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1話3分の短尺連続ドラマアプリ。「切り抜き動画」のバズりでクリエイターの後押しも

2022年12月にサービスを開始したショートドラマ配信アプリ「BUMP」が好調だ。アプリのダウンロード数は50万を超え、スタートアップ企業として数々の賞を受賞、注目を集めている。タイパを重視するZ世代に支持されているのは、1話3分という短尺の連続ドラマだ。その成長の理由を、プラットフォームの運営とコンテンツの制作、ともに手がけるemole株式会社の代表取締役社長である澤村直道氏に聞いた。

トイレの間にも楽しめる、手軽な超短尺ドラマ

ショートドラマ配信アプリ「BUMP」を運営するemole株式会社の代表取締役社長である澤村直道氏が起業を志したのは、中学生の頃。大学卒業後には様々なプロジェクトチームを結成するためのマッチングプラットフォームを開発、クラウドファンディングでの支援もあり、emoleを創業した。

 

「もともと好きなことを仲間と一緒に挑戦し、そこで生きていくという生き方をしたいと思っていました。仲間と一緒に共通目標を持ちながらいいものを作り、目標達成したい。さらに自分だけでなく、社会に出てからもそういう生き方ができる仕組みを作りたいと思ったんです」(澤村氏、以下同)

 

ただしユーザーは集まったものの、トラブルが発生して、1,000万円もの借金・未払いを負ってしまう。責務者との壮絶なやりとりなど、ジェットコースターに乗ったような2年間を過ごしたという。

 

澤村氏の底力は、そこで心が折れなかったこと。その後に手がけたYouTubeのプロデュースや短編映画の制作を通し、短い映像が持つポテンシャルに着目した。

 

ヒントとなったのは、漫画アプリである「LINEマンガ」や「ピッコマ」。これらのサービスはスマホをスクロールしながら短い時間で読める点が、タイパを重視するZ世代の心をつかんでいる。BUMPはそのドラマ版という位置づけで、手軽にサクサク楽しめるショートドラマを配信するビジネスモデルを構築していく。

 

「トイレに行くとき、ついスマホを見ませんか? 僕は見るんですが、そういう隙間時間に見られるドラマはこれまでなかったんです」

 

YouTubeやTikTokなど短尺で楽しめる動画が活況だが、そこにはドラマというジャンルはなかった。ドラマは作り込みが必要で、製作に時間も手間もかかるのがその理由のひとつだろう。

息の長い成長の要因のひとつ、切り抜き動画

こうしてブルーオーシャンに漕ぎ出した澤村氏率いるショートドラマ配信アプリ「BUMP」。そこには1回3分、全10話程度の短尺ドラマが並ぶ。各作品の3話までは無料で視聴が可能。4話以降は、1日に1話無料で視聴するか、広告を視聴して1日に3話まで無料視聴するか、1話あたり67円を課金して視聴することができる。

 

BUMPは順調に成長を続け、2023年9月には、総額約2.6億円の資金調達を実施。アプリダウンロード数はその時点で50万DLを超え、各SNSで公開するPR動画の総再生回数は4.6億回まで増加した。さらに日経クロストレンド「未来の市場をつくる100社」に選出されたり、また日経トレンディ「未来をつくるスタートアップ大賞2023」で優秀賞を受賞したりと、そのビジネスと成長ぶりへの評価も高い。

「ただ最初から順調ではありませんでした。こうしたサービスはリリース時の初動が重要ですが、2022年12月28日のリリース時にアプリの承認がおりておらずダウンロードできないという事故もあって『終わったかも……』と思いましたね。お正月返上で作業し、元旦の早朝にドラマの切り抜き動画をTikTokで配信したところ100万再生を超え、そこからインストール数が伸びました。その後もじわじわとダウンロード数が伸びていき、7月はピークに伸びました。その後、新規コンテンツがリリースできない時期もあり、一時的に下がると思っていましたが、想定外にじわじわと伸び続けました」

 

その成長の要因のひとつが、ドラマのシーンの切り抜き動画だ。近年、YouTubeやTikTokなどで「切り抜き」と言われる文化が生まれ、ヒットコンテンツの一部が切り抜き動画として拡散されるケースが増えている。その多くが非公式のもので、公式サイドは著作権保護の観点から頭を悩ませてきた。

 

一方でこうした切り抜き動画が拡散され、バズることで、コンテンツの知名度は上がっていく。だから最近では「公式の切り抜き」が配信されることも少なくない。BUMPも同様で、公式が切り抜きを発信するほか、アプリには切り抜き機能も備え、視聴者もSNSに自由に投稿できる。いわば「切り抜き推奨」の仕様になっている。

 

