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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

「伝統的な日本企業は『逆GAFAな働き方』」企業のDX化に欠かせない「人材」

日本企業において、実際のところ果たしてどれくらいのレベルでDX化が進んでいるのか。多くの大企業が企業理念としてDXを掲げるようになり久しいが、現場では、前時代的なコミュニケーションなくしては業務が進まないという事態が多々ある。本当に日本のDXって、進んでいるの? そこで今回ピックアップするのは『世界一わかりやすいDX入門』(各務茂雄 著)。GAFAでの実践を日本企業に適応させることで、日本企業のDX化が大きく躍進するという。その方法とは?

GAFAな働き方5つを、自社風にアレンジ

著者の各務茂雄氏は、2017年のドワンゴのインフラ改革においてDXを推進し、3年かけて20億円のインフラコストダウンを成功した実績をもつ。2018年からは株式会社KADOKAWAにおいてDXを通じた経営改革を行う。現在では三菱UFJ銀行でのDXに取り組んでいる。

 

本書では、これまでマイクロソフト、アマゾンウェブサービス(AWS)をはじめとする多くの外資系先進企業の現場で働いた経験から「どうすれば日本企業がよりDXを進められるか」について説いている。筆者の核となる主張は「DX推進をするなら、GAFAのような企業を目標とする」こと。現代人の多くが利用するサービスを世に呈したネット時代の4巨頭、Google・Apple・Facebook・Amazonが成長を遂げたのには共通した5つの働き方の特徴があるとし、本書ではそれを「GAFAな働き方」として指南。一方で、日本の古くからの企業体質にありがちなそれとは対極の働き方を「逆GAFAな働き方」として言語化し、以下のように記している。

 

「GAFAな働き方

  • 企業文化や行動規範が明文化されている
  • 仕事の役割が明確に設計されている
  • コミュニケーションが最適化されている
  • 実力主義(勘違いされることが多いが成果主義とは違う)で多様性がある
  • KPIやOKRがクリア

(同書P19より抜粋)」

 

「逆GAFAな働き方

  • 行動規範と実際の働き方に大きなGAPがある
  • 仕事の役割があいまい
  • コミュニケーションコストが高い
  • 同調圧力があり、年功序列
  • ゴール設定があいまい

(同書P20より抜粋)」

具体的には、どんなことなのか。1つ目は、会社のビジョンやミッションと現場の感覚を一致させるべきだということ。例えば会社として掲げるビジョンがありつつも現場ではコストダウンが叫ばれチャレンジまでに至らないことがある。こういった会社と現場の齟齬を見直すべきという。

 

2つ目は、各社員における仕事内容が明確であることが大切だということ。自分の遂行する業務の価値を理解し、会社側もそれを理解すること。さらにそのスキルを、会社という枠を出た業界や社会で通用させていくべきという。

 

3つ目は、社内コミュニケーションについて。現場での業務が属人化しないようにマニュアルに落とし込み、コミュニケーションを効率化させることが大切だ。それは必ずしもドキュメントである必要はなく、漫画などイメージしやすい方法でもよいという。

 

4つ目は、成し遂げる仕事の「成果」だけでなくその人の「実力」を見るべきということ。人によって得意な分野は異なるため、それを正しく判断する努力を会社が怠ってはならないという。

 

5つ目は、ゴールやゴールを達成するプロセスをよりはっきりさせること。あいまいなコミュニケーションの芽を摘み、効率的に同じ目的に向かって社員が取り組むべきという。

 

外資系企業では比較的当たり前のように遂行されるこの5つのポイント、日本企業では古い体質が残るあまり、実践されていない例も多い。会社の目指すビジョンとは相反する上長からの指示に仕方なく従うという、日本人にありがちな「空気を読む」的発想は、そろそろ卒業したい。それを現場が打破していける会社にこそ、新しい風が吹く。

スポーツと同じく、まず「守り」を固める

会社という組織にデジタルのシステムを導入することで、生産性を上げ、社員のよりよい働き方を実現し、ひいてはコストダウンを図る……。それがDXの本筋だと思われがちだ。しかしDXが波及するべきは、そこにとどまるべきではない。会社にとってのクライアント、エンドユーザー、その他関係各位のあらゆるステークホルダーにとって、ICTによる体験の向上を実感できること。これこそが、DXの最終的に目指すところである。本書では、それを「攻めのDX」と「守りのDX」の2つに整理した考え方として示している。

 

「攻めのDXとは、業界内での売上げや利益を狙うためのデジタル投資である。(中略)一方で守りのDXとは、会社全体の生産性を向上させ、それによって下がった費用を攻めのDXか守りのDXに再投資することである。(同書P71より抜粋)」

 

