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アナログとデジタルのあいだ

丁寧な生活を優先し、てまひまかけて仕事に向きあう人たち。オフラインを充実させながら、実用的にオンラインを取り入れてるリアルな姿とこだわりを学ぶ。

触れなくても言葉で伝える……【オンライン時代のヨガ】

  • アナログとデジタルのあいだ

デジタルな時代において、てまひまかけて毎日の仕事、生活に向き合う人がいる。アナログとデジタルをフレキシブルに往還しながら、自身の夢に向かって邁進。そんな健やかな生活者の視座を探る。

ヨガの練習は大きく分けて、瞑想、呼吸、そしてアーサナと呼ばれるポーズから成り立つ。言ってみれば、身体を使って行う完全アナログ世界。そこで、ともすれば対極にも思えるオンラインを積極的に導入し、受講数を大きく伸ばしているヨガインストラクター養成スクールが〈OM YOGA〉だ。同社を運営する〈ジョンスピークス〉の代表・吉田香代子さんは、“メディア疲れ”が叫ばれる時代に、ヨガが果たす役割について考えてきた。ヨガに出会って20年、ヨガの学びを通して辿り着いた、オンラインツールとのより良い付き合い方とは?

吉田 香代子

KAYOKO YOSHIDA

株式会社ジョンスピークス 代表取締役

ヨガインストラクター養成スクール〈OM YOGA〉運営のジョンスピーク代表。東京、大阪、京都、福岡、広島、バリの各都市で、短期集中、通学コースを単位制で展開している。

吉田 香代子

仕事につまずいたら、生活から見直す

ヨガだけでなく、食事や子育て、時間の使い方など、こだわりをもったライフスタイルで人気を集める吉田さん。20歳でヨガにのめり込み、インストラクターとして活動した後、2014年に〈OM YOGA〉を開校。現在は東京・大阪・姫路の3拠点で展開している。忙しく仕事に励むなかで、まずは人生観からうかがった。

 

「人生には『仕事』と『生活』という2大テーマがありますが、私にとってまず大切なのは『生活』で、そのために『仕事』がある。いつもその比重を間違えないようにしています」

 

まずは自分の望む生活や人生をイメージし、それに合った働き方を考える。事業の内容や金額などの細部を検討するのはその次。その際も、どうしたら自分の満足が得られるか?社会に貢献できるか?といった深部から思考を巡らせていくのだという。だから、仕事がうまくいかず軌道修正が必要な時も「生活の見直しからする」のが吉田流。生活の大事な部分ができていなければ改め、その上で仕事を変えていく。例えば、それが事業の大きな方向転換に繋がったこともある。

「7年程前からヨガ人口の増加に伴い、同業者も増え続けていたため、数年前に役員全員で事業を見直すことにしました。その際も「これから自分たちの生活どうしたい?」というところから議論を始めたんです。

 

私も年に2ヶ月は必ずバリ島へトレーニングに行きますし、スタッフからも暮らす場所を自由に選びたい、という意見が。それを可能にするため、オンラインでできるものについてはどんどん導入していこうと決めたんです。もともとスタッフの拠点も点在していて、日頃からZOOMなどのリモートツールを使っていたこともあり、特に違和感はありませんでした」

対面とオンラインはどちらもツール

「私たちの仕事はヨガの知識を提供すること。アナログとデジタルは、ヨガでは対面/オンライン(クラス)に置き換えられますが、どちらも知識を提供するコミュニケーションツールという意味では同じ」と、オンラインを柔軟に受け入れている吉田さん。

 

健康に関わる知識となればコミュニケーションはより重要だが、逆に言うと、それさえ間違えなければツールはさほど関係ない。そんな彼女も、この考えに到達する前は辛い思いをしたと話す。

 

