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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

D&DEPARTMENTのナガオカケンメイ氏らが考案の新客室「クリエイターの住むお部屋」登場! VISONが提供するアナログとデジタル

持続可能な住まいづくりのため、地域にDX(デジタルトランスフォーメーション)は今や不可欠。デジタル技術を活用した街づくりについて、様々なアイデアがかたちとなっている。三重県中・南部にある多気町をはじめとした大台町・明和町・度会町・紀北町は、5町で一つの仮想自治体「美村(びそん)」を組み、共通のデジタルシステムを活用しながら、街のブランディングを進める。2021年に開業し、年間約350万人来場の複合リゾート施設「VISON(ヴィソン)」を中心とした街づくりの現在地について、ヴィソン多気代表取締役の立花哲也氏に聞いた。

三重県中・南部の地域にある魅力を掘り起こす

VISONは、全国初認可のスマートインターチェンジと直結の民間施設。東京ドーム24個分の広さの敷地に、農園やホテルなど9つのエリアがあり、約70店舗が出店している。楽しみ方は様々、四季を感じるホテルや産直市場、薬草で有名な多気町にちなんだ薬草湯、和食の食材メーカーによる体験型店舗のほか、「世界一の美食の街」として知られるスペイン・サンセバスチャン市で人気のバルや有名料理人が手掛ける地域食材を活かした料理などがある。

 

広い施設を歩く中でふと気づくことがある。“地域に根差したお店”の出店が目立つのだ。聞いてみると、VISONではナショナルチェーンやコンビニといったお店は入っておらず、地元に馴染みあるお店が立ち並ぶという。

・第十八甚昇丸(深海魚)

・海女小屋なか川(伊勢海老、鮑)

・鈴木水産(活魚)

・竜吟虎嘯(肉レストラン)

・竜吟虎嘯 薪場(肉カウンター)

・baraque(肉屋台)

・たいやき わらしべ(たいやき)

・若竹(松阪牛精肉)

どれもが地元のお店である。

 

これまで様々な複合施設に携わった立花氏は、「地域が違えばとれる食材も、発酵の文化も、人も建築も風景も違う」と説明してくれた。これまでの地方の宿ではお決まりのようにマグロの刺身が出てきたが、「本当にそれが正しいのか」と長年の疑問があった。食を見れば、地域に根付いた魅力がわかる。その特徴を磨くことでブランディングされ、地域は活気を取り戻せると分析する。こういった熱意なく複合施設をつくっていては、どこの店舗もナショナルチェーンになることは目に見えている。地域の文化を守り、再生し、拡大させる。地域の食文化を想う姿勢を大事にする、VISONの根幹のコンセプトがここにある。

地域通貨や自動運転を導入して地域のDX化を

アナログの部分に強い想いを抱く立花氏ではあるが、一方でデジタルな部分を多方面で導入している。「美村(びそん)」は5町でひとつの仮想自治体と位置づけられている。

 

その取り組みの一つに「美村PAY」がある。現金の代わりに、スマートフォン決済ができるアプリだ。事前にお金を美村PAYにためておくことで、QRコードの読み込みだけで決済が完了。多気町・大台町・明和町・度会町の4町限定のデジタル通貨となっており、支払い時にポイントが付与されることで、地域での買い物の機会を創出していく。

 

また、アプリを通して、地域で採れた農産物・海産物のお得な販売情報が得られる。地域住民等が手軽に情報に触れられ、購入へ。地産地消の役割も担う。こういった情報は地域共通のポータルサイト「美村」にも掲載されており、地域のニュースのほか、庭の手入れや掃除・粗大ごみの搬送・子育てといった地域の困りごとについての発信、そして、それを手助けしたい人とのマッチングも試みている。

 

こうして蓄積したデータを活用し、観光・生活の両面からデジタル基盤を発展させるのが狙いだ。マイナンバーカードを活用した地域の周遊促進・公助のデジタル化や、地域の新たな収益構造の構築を行うのだ。

 