「ひとつのコンテンツがヒットしたとき、そこから切り抜ける本数が想定よりも多かったのが伸びていった理由かもしれません。10本のドラマで100本以上の切り抜き動画が作れ、そうすると3カ月以上毎日切り抜き動画を配信できる。3分のドラマが10話でも、コンテンツのライフタイムが長いんです。ドラマの配信から半年経っても、切り抜いた動画がバズることがあります」

切り抜き動画でバズらせ、クリエイターを支える

こうした公式切り抜き動画を配信する背景には、BUMPが従量課金制を採用しているというのもある。「課金ユーザーは当初想定していた以上に多い」と語る澤村氏。BUMPにおける収益の大部分はユーザーからの課金によるもので、広告収入より大きい。製作にあたってコストがかかるドラマというジャンルにおいて、マネタイズ化が確立、機能していることもBUMPの成長の要因のひとつだろう。

 

BUMPで得た作品ごとの収益の一部はクリエイターに還元され、制作原価の回収前後で報酬体系が異なる。つまりドラマは見られれば見られるほどクリエイターに還元が多くなる。

 

民放など多くのドラマにおいて、役者や監督など制作陣は、ギャランティ、すなわち仕事ごとの単価で働くことが多い。一方BUMPであれば、ヒットするほどその作品の利益が制作陣に還元される。いわば漫画家や作家の印税のようなシステムがBUMPでは機能しているのだ。

 

「エンターテインメントの業界を見たとき、役者さんや制作陣といったクリエイターが不当に扱われることを目にすることもあり、課題と感じていました。BUMPでそうした課題を解決していき、BUMP発のクリエイターを増やしていくことを目指しています」

 

BUMPはこうしたクリエイターを後押しする活動の一環として、例えば創作した小説がBUMP配信の原作になるというプロジェクトも実施している。

制作も担当、短尺のコツとバズらせ術

もうひとつ特徴的なのが、BUMPというプラットフォームを運営する一方で、ドラマのコンテンツ制作も担うこと。オフィスにスタジオを構え、澤村氏は12作品のエクゼクティブ・プロデューサーも務める。

 

「サービスの開始時は本当に大変でしたね。コンテンツとプラットフォーム、ふたつのスタートアップを立ち上げるような感じでした」

 

制作を担っているからこそ、一般的な尺のドラマとは違う、超短尺ならではの制作のコツも心得ている。

 

「例えば映画なら、来る人は2時間ぐらいの映像を見るつもりで来ています。最初の10分が背景説明などで多少盛り上がらなくても、お客さんは見てくれます。一方で、ショート動画は最初の数秒で面白くないと判断されるとすぐに離脱されてしまうので、BUMPの場合、3分で次に続くものを見せるようにする工夫を盛り込んでいます」

 

実際見ていると、次々次……とクリックしていきたくなる、不倫ものや復讐ものなどスリリングな作品が多い。

 

「ここのシーンの切り抜きがバズるだろうな……という感覚はだいぶわかってきました。一方で視聴者さんからのコメントを見ていると、『こんな細かいところまで見ているんだ!』と驚くこともあります」

 

この日も撮影現場からインタビューに参加してくれた澤村氏。

 

「もともと映像の世界の人間ではないので、『普通だったらこういう作り方をしない』というところにもチャレンジすることができています。製作にかかるコストの削減方法もそうですし、キャスティングもです。当初はそれこそSNS経由で『出てくれませんか?』とオファーして断わられることもありましたが、コンテンツが増えてくるにつれ、クリエイターの方も集まってくれるようになってきました。撮影はどこか文化祭のような雰囲気で楽しいです」

 

楽しみながら、BUMPのコンテンツは着々と厚みを増してきている。2024年2月には放送作家の鈴木おさむ氏と、Webtoonスタジオ「SORAJIMA」がタッグを組んで制作したタテ読みのマンガ作品『愛の掛け惨(あいのかけざん)』の実写ショートドラマを独占配信する。

目標はNetflixのように、世界的なプラットフォームに成長すること。「世界の70億人以上にBUMPを楽しんでもらいたい。まずは韓国、台湾に展開をしようと思っています」

 

「好きなことに仲間と挑戦できる世界へ」を、今日も澤村氏は実現している。

澤村直道

Naomichi Sawamura

emole株式会社 代表取締役社長

1994年、北海道生まれ。1話3分のショートドラマ配信アプリ“BUMP”を立ち上げ。アプリの設計、UI/UXデザインとオリジナルコンテンツ12作品のエグゼクティブプロデューサーを務める。ヒットショートドラマ『今日も浮つく、あなたは燃える』のTikTok総再生数は、3億再生を突破。ベンチャーキャピタルから累計3億円以上の資金調達を実施する。

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