ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

学生のSNSいじめを生成AIで救う。「義務教育にAIリテラシー授業を」

学生の「SNSいじめ」が増加の一途だという。低年齢からスマホを持ち、SNSで誰もが自由に発信できるようになった現代では、グループから特定の生徒を仲間外れにしたり、周りとの比較で疎外感を感じて自分を追い込む例も少なくない。とはいえ、SNSの浸透は勢いを増す一方、このSNSの波をシステムでパトロールし、児童生徒を見守り、社会へ提案するサービスを提供する企業がある。

 

それが、デジタルエコノミー特化のカスタマーサクセスソリューション・プロバイダーであるアディッシュ株式会社。デジタルエコノミーのクライアントは、企業だけではない。デジタルネイティブと呼ばれる世代である、現代の学生もターゲットだ。彼らが健全にインターネットやソーシャルメディアを活用できるようサービスを提供する、同社代表取締役・江戸浩樹氏に話を聞いた。

児童生徒からの連絡によりクローズドな場所の声を集める

デジタルエコノミー特化のカスタマーサクセスソリューション・プロバイダーとして、主にスタートアップ企業のカスタマーサクセス支援を行うのが、アディッシュ株式会社。サービスは対企業だけでなく、教育の分野にも活用されている。それが、学校・自治体向けのネットいじめ対策サービス「スクールガーディアン」。

 

「企業向けサービスはどちらかというと発信ベースでモニタリングをする例が多いですが、学校向けサービスは受信ベースのサービスが主です。児童や生徒は、被害を受けてはいけないステークホルダーなのです」(江戸氏、以下同)

 

2021年度、小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめ認知件数は615,351件(前年度517,163件)であり、前年度に比べ98,188件(19.0%)増加している。児童生徒1,000人当たりの認知件数は、47.7件 (前年度 39.7件)。いじめ発見のきっかけは、「アンケート調査など学校の取り組みにより発見」が54.2%と最多だ(※2022年文科省による調査)。認知件数の増加は各関係機関が把握に努めているという一方で、いじめが増加しているという現状がある。

 

スクールガーディアンでは、子どもたちが健全にインターネットを使える環境を目指し、学校関係者を総合的にサポート。ネット上で個人情報流出の把握やネットいじめ早期発見対策をしている。システムとひとの目でネット上をパトロールする「スクールガーディアン」、児童生徒が匿名でいじめの目撃情報や悩みを連絡できるいじめ匿名連絡サイト「スクールサイン」、ソーシャルメディアの可能性と危険性など学校の目的にあわせた内容で提供する「ネットリテラシー講座」など、児童生徒の声からいじめの早期発見・解決に繋げている。

「ただ発見することはできても、ネットの表面下にあるクローズドのものまでは把握しきれません。そこで匿名の連絡サイト『スクールサイン』を活用。ネット上に公開されているものと児童生徒から連絡があるクローズドの情報と、両方併せて現状を把握できるようにしておくんです」

スクールガーディアン事業全体のサービス導入は、3,500校以上(※2022年6月時点)。うち「スクールサイン」導入校数は約400校(※2023年10月時点)。ネットリテラシー講座の実施回数は年200回以上と、ニーズの高まりは右肩上がり。公立私立は問わず、圧倒的に中学校・高等学校の割合が高いという。

 

「生徒におけるインターネットやSNSのトラブルが把握しきれていないという教職員の声と、周囲の目を気にしてスクールカウンセラーなどには相談しにくいという生徒を、私たちのようなサービスが介在することでマッチングできたらと思っています」

「身バレ」の危険性を知る。生徒向けのネットリテラシー講座

小学校・中学校・高等学校に向けて提供している「ネットリテラシー講座」。教職員や保護者に向けても行うが、生徒に向けたものが事例としては一番多いそう。

 

「そもそもインターネットって何? ソーシャルメディアって何? という基本的なところから始めます。そして、それが世界に公開されているものだということを強く啓発します。もはや周知の事実かもしれないですが、あえて講座を受けることで危機管理をもってもらう。中でも、SNSについては多くの時間を割きます。SNSを活用することで自分のアイデアを世の中に出していくことができるという良い側面と、起こりうるリスクの両面から説明します」