「周辺住民の体調のデータを集めて健康管理につなげています。住民は施設内で血圧・血糖値を測って専用アプリで管理。異常があれば医師の紹介も受けられます。また、遠隔診療所の準備も進んでいます。VISONのホテル内でクリニックを運営するMRT株式会社には、8万人の医師が登録されており、山間部の暮らすご老人の家に看護師と運転士を派遣して、オンラインの医療サービスを受けてもらう予定です」

 

2023年内には自動運転の車も走り出すなど、デジタルが生活者を豊かにしていく。

その地域でしかできないことの価値の探求

豊かさでいうと、宿泊施設「旅籠(はたご)ヴィソン」に、クリエイターがプロデュースした新しい客室「クリエイターの住むお部屋」が2023年10月に登場した。

4棟・全40室からなる旅籠ヴィソンは、D&DEPARTMENT PROJECTを主宰するナガオカケンメイ、奈良でカフェと雑貨の店「くるみの木」を展開する石村由起子、皆川明が主宰する minä perhonen、コンランショップ・ジャパン代表の中原慎一郎の4組のクリエイターがプロデュースした宿泊施設。1棟ごとに異なるコンセプトを掲げ、1階には各クリエイターのコンセプトショップを、2階にはそれぞれがデザインした客室を展開している。

「VISONは山の中にあるからこそ、綺麗な星や山並みがすぐそばにあります。地元に住んでいるとなかなか気付けない魅力ではありますが、都市部からいらっしゃる方には響いています。ここでしか出来ないことを研ぎ澄ませていきたいです」

 

こう語るのはヴィソンホテルマネジメント株式会社の総務部部長・竹澤一彦氏だ。地域の課題をも魅力に変えるためには何が必要か、常にヒントを探っている。

 

「例えばVISONに、この地域伝統の伊勢たくあんを作る漬物屋さんがあるんですが、漬物づくりで干す行程が大変な作業になることも。そうなれば、宿泊者に対してそれを手伝うツアーなんかもメニュー化できると思うんですよね。その地域でしかできないことに価値があるので。そういった模索を続けたいと思います」

 

VISONの施設はデザイン性が非常に高く、そこにいるだけでも豊かさを享受できる。しかしながら、さらなる“贅沢”として、非日常な体験がこの地でできるようになるのだ。

デジタルツール導入だけでないDXの本質

年間約350万人が来場する施設である。順調に街づくりが進んでいるようにも見えるが、「難しさもある」と、前出の立花氏は言う。

 

「5つの町と連携して変わっていくことは言うは易しです。地域ごとに事情も異なりますし、足並みが揃うことばかりではありません。ですが、『そんな状況だから仕方ない』と言って待ってる時間がないんですよね。

 

田舎で何も行動を起こさなかったら、色んなものが無くなる。盆踊りをはじめ、あれもこれもなくなる。だから動き続けるんです。若者がこの地域に戻ってきたり、これまで話さなかった人が話し出したり、個々人の変化が大事。

 

DX的にテクノロジーを導入していますが、DXの本質は人が変わること。ですので、アナログな部分も大切にしていますよ。あと、地域のローカルな魅力を掘り起こして発信することも熱量高くやっています。手触り感のあるアナログな情報であっても、そこに反応してくれる方々がいるんです。今後、富裕層やインバウンドの方なんかは、より一層にこういったローカルな贅沢に反応していくのではないでしょうか」

隣り合わせた5町は、行政区域の枠を越えて連携。今後、デジタル技術を活用し、各種社会課題解決の取り組みを進めていく。VISONを舞台に、三重県で蓄積された貴重なノウハウは他の地域にも伝播しているようで、静岡県や広島県、福井県に同様の施設の話が立ち上がっている。地域を変えるDXは、また違ったかたちで我々に魅力を届けてくれることだろう。

 

立花哲也

Tetsuya Tachibana

ヴィソン多気 代表取締役

1974年三重県生まれ。 高校卒業後、建設業界へ。20歳で独立。その後、温泉経営に参入し、複合温泉リゾート「アクアイグニス」、離れ宿「湯の山 素粋居」を手がける。2021年、三重県多気町に全国初認可のスマートインターチェンジ直結の民間施設、ヴィソンをオープン。

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