攻めのDXとは、「デジタルマーケティング」「サブスクリプションサービス」「EC」「プラットフォームづくり」など、ステークホルダーがDXの仕組みにより「便利」を感じられる仕組みを作っていくこと。 一方で守りのDXとは、「人事総務のデジタル化」や「店舗や物流のデジタル化による効率化」「従業員向けデバイスの導入」など、社内業務がDXの恩恵を受けて快適になる仕組みを作っていくこと。この観点からいうと、社内のデジタル体制が機能しなければ、当然攻めのDXは実現不可能だ。だからこそ日本の企業がDXを進めるためには、まず社内からテコ入れが必要。 著者が着手したというKADOKAWAのDX化でも、まずは「守りのDX」からはじめたという。

 

そうはいっても、これまでの企業体質を打破しながらDXを進めることは、容易なことではない。同書ではDXを進める際に抵抗勢力に邪魔されることは避けられないとし、そのために「1つの基準」をもち、進むのがいいと説明している。そのための社内勢力を、本書では「ギバー」「マッチャー」「テイカー」と銘打ち、これをうまく活用することが大切と語る。ギバーとは、人に惜しみなく与える人。マッチャーとは、損得のバランスを考える人。テイカーとは、真っ先に自分の利益を優先させる人。「ギバー」の力を最大化するためにマネジメントスタイルを調整できる「マッチャー」を準備し、抵抗勢力である「テイカー」をおさえることで、社内DXを加速させるというのだ。

「ギバーは、理系といわれる人材に多い。ずばりエンジニアリングが得意な人材である。優れたマッチャーは、理系分野に知見を深め、さまざまな経験をしながらエンジニア魂を持っている人材である。ギバーはICT業界にある程度存在し、大学・大学院問わず新卒にはたくさん存在している。一方で『優れたマッチャー』はなかなかいない。(中略)なかなか確保するのが難しいが、エンジニアがMOTというよりはMBAの取得を通じてビジネスのスキルを高めると、かなりレベルの高いマッチャーになれる。(同書P167-168より抜粋)」

 

この考え方を軸として据えつつ社内のDXを進めていくと、知らぬ間に社内のDXが推進できている、と同書では説明されている。攻める前に守りを固め、現場の課題感を洗い出した上で人員を冷静に采配する。スポーツにも相通ずるこういった対応が、DXの第一歩となるようだ。

人材の持ち味を無視してはDXは進まない

DXが叫ばれるあまり社員のデジタルリテラシーをとにかく上げるべきと言われるが、そうしたところで誰もが同じように同じ仕事をこなせるわけではない。並行して人材適正を分析しておくことは必須だ。著者が推奨する方法は、人材を「ハンター(狩人)型」と「ファーマー(農耕民)型」の2タイプに分け、さらに彼らの目標設定を「トップライン」と「ROI(投資利益率)」の2タイプに分ける。4タイプに分け、現場でどう立ち回るべきかの采配をしていくという。

 

「DXも同じだ。新しいデジタルビジネスプランを立てたら、既存のビジネスとのカニバリゼーションを最小限にしたビジネスモデルをつくる。そしてそれが将来の資産になるような仕組みにする。提供が終わったらサブスクリプションとして成り立つようにオペレーションをつくる。自社内の他のビジネスとのシナジーを出して、さらに強固なビジネスにする。このようなチームを組むことで全員がDXを実行できる。つまり、どの人材が欠けてもDXは実現できないということである。(同書P191より抜粋)」

 

コロナ禍でのリモートワークにより、会社のDX化が進んでいるかがより顕在化した。リモートワークが立ちゆくためには、社内もしくは社員のDX化は不可欠。対面のコミュニケーションでなんとかなっていたようなことが、叶わない場面も出てきた。このコロナ禍で課題や不足がクリアになった今だからこそ、人材采配をリセットし検証していくべきなのかもしれない。

 

DXとは、単なるシステム導入で終わる話ではない。その本質を紐解くと、会社の組織にまつわる、いろいろな課題が浮き彫りになる。現場に染み付く悪しき慣習を取り除き「GAFAな働き方」に追従していけるか、各人材の特性がきちんと見極められて業務が進められているか。こうして守りのDXを固めてから、はじめて攻めのDXが推進できる。着実なステップアップを踏むことで、大きく飛躍する日本企業のDXに期待したい。

 

《Profile》

各務 茂雄(Shigeo Kagami)

KADOKAWA Connected代表取締役社長、KADOKAWA執行役員 DX戦略アーキテクト局長、ドワンゴICTサービス本部長を経て、現在では三菱UFJ銀行 デジタルサービス企画部長としてDX推進に取り組む。著書に『世界一わかりやすいDX入門 GAFAな働き方を普通の日本の会社でやってみた。』『日本流DX』(ともに東洋経済新報社)。

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