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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

「『介護の仕事はロボットに奪われない』は違う」福祉業界の異端児が描く2030年の業界

あらゆる分野のルールや前提が変わり、過去の常識が通用しなくなると言われる2030年。そう遠くない未来に各業界はどんな変貌を遂げ、私たちの生活はどのように変わっていくのか。今回は、自らを「福祉業界の異端児」と名乗る「HIDAMARI GROUP(ひだまりグループ)」社長・丹羽悠介氏に、2030年の介護業界の動向について話を聞いた。

多店舗展開で進む、社内DXとリスキリング

これからの介護業界を活性化させるためには介護士の労働環境を整え、満足いく対価を支払うべきだと語る丹羽氏。そのためには利益を確保すべく、多店舗展開に乗り出すことは必要不可欠と言う。現在、東海地方で20の介護福祉事業所を運営するHIDAMARI GROUPでは、それを実践すべく札幌、茨城、広島、岡山と次々とエリアを拡充。そのために欠かせないのが、スタッフ間のコミュニケーションツールとしてのデジタル導入だ。

 

「さらに今後も展開を拡大するにあたり、スタッフ全員が同じテーブルに乗った状態で業務をまわしていけるよう、オンラインを最大限に活用していきます。ミーティングはどの場所にいても対応できるよう、基本オンラインで。社内共有をよりスピーディにするために、Slackを活用。タレントパレットの導入も現在検討中です」(丹羽氏、以下同)。

2030年までに自動化によって雇用がどんどんと失われていくにあたり、新しいスキルを身につける、いわゆる「リスキリング」が重要になってくる。多店舗展開をベースとした経営により、人材を一つのところにとどまらせず新しい能力を開発していくことが重要だと語る。

 

「介護の仕事はルーティンワークが多くを占め、変化が多い時代にマッチしていない部分もあります。仕事に『飽き』を感じることも離職の一つの原因となっています。だからこそ多店舗展開や新しい施策をどんどん立ち上げ、社員に新しい環境を与える。異動と展開というのは、今後も意識的に継続していきます」

利用者やその家族においては、担当の介護士が固定されることを安心と思うケースも多い一方で、結局は介護士の「仕事への飽き」が離職に繋がりそれが叶わない。柔軟な現場の人材攪拌は、今の時代にマッチした考え方だという。実際に介護士からエンジニアやIT分野に転向したという「社内ジョブチェン」の事例もあり、社員の満足に繋がっているようだ。

現場ではリアルとテクノロジーの二分化が起こる

HIDAMARI GROUPでは運営サイドのデジタル導入、いわゆる「守りのDX」は徐々に浸透している現状だが、現場へのデジタル導入、いわゆる「攻めのDX」はどのように進んでいるのだろうか、聞いてみた。

 

「食事や入浴といった介助のシーンにおいては、これからはロボットやテクノロジーで解決できる時代になると予想します。『介護の現場仕事はロボットに奪われない』という意見もありますが、僕はそうは思いません。例えばトイレの介助。ウォシュレットを使うか介護士の手を借りるかどちらがいいかと問われたら、僕ならウォッシュレットを選びます。食事の介助にしても、自分の好きなタイミングでロボットを使うほうが、むしろ気が楽。介護の現場では、ロボットやテクノロジーの役目にシフトできる場面がたくさんあると思います」

 

2030年はバーチャルとリアルがより融合し、「もうひとりの自分」としてのデジタルな分身の存在が当たり前になるという説もある。介護現場においてのメタバースはどうだろうか。

 

「メタバースに関しては、もっとすごく先、もしくは介護の現場には必要ないのでは、と思っています。というのは、利用者さんにとって必要なのは、あくまでもリアルな人生の充実です。利用者さんの話を聞くと、人生の楽しみをあまり経験できていない方も多くいらっしゃいます。ですので私たち介護士ができることは、彼らが人生を楽しめるお手伝いをしてあげること。エンターテインメントの領域においては、人生の楽しみをいろいろ経験してきた人がメタバースの世界を楽しむほうが自然な流れかと思うので、介護業界においては、まだメタバースは遠い存在なのかなというのが僕の見解です」

実際、HIDAMARI GROUPが運営する障害者グループホーム「NOIE(ノイエ)」や障害者シェアハウス「THE C(ザ・シー)」では、利用者の希望に耳を澄ませ、それを実践する取り組みをしている。

「今までの例だと、東京に一緒に出向いたり、筋トレに興味がある方ならジムに行き一緒にトレーニングをしたり、自立して一人暮らしをするための支援を一緒に取り組んだり。『ひとりの人生』を盛り上げていくことを大切に考えています。そういった部分には、AIでは入っていけないでしょう」

だからこそ、介護士自らもたくさんの経験を積んでおく必要がある。採用基準を上げるという試みは、そういったことにも繋がる。

「食事や入浴の介助においては、ロボットやテクノロジーで解決していける未来がくるでしょう。そうなると『介護』のあるべき姿は、利用者さん自身が人生をもっと楽しめるよう、介護の手を離れられるよう、手助けをする。それこそが、介護士の仕事になると思うんです」

2030年への準備として若手を積極採用

人材確保が最大の課題とも言われる介護業界。その問題点は、2030年に向けてどう変わっていくのだろうか。丹羽氏の考えを聞いた。

「介護士の労働環境を変えていけば、人材確保の部分は良くなる風向きにあると思います。介護業界においてそれと同じぐらい解決しなければならない課題は、働き手の高齢化です。働き手が高齢になるほど、テクノロジーやDXの浸透が遅くなっていく。だからこそ私たちは、若手採用にこだわっています。単に人材を増やす目的としてだけではなく、2030年までに現場でテクノロジーを活用できる状態にしておけるかは、とても大事なことです」

デジタルネイティブ層を採用に巻き込むことは、DXの気運にも乗りつつ、介護のイメージをブラッシュアップさせることに繋がる。その上で現場においては、介助シーンはテクノロジー、利用者との深いコミュニケーションは介護士の仕事と棲み分けていく。そうすることで、より利用者の幸せに繋がる。それこそが福祉の本来の姿であり、その延長線上にある介護の未来も明るい。

丹羽悠介

Yusuke Niwa

株式会社ビジョナリー代表取締役

1985年、岐阜県生まれ。美容師や営業を経て、23歳で株式会社ビジョナリーを設立。「筋肉介護士」「マッチョ過ぎる介護福祉士」として、愛知県一宮市を中心に障害者、高齢者への介護事業を展開。福祉業界をカッコいいイメージにすることをミッションとし、従業員数30人の会社を3年で120人に成長させる。

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