NEWS

ENILNO いろんなオンラインの向こう側

メニュー サイト内検索
閉じる

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

自宅にいながらコンビニの仕事「時給もUPする」ロボット工学者・石黒浩氏が描く2030年の世界

2021年には4兆2,640億円だったメタバースの市場規模は、2030年には78兆8,705億円まで拡大すると予測されている(総務省の情報通信白書による)。メタバースの世界に欠かせないアバターの存在も、拡がりを見せていくのは間違いなさそうだ。

 

そんなアバターは、あらゆる分野のルールや前提が変わり過去の常識が通用しなくなると言われる2030年には、どのように進化するのだろうか。タレントのマツコ・デラックス氏やデジタル大臣・河野太郎氏の例でお馴染みの、自分そっくりなロボット「ジェミノイド」を開発したロボット工学者・石黒浩氏に話を聞いた。

2030年には、2人に1人はアバターを活用する時代に

VTuberが、徐々に市民権を得はじめた。2030年の時点では、もはや当たり前になるのだろう。2030年のアバターの利用状況について石黒氏に聞くと、「2人に1人ぐらいは1回ぐらいアバター使っている時代がくるといいなとは思っている」とのこと。

 

「実際のところはどうなるかは未知ですが、そういう時代はもう始まっているとは思います。スマホは2〜3年でほとんどの人が持つようになり、あっという間に普及しました。なかなか予測が難しいですけど、アバターを日常に活用する世界が想像以上に早くくる可能性はあると思います」

 

いまでも既に、LINEやFacebook上で使うなど、アバターは身近なところにある。ほとんどのSNSにはアバター機能がついているため、SNSユーザーの大半が自分のアバターを作ってみたことがあるのではないだろうか。2030年の未来には、アバターの価値が変わり、もっと社会活動にダイレクトに繋がるものとして利用されていくと、石黒氏は予測する。

 

「さらに1人が1アバターに限定されることなく、いろいろなアバターを使い分けることで、さまざまなフィールドにおいて社会生活をスムーズにまわしていくことができる世の中になるでしょうね」

 

AIの脅威などとはよくいったものだが、脅威ではなく、ひとと共存することにおいて私たちはその便利さをより享受し、自然なかたちで生活に取り入れていくのだ。それが、2030年のあるべき姿といえるだろう。

コンビニは「すべて自動化」。無人コンビニが増える

2030年の未来ではアバターはメタバースを飛び出し、実世界にもどんどん浸透していると語る石黒氏。私たちの具体的な生活圏内においては、どのような変化が起こっていると想像できるのだろうか。聞いてみた。

 

「例えばコンビニや薬局は、ほとんどが自動化されてアバターが商品を売るような世界になると思います。日本のコンビニはサービスがものすごく複雑なので、完全に自動化できない。そこで、ローソンの一部店舗に実験的にアバターを入れています」

 

石黒氏が代表を務めるAVITA(アビータ)株式会社のプロジェクトの一つであるアバターオンライン接客サービス「AVACOM(アバコム)」が、一部ローソン店舗に導入されている。複雑なサービスが必要な場合は、遠隔操作で対応するというものだ。

現在では1つのお店で複数名働いていたりするが、AVACOMが一般化したらスタッフは1人でも事足りる。1人が複数名分の仕事をまわせるからだ。しかも、遠隔で。コンビニにいなくても、コンビニの店員ができるというわけだ。

 

「アバターを使って1人で複数の店舗をまわすことで、時給もどんどん上がります。コンビニのアルバイトで高収入を目指すことが可能になるのです」

さらに、カウンセラーや教師など「人の悩みを聞きながら対応するようなサービス」は、どんどんアバターに変わっていくだろう、と石黒氏。コロナ禍を経てリモート診察が少しずつ浸透してきているが、このムーブメントはもっと広がっていくという。

仕事がAIに置き換わっても、アバターの仕事は増える

働き方改革にも、アバターの介入がかなり影響してくる。「AIに仕事が置き換わる」ことで雇用が減ることを不安視する声もあるが、アバターにもこれと同様のことが言えるのだろうか。

 

「アバターは、AIではなく人です。人の身ひとつでは解決できない課題を、アバターは解決できます。高齢者も子育て中の人も、病気を抱える人も。働くのが難しい境遇にいる人がもっと自由に働くために、アバターが利用できる。新しい雇用の形ができあがります」

 

例えば、今では当たり前になったリモートワークもその延長線上にあるかもしれない。現場に行かなくても働くことができるというのは、大きな第一歩。自分の体をアバターに置き換えた上でもなんら支障なく業務を遂行できるとしたら、働く場所に可能性も増えるし、選択肢も拡がるだろう。社会的ミッションであるSDGsにも、アバターが活躍するシーンがいろいろと出てくる、と石黒氏は話す。

 

「気候変動や自然災害の現場へ立ち入ることが難しい場合も、『遠隔操作型のロボット』に指示を出して問題を解決することもできる場面があるでしょう。技術は、自然に立ち向かう札を与えてくれると思いますよ」

石黒氏は、2025年に開催予定の大阪・関西万博での共創プロジェクトによるシグネチャーパビリオン「いのちの未来」のプロデュースも行っている。ここでは、科学技術の発展により新たな可能性が拡がりゆく中で、住まい、街、健康、移動、仕事などさまざまな視点から50年後の社会といのちの在り方を考察。生まれたアイデアの一部が、パビリオン内の展示や未来シアターで発表されるという。万博開催期間は、CGアバターやロボットアバターを介して実会場を訪れることもできる仕掛けがあるそうだ。

石黒氏の話を伺ううちに、アバターのイメージが大きく変わった。アバターとは仮想現実だけに生きる仮の姿ではなく、もはや実世界にも存在ができる自分の姿。仮面を借りることによって、成し遂げやすい領域がある。それが特殊なことではなく、誰もが利活用するような時代に既になってきている。これからの技術拡張によりその領域がどんどん広がり、さらにひとが生きやすい未来になっていくのだろう。

石黒浩

Hiroshi Ishiguro

ロボット工学者

1963年、滋賀県生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻教授(大阪大学栄誉教授)、ATR石黒浩特別研究所・客員所長(ATRフェロー)。知能ロボットやアバターの研究開発に従事。人間酷似型ロボット「アンドロイド」研究の第一人者。2007(平成19)年に英Synectics社の「世界の100人の生きている天才」で日本人最高位の26位に選ばれる。2011年に大阪文化賞受賞。2025年に開催される大阪・関西万博の中心となるテーマ事業であるシグネチャーパビリオン「いのちの未来」をプロデュース。『アバターと矯正する未来社会』など著書多数。

新着記事

お問い合わせはこちら

CLIP 暮らしにリプする IT・インターネットをより楽しむためのエンターテイメント情報満載

Netflix FreaksはNetflixをとことん楽しむための情報メディア。Netflixの最新情報や厳選したおすすめ作品・レビューを紹介しています。

OPTAGE BUSINESS