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