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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
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平成生まれの若き校長が見据える2030年。教育現場は社会とよりシームレスにつながる

定員割れの女子商業高校の校長に就任、あっという間に新入生を2.5倍近く増やした平成生まれの若き校長がいる。日本における少子化により、より負担も期待も背負う高校生たちを前に、陣頭指揮をとる校長はどんな未来を見ているのか。福岡女子商業高等学校の柴山翔太校長に話を伺った。

新しい価値観に触れ、ソリューションを考える

小論文という武器を手に、開拓者となった女子高生たちがいる。その指南役が、福岡女子商業高等学校の柴山翔太校長だ。同氏が着任して小論文を指導したところ、前年度は0だったのが、20人もの国公立大学合格者を出したのだ。こうした改革により、福岡女子商業高校ではそれまでは定員割れの100人を切る新入生の数が、今年度は217人まで増加した。少子化の時代、多くの私立高校で生徒の確保が喫緊の課題のなか、柴山氏の手腕を羨望のまなざしで見る教育関係者は多いだろう。

 

「少子化は教育現場にとっては差し迫った課題でもあります。幼稚園ではすでにその問題に直面しているし、高校でもあと数年後にやってくる。ただそれに揺さぶられること、『生徒を集めるためにいい学校を作ろう』とするのは、違うのではと思います」(柴山氏、以下同)。

 

柴山氏は「今後の日本に関して、教育に期待されている方も多いと思う。そんな中、学校同士争うのではなく、協働していくことが求められるのでは」と指摘する。例えば学校間で連携し、九州の高校生が東京の高校に通う「国内留学」の仕組みを導入したり、またそれを海外の学校と行ったりすることも一案だと語る。

 

「こうした新たな取り組みをするためにも、社会とシームレスにつながっている学校でいたいとも思っています。だからいま福岡女子商業高校では、外部の方に積極的にお声がけして講演などをしてもらっています。関わってくれる方々はさまざまで、弁護士や起業家、街づくりに取り組んでいる方、ほかにはフラワーアレンジメントの先生なども。生徒たちも、そして先生も、新しい価値観に触れることで社会について考え、行動できるきっかけになればと思っています」。

こうした刺激に触れ、生徒たちは社会的な課題を知り、そしてそれについてのソリューションを考える。一例として、学校にある食堂をテーマにしたこともあったという。食堂が売り上げを増やすには、値段やメニューなどをどうしたらいいかを授業内でアンケートをとったのだ。その結果を集約して実際に食堂の関係者に渡し、現在改善を求めているという。教科書を超えた実践の場で、福岡女子商業高校の生徒たちは学んでいる。

高校生の可能性を地域で活かす

こうした生徒たちの学びは、地域とも密接につながっている。同校の伝統的なイベントとして「女子商マルシェ」がある。これは「JKが学校を“市場”に変える二日間」と題した同校のビジネス教育の集大成で、店舗経営の実習をする場だ。2022年は校内に40店舗が出展、地域を中心とした企業と学生が協働し1万人を超える来場者が集った。コロナ禍で2年開催できなかった「女子商マルシェ」をアップデートするために、開催前には初のクラウドファンディングも実施、100万円を超える支援金も得ている。

「高校生は可能性を秘めています。しかも本校だけで約500人の生徒がいて、まとまると非常に大きなパワーになります。生徒たちは学びの一環として、地域の課題を解決することも。例えば学校のある那珂川市はやまももが特産品なのですが、人気がなくなってきているという課題があります。それに対し、生徒たちは企業とコラボレーションして商品開発をしたり、その魅力を発信したりという活動をしています。高校生が地域と関わっていくことで地域に貢献し、新しい可能性が生まれているのです」。

その意味でも地方はおもしろいと思うと柴山氏は言う。「東京は多様な文化に触れられるし、塾など偏差値を上げる場は多い。一方で地方は直近の課題が多く、ダイナミックに探求型学習ができる場があります。地方では高校生の力をいかせる場も多く、未来はあると感じています」。

 

こうした課題解決に、デジタル化を推進しているのも商業高校らしい特徴だ。同校の「キカクブ」というユニークな部活動では生徒たちが主体となってSNSの企画、コンテンツ制作を行う。キカクブの活躍によりTikTokのフォロワーは3万人を超え、知名度もアップした。

 

こうした取り組みに対し、若い世代のリアルな声を聴きたい企業からのオファーが絶えない。ATSUGIは福岡女子商業高等学校と共同開発で下着の上に履く「カバパン」を発売した。さらに「マーケティングラボ」という部活では、企業とタッグを組み、ECサイトの立ち上げなども企画している。また最近では「AI部」も立ち上がったという。AI部は単体での活動はもちろん、ほかの部活などとの協働も一案だという。一例としてバスケットボール部とAI部がタッグを組んで、シュートが入らない理由をAIで分析、可視化するなどの取り組みも考えられると柴山氏は語る。

重要なのは、自分で考え、動ける人になること

実際、高校生と毎日対峙していて、彼女たちは未来についてどう考え、どう感じているのだろうか。そしてそれに対し柴山氏は教育者としてどう向き合っているのだろうか。

 

「小論文の指導の中に、2030年問題や少子高齢化の問題などもよく出てきます。こうしたテーマを聞くと生徒は顔が曇ることもありますが、本当にそうなのか? と問いかけることも重要だと思っています。例えば少子高齢化については、支える側と支えられる側に分けて語られることが多いですが、本当に年齢で簡単に区切れるものなのでしょうか。単に若者と高齢者に分けて考えるのではなく、もっと自助ができる範囲があるのではと問いかけてみると、高校生たちも考えをめぐらす。だからこそ課題を見つけてそれを掘り下げ、解決法を考えるという『自分で考えて動ける人になる』という教育は、今後も非常に大事だと思っています」。

 

若者はいつの時代も可能性を秘めている。それをどう伸ばすか、そして彼らがどんな未来を生み出すかは、教育者、そしてわれわれ大人が鍵を握っているのかもしれない。

柴山翔太

Shota Shibayama

私立福岡女子商業高等学校校長

1990年北海道砂川市生まれ。 国語科の教師として4つの私立高校を経験後、同校に常勤講師として赴任。赴任1年目で進学指導、小論文教育により国公立大の合格者をゼロから20人に増やす。30歳で主任や部長職、教頭の経験もないまま校長に抜擢される。校長就任後はさまざまな学校改革を実施、生徒による新制服デザインや修学旅行プランニングなど新たな取り組みを行う。「きみが校長をやればいい 1年で国公立大合格者を0から20名にした定員割れ私立女子商業高校の挑戦」(日本能率協会マネジメントセンター)が初の著書となる。

  • 公式Facebookページ

取材:松岡絵里

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