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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

「ソーシャルメディアの拡散性」に先回り。生成AIによるネットリスク対策

インプットされたデータから適切な回答を探し提示するのがこれまでのAIだが、昨今はChatGPTのように、インプットデータを活用してAI自らがオリジナルデータを生成する「生成AI」なるものに進化している。革新的な技術は経済活動に活用できる反面、文章や画像をも操れる生成AIによるフェイクニュースがネット上に溢れかえるなどのリスクも否めない。生成AIによる独り歩きの発信も、可能になりはじめているのだ。

 

そうやって高度なAI頭脳がネット界に浸透していく中で、私たちが備えておくべきAIリテラシーとは。今回話を伺ったのは、デジタルエコノミー特化のカスタマーサクセスソリューション・プロバイダーであるアディッシュ株式会社の代表取締役・江戸浩樹氏。企業のリスク対策や教育の現場におけるネットリテラシー講座を積極的に行い、それに付随したサービスを提供している。

ネット上のリスク対策は企業成長には必要不可欠

ネット上のコミュニケーションサービスやSNSが多様化する一方で、今までにない問題を生み、それが社会問題のような大きな課題に発展することもある。それを防ぎ「ネット上を居心地のよい場所にする」サービスを提供しているのが、アディッシュ株式会社。

 

「私たちはスタートアップのカスタマーサクセス支援をミッションに、提供するサービスを『グロース支援』と『アダプション支援』に分けています。グロース支援は主に成長過程のスタートアップのフォローアップで、アダプション支援は主にネット上でのリスク対策のフォローアップです。双方とも企業が成長していく上で、欠かせない要素となります」(江戸氏、以下同)

 

今回のテーマで取り上げるサービスは、アダプション支援にあたる。SNSや掲示板へのコメントの投稿監視代行やリスク対策をする「インターネットモニタリング」(※2024年「MONI(モニ)」へリブランディング予定)、SNS投稿前にAIが問題投稿を検知し再考を促す「matte(マッテ)」、炎上対策とともにeラーニングコンテンツで社内ネットリテラシーの向上を計る「Pazu(パズー)」といくつかのサービスを展開。

「ネット上で起こる問題を乗り越えていくには、当然ネットリテラシーが高いほうがいい。モニタリングにプラスして、個人のリテラシーが高くなることが問題解決に繋がります」

 

企業が成長にするにおいて、ネットに流れる情報を正しいものへとコントロールすることは、この時代には必要不可欠なスキルなのだ。

SNS/AIリテラシーの向上で適切な情報を把握

サービスを導入する企業の業種はさまざま。だが、どんな業種においてもソーシャルメディアを使いこなす上で重要な情報を適切に理解する「ソーシャルメディアリテラシー」は重要となる。とくに企業が対応すべきは、炎上対策やポリティカルコレクトネスの部分という。

企業向けリスク対策セミナーでは、バイトテロやコロナデマなど、会社の名前を出された炎上事例にはどういったものがあるか、炎上に伴う企業側の被害額の一例などの話をします。拡散系だけでなく、自社のアカウントで発信する場合は、特定の要素を持った人々やグループに不快感や不利益を与えないための対策『ポリティカルコレクトネス』の知識も必要となります」

 

例えば、バイトテロといった炎上は継続的に発生しており、度がすぎると株価下落や顧客離れなど、企業の社会的ダメージが避けられない。炎上に遭った場合の企業の負担想定費用は、危機管理コンサルティング60〜100万円、信頼回復広告1,000〜3,000万円、記者会見関連3,000〜5,000万円ともなり(※アディッシュ調べ)、大きな痛手だ。

 

コロナデマなどのフェイクニュースに関しては、情報を受け取る側のリテラシーの高さにもよる。私たち生活者が備えておくべきリテラシーとは、どんなことなのだろうか。

 

