NEWS

ENILNO いろんなオンラインの向こう側

メニュー サイト内検索
閉じる

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

「介護は育成よりも適正」介護業界に集うボディビルダーのオンラインマッチング

“マッチョだらけの介護施設”として、巷で話題のHIDAMARI GROUP。東海地方で20の介護福祉事業所を運営し、いわゆる「マッチョ」な人材が介護士として在籍。「マッチョ」と「介護士」という、一見交わることがなさそうな二つの要素を掛け合わせ、介護業界に新しい風を吹かせている。

 

 

現在は、愛知県一宮市を中心に、障害児、障害者、高齢者の介護事業を運営。社長である丹羽悠介氏は、自らを「福祉業界の異端児」と名乗る。公式サイトを見に行くと、洗練されたイメージ。「介護」「福祉」にまつわるイメージを塗り替え続け、業界を盛り上げる先にあるビジョンとは? 丹羽氏に話を聞いた。

「介護」が持つイメージを「マッチョ」で一新

もとは美容師であったという丹羽氏。あるきっかけから介護の世界に初めて触れた折に感じたのは、「人の心を動かす素晴らしい仕事であるにも関わらずイメージが悪い」こと。そこにポテンシャルを感じ、14年前に起業。「介護」や「福祉」というもののイメージを変えることから着手した。まずはなぜそういった現状があるのかについて、思考を巡らせた。

 

「福祉のイメージが対価を求めてはいけない『ボランティア』の要素が強いことが、『大変』というイメージに繋がるのでは、と思ったんです。それに追い討ちをかけるように、介護業界における離職などがメディアでクローズアップされている。一方で僕自身も全く興味がなかった介護の世界に触れてみると、楽しさも将来性もある。そんな『介護のリアル』を分かってもらった上できちんとした対価を支払えば、人が集まるのではと思いました」(丹羽氏、以下同)。

人材はどうするべきか。そこで丹羽氏が注目したのが、職業として確立していないボディビルダーや、人材が飽和状態と言われるフィットネス業界に生息する、いわゆる「マッチョ」達。彼らには体力があるため、介護シーンで体を預ける利用者への安心感に繋がる。体づくりをストイックにしているためマメな性格であることが多く、気遣いができる人が多い。多面的な要素でマッチョたちこそが、介護利用者の求めるものを兼ね備えていると見据えた。

「といっても、福祉の良さを説くだけでは彼らの心を動かせないと思いました。まずは実際に福祉に触れてもらい『意外に面白いじゃん』という感覚を味わい、それを発信してもらう。その連鎖が介護の暗いイメージを明るく変えてくれると思いました。来て欲しい人材が何を心理的に求めているかを分析し、福祉に興味がない人にリーチするような取り組みをビジュアル化してSNSで積極的に発信。その上でもっと彼らの笑顔が膨らむように、社内の制度を工夫していきました」

 

そこで社内でのフィットネス実業団「7SEAS(セブンシーズ)」を立ち上げ、彼らがトレーニングに集中できる環境が整う福利厚生を実装。ジムの利用費、マッサージ利用費、大会エントリー出場費、遠征費、プロテインサプリメント費を支給し、8時間労働のうち6時間は介護業務、2時間はトレーニングができる環境を整えた。そうすることで、彼らは介護士という仕事と、夢であるコンテストへの入賞、どちらも両立できる。彼らの存在は、おのずと介護業界のイメージ刷新にも効果を発揮した。

いい人材を集めるために、育成より適性を優先

マッチョ達が介護士として現場で活躍することは、業界の人材不足問題と介護業界のイメージ刷新という、2つの課題を解決できる一歩になる。とはいえ、マッチョと介護士を両立することは、容易でないはず。気になる人材育成について聞いてみた。

「もちろん大変です。マッチョを介護士に育てるわけですから。ただ、最近行き着いた結論が一つあります。介護士という仕事が続き現場で活躍してくれる人材は、育成の先に育った人材というより、もとの性格がマッチしているケースが多い。介護の仕事では、人に寄り添う適性の部分が大きいという気づきがありました。そうなると、大切なのは人材育成というよりも、採用基準となります。リーダーシップを発揮できるか、やりがいを感じられるかは、外野がいくら唱えても本人でなければ気づかないことですから」

 