講演内容はクライアントの要望や校風、年齢によって都度アレンジされるというが、ネットストーキングを引き起こす「身バレ」についてはよく話すとか。知らずに個人情報を全世界に発信していることの怖さについては知っておくべきで、どういった行動がそれにあたるかも把握すべきという。

「ネットやSNSは、ある意味ツールです。ハサミや包丁と同じなんですね。包丁は調理に使う文明の利器ですが、人を傷つけることもできる。ネットやSNSも同様で、コミュニケーションの場として楽しめる一方で、それを使って人や自分を傷つけることもできるんです」

 

江戸氏がこういった事業を始めるきっかけの一つに、SNS上での出会いから青少年が性被害に遭うことが社会問題化したという背景があった。

 

「新しいテクノロジーやサービスには、必ずといっていいほど新しい闇があります。その闇を解決するサービスが提供できたら」

 

時代によって、ネットリテラシーも更新されていく。最近では、生成AIをテーマにしたネットリテラシー講座も行っている。講座内容は、生成AIの仕組み、生成AIの可能性・利便性、生成AI利用における注意点、生成AIとの付き合い方など。デジタルネイティブ世代だからこそ、最新のリテラシーを身につけてしなやかに対応する術を心得ておく必要がある。

オンライン上でのパトロールでリアルないじめを防げるのか

スクールガーディアンにおけるパトロールの中で、どんな事例があったのだろうか。イメージしやすいような具体例を聞いてみた。

 

「例えば、ネット上に書き込まれる自殺予告などがあります。その場合は学校と連携し、警察に連絡するという段取りを踏みます」

 

関連のある投稿でオープンなアカウントは即解析にまわすと同時に、「スクールサイン」でも有効な情報がある場合も多いとか。

 

「自殺を防いだ事例はいくつもあります。いじめの問題はプライバシーに関わることでもあるので踏み込んだ調査になりますが、自殺予告などは、すぐ学校に動いていただきました。実際に、ネットリテラシー講座を生徒指導に行った上で、いじめの問題が縮小したという声もあります」

 

一番の根源は、「ソーシャルメディアの拡散性」だと江戸氏は語る。

 

「これまではメディアなどにある一定の大きい集合体でしかなし得なかった『発信』を、個人レベルでできるようになってきています。いじめ問題自体は、昔からあるものです。それがネットという不特定多数がベースになってしまっているので、私たちのようなサービスを新しく介在させる必要がある。ソーシャルメディアの拡散性や『友達からの情報は信用しやすい』というバイアスが、事を大きくすることもあります。講座では、そういったことも含めて指導をしています」

 

すぐにでも義務教育にAIリテラシー授業を組み込むべき

 2030年に向けて、AIはどんどん発展の一途を辿っていくだろう。分母が大きくなれば当然、SNSいじめの件数がさらに右肩上がりになることも予想の範囲内だ。学校の現場は、どう対処するのが適切なのか。

 

「同質なコミュニティにおいては、意見が偏りがち。だからこそ、積極的にリテラシー教育をするべきだと思います。メディアリテラシーの授業は大学などではありますが、もはや義務教育に導入することが、これからの時代は自然ではないでしょうか」

 

ソーシャルメディアの拡散性により加速するいじめを防ぐには、システムやAIの力も借りつつでないと、もはや間に合わない段階に来ているのかもしれない。その特性を上手に利用しながら、人間対人間の問題を解決していくというフェーズにさしかかっているのだ。

 

江戸浩樹

Hiroki Edo

アディッシュ株式会社 代表取締役

2004年に株式会社ガイアックス入社後、インターネットモニタリング事業、学校非公式サイト対策事業、ソーシャルアプリサポート事業を立ち上げる。これら3事業を承継し、2014年にアディッシュ株式会社を設立、代表取締役に就任。自民党主催によるネット上の誹謗中傷等対策小委員会にて、「インターネット上の誹謗中傷対策における現状と課題」をテーマに講演(2022年)。一般財団法人全国SNSカウンセリング協議会理事。現在、カスタマーサクセスによるスタートアップの成長支援事業を拡大。東京大学農学部生命化学・工学専修卒。

  • 公式Facebookページ

取材:松崎愛香

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