「難しい問題ですね。フェイクニュースはネット社会の今に始まったことではなく、昔から一定数あるものでした。ただ、SNSが怖いのは『拡散性が高いこと』なんです。個人レベルでの発信ができる上に、AIで写真の合成もできる時代。正しい情報を振り分けるには発信元や引用元の確実性をサーチするなどですが、現代はフェイクかどうか正直見分けがつかないレベルのものも多いです。そういった現状を知ることが、まず一歩だと思います」

 

ネットモニタリングサービスがより浸透すれば、企業側としては不利益となるフェイクニュースを効率的に取り締まることができる。そのように発信側でコントロールしつつ、受信側では情報の取捨選択をできるよう、SNSやAIに対するリテラシーを高めておく必要がある。

SNSの拡散性でより情報の分断化が進んでいく

江戸氏が描く、少し先の未来と必要なAIリテラシーとはどんなことなのか。

 

「刻一刻と変わっているので少し先の未来も予測はつかないですが、情報の『分断化』はより大きくなるんだろうなという印象です。例えば一つのニュースがあったとして、その発信方法や解釈のされ方はより多角的になる。自分の興味関心の近しいグループの中で繰り広げられる意見が、コアになっていく。同じニュースでも、紐解く角度によってぜんぜん違うものとなります。属する世界の視点だけだと、個人としてはある意味居心地はいいでしょうが……。情報の正しさが問われる時代に、よりなっていくと思います」

 

同じニュースでも受け取る界隈によっては、攻撃的なものになることもある。そうなると情報の真偽がぼやけてしまい、少し危険でもある。そういったことを阻止するのは、難しいのだろうか。

 

「情報が過多すぎて。何かできるとすれば、自分が普段属しているコミュニティとは違う情報も入れるという意識を各人が持つことですね。日本国内だけでなく、世界が報道する情報を見に行くとか。あとはやはり、リテラシーを高めることです。SNSやAIの世界で何が起こっているかを知ることが、まずリテラシーを高める第一歩。ただ、人は自分が興味関心のあるコミュニティに属しがちなので、なかなか難しい部分もあるのかもしれませんが……」

 

近い未来では文章や画像をも操れる生成AIがより当たり前になり、SNS上にはAIのつぶやきがもっと増えるだろうという予測もされている。特に企業アカウントなどは、そうなっていくとか。AIを使うと情報発信が手軽になり、効率的になるからだ。

 

「2030年では、そういった光景がもはや当たり前になっていると思います。AIに発信をまかせれば劇的にコストも下げられますし、投稿が多い方が当然インプレッションも上がります。ひとによる発信よりも、生成AIによる発信のほうが多くなるくらいのテクノロジーの高まりは感じます」

 

「ソーシャルメディアの拡散性」の勢いは大きくなっていく一方のように思うが、このまま加速し続けるのだろうか。

 

「スマホの次にあたる何かが出てきた場合は、またガラッと変わる可能性があるかもしれません。例えば、メタバースを操るツールとか。みんなが使う情報ツールの基盤が変わったときにはまた違ったものが大きく広がるでしょうが、2030年はまだそのフェーズではないでしょうね」

 

SNSがどんどん進化し、より情報の「分断化」が起こっていく。いくつものコミュニティに属することも当たり前になる。その中で私たちが念頭に置くべきは、視点が偏りすぎていないかということ。そのためにもSNSやAIの世界で何が起こっているかを常に追っておくことが肝となるだろう。 

江戸浩樹

Hiroki Edo

アディッシュ株式会社 代表取締役

2004年に株式会社ガイアックス入社後、インターネットモニタリング事業、学校非公式サイト対策事業、ソーシャルアプリサポート事業を立ち上げる。これら3事業を承継し、2014年にアディッシュ株式会社を設立、代表取締役に就任。自民党主催によるネット上の誹謗中傷等対策小委員会にて、「インターネット上の誹謗中傷対策における現状と課題」をテーマに講演(2022年)。一般財団法人全国SNSカウンセリング協議会理事。現在、カスタマーサクセスによるスタートアップの成長支援事業を拡大。東京大学農学部生命化学・工学専修卒。

  • 公式Facebookページ

取材:松崎愛香

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