いい人材を集めるために、採用基準を上げることに力を注ぐ。それを経営スタイルにも反映させた。

 

「福祉=ボランティア、給料が低いといったイメージは、経営者が介護業界のビジネスモデルを見直していないところにも起因しています。介護業界は、労働集約型です。一店舗のみの経営では利益に上限があり、その中からでは人件費に当てられる限界があります。逆にいうと多店舗展開であれば、仕事の割にあった対価を支払うことが可能になる。そこに踏み切っていくという意味でも、多店舗経営を大きな軸としています」

その経営スタイルにおいて欠かせないのが、オンラインの存在だと丹羽氏は言う。現在は東海地方が中心だが、札幌、茨城、広島、岡山と、どんどんエリアを拡充している。そこで働く人材が同じビジョンに向かってリアルに連携を取れるのが、オンラインを使ったスタッフ間のコミュニケーション。

 

「デジタルを駆使した多店舗展開の上に、高い採用基準が成り立っていると思います。人材育成では越えられない壁を、採用基準の底上げで賄う。それこそが今、福祉業界がしなくてはならないことだと、私は思っています」

業界初のマッチングサービスをこの夏より始動

介護士の充実をもって、介護業界の充実に繋げる。そんなミッションのもと歩んできたHIDAMARI GROUP。さらにその先には、利用者の人生の喜びに繋げるべく「『なりたい自分』を諦めなくていい世界にする」という大きなビジョンがある。そのために、今新たに取り組んでいるのが、利用者と事業所と相談支援専門員(以下相談員と表記)のマッチングWebサービスだ。

 

「介護業界には、高齢者であればケアマネさんに、障害分野であれば相談員さんにお願いするという、昔からの図式があります。そのケアマネさんや相談員さんがどのように事業所を探すかというと、地域の事業所を順番に電話してあたるとか、知っている事業所を紹介するというレベル感、範囲感。すごくアナログなんですよ。そうして紹介された事業所が、果たして利用者にとって最適な場所なのか。そこに疑問を感じていました」

 

実際にHIDAMARI GROUPが運営する障害者グループホーム「NOIE(ノイエ)」や障害者シェアハウス「THE C(ザ・シー)」には、他県から入居する利用者も多く、入居するために引越しをする利用者の例もあるという。そういった利用者からは「ここにして本当によかった」といった、満足の声が上がっている。それこそが、自然。こういったマッチングを、もっと広められたら。そんな思いから、全国の事業所と利用者と相談員をオンライン上でマッチングするサービスを、この夏よりスタートさせるという。

「事業所は『家の近所であればいい』『とにかく見てくれればいい』というフェーズは、もう終わり。人々の幸せに繋がることこそが、福祉の本来の姿です。『どこでもいい』『誰でもいい』というのは、福祉ではないと思っています」

 

利用者の本当の意味での人生の充実を目指す、それこそがHIDAMARI GROUPの考えの根幹であり、ビジョンだという。

「スポーツも、ライバルがいると燃えるじゃないですか。それと一緒で、私たちがより大きな結果を出し認知を広げることで、介護業界の活性化に繋げられたら。今回はじめるマッチングサービスも、介護業界における当たり前のインフラになっていく。それが私たちの展望です」

 

「介護」「福祉」のイメージがポジティブなものに変わり、人材不足が解消され、働き手も利用者も気持ちよく介護施設を利用できる未来。それこそがHIDAMARI GROUPの企業理念である「世界中の人の人生を応援する」の実現だ。丹羽氏より話を伺った前と後では、介護業界へのイメージがハッピーなものへと大きく変わった。

丹羽悠介

Yusuke Niwa

株式会社ビジョナリー代表取締役

1985年、岐阜県生まれ。美容師や営業を経て、23歳で株式会社ビジョナリーを設立。「筋肉介護士」「マッチョ過ぎる介護福祉士」として、愛知県一宮市を中心に障害者、高齢者への介護事業を展開。福祉業界をカッコいいイメージにすることをミッションとし、従業員数30人の会社を3年で120人に成長させる。

新着記事

お問い合わせはこちら

CLIP 暮らしにリプする IT・インターネットをより楽しむためのエンターテイメント情報満載

Netflix FreaksはNetflixをとことん楽しむための情報メディア。Netflixの最新情報や厳選したおすすめ作品・レビューを紹介しています。

OPTAGE BUSINESS