「20代の頃はとても苦しい時期がありました。ヨガをやっている人に多いのですが、当時は私も人のブログやSNSを見て心がかき乱されていたんです。こんなビジネス志向はヨガじゃない、ネットで宣伝なんてダメだ、と。オンライン=丁寧ではない、宣伝=お金儲け、といった表面的なことに過剰反応して、自分の可能性に制限をかけ、結果として事業として上手くいかないことが多々ありました。でもその根底には羨望や嫉妬があって、それらは他人を魅力的に思うからこそ生まれるもの。ヨガを黙々と実践するなかで、その考えが間違っていることに気づいたんです」

公私ともに可能性を広げたオンライン事業

2020年3月、とあるヨガスタジオでクラスター感染が起きたのをきっかけに、〈OM YOGA〉も全店舗クローズせざるを得ない状況に。同時期に、国際ヨガライセンス協会によりオンライン受講が認められ、同社でも早速オンラインクラスを導入した。

 

「スタジオが閉まっているので、道はそこしかありませんでした。まずは対面/オンラインでできることの選別から始めました。例えば、正しいアライメント(姿勢)を伝えるため生徒さんの体に『触れる』のは対面でなければできませんが、各生徒さんにアライメントの写真を撮影して送ってもらい、講師が1人ずつアドバイスするといった方法で対処。

 

対して、最近では精度が高まっている解剖学のアプリや動画を駆使すれば、対面と同じかそれ以上の理解を得られることもわかりました。グループワークでZOOMのBREAK OUT ROOM機能※を使ったら生徒さん同士の交流も深まり、結果反応はものすごくよかったですね」


※グループワーク時に役立つ機能で、セミナーやプレゼンテーション時に参加者をグループに分けることができる。

コロナ禍では、彼女個人としても大きな転機が訪れた。

 

「鬱を患っている人や強い不安を感じる人から、症状が悪化し外出もできないといった連絡が相次いで。ヨガがその助けになるのではと思い、毎朝オンラインで一緒に瞑想しませんか?と特定のメンバーにだけ知らせたのが始まりです。もともと、朝が整うと生活全体のリズムが整うというのが私の持論で。過去に自分が精神的に病んでいた時に、それで回復した経験があるんです」

 

吉田さん曰く「呼吸は健康のバロメータ」。呼吸は心が乱れると無意識に止まりやすいので、呼吸を意識的に整えることで心の健康も取り戻せるのだと言う。この瞑想会を2ヶ月も続けると、知人の体調はすっかり回復。徐々に参加人数が増えてきたため、スクールでのサービス化が決まった。〈365 yoga meditation〉の名で今も毎朝継続中だ。

 

「サービス化を検討した時、もともと瞑想は毎朝していた上、自分の人生にものすごくフィットしていると思ったんです。人と繋がって成長したい、社会貢献もしたい、という自分の思いにも合っている。そもそも私は子供がいるし、シングルマザーというのもあって、定期的にクラスをもつのが難しかった。その長年の願いを可能にしてくれたのが、この事業だったなって今は思います」

 

世界中どこにいても、子どもがいても、ヨガを学ぶことができる。オンラインで働き方や生き方が変わる今、ヨガの世界においても、ますます女性の可能性は広がっていく。

ヨガが“SNS疲れ”の時代に必要な理由

コロナはここ数年のオンラインメディアの普及を一気に加速させた。今後、ますますヨガが求められる時代になると吉田さんは話す。

 

「一人一人がメディアの主人公となり、発信を通じて、個性や能力を発揮する時代です。それには、心身ともに健康という土台が不可欠。それなのに、“メディア疲れ”のように社会のスピードについていけず、体調を崩す人が増えています。キラキラした他人の投稿を見ては、自分と比べて焦ったり、不安になったりして」

 

そこで大切なのは、冒頭にあったように、自分の暮らしや人生に必要なもの・不要なものを知っておくこと。

 

「ヨガは本当に寛容なんです。身体の悩みがある人は身体のヨガを、心を患っている人は心のヨガ、健康で幸せな人はそれを維持するヨガを見つけることができる。人それぞれにフィットしていくのがヨガの素晴らしいところ。そんなヨガの実践を通して、自分を適宜見直していけば、メディアに振り回されない自分に辿り着けるはずです」

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取材:池尾優

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