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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

ロングライフデザインの第一人者・ナガオカケンメイ氏が思い描く2030年の未来とは

常にアップデートが繰り返されるデジタルデバイスをキャッチアップするのに必死である一方で、トレンドに左右されずに長く世の中に愛されている「ロングライフデザイン」にも注目が置かれている現在。デジタルネイティブ世代がどんどん社会の舵を切っていくこれからの時代において、ロングライフデザインの在り方とは、どう移り変わっていくだろうか。ロングライフデザインを次世代へと受け継ぐプロジェクトを行うデザイン活動家・D&DEPARTMENT創設者のナガオカケンメイ氏にインタビュー。ナガオカ氏が考える、来たる2030年の姿とは?

2030年は「デジタル」と「リアル」を棲み分ける準備の段階

「ものを買う」という行動において、オンラインを使うことはもはや私たちにとっては当たり前である。今後も小売業界は、どんどんオンラインが主流になっていくであろう。それに伴い、店舗の在り方やひとの働き方もどんどん変わり、今では想像もできないニューノーマルがどんどん誕生する、これからの未来。2030年にはあらゆる分野のルールや前提が変わり過去の常識が通用しなくなるとも言われるが、そんな未来をナガオカ氏はどう捉えているのだろう。聞いてみた。

 

「僕自身は、デジタルが発達してどこでも仕事ができるようになったから、仕事はもう、デジタルで完結させようと思っています。一方で、自分の残りの人生の人生観を深めるためには、やっぱり地方に足を運び現場を見ることが大切だろうと思っています。仕事はデジタルで、プライベートはリアルで。ということで、割り切って人生の舵を切っていこうかなと。僕に限らず、そういうことがみんな一斉に起こるんじゃないかな、と思うんですよね」(ナガオカ氏、以下同)

デジタルでできることが増えて自由度が高くなるぶん、実際に身を置く居場所の選択肢は広くなる。「場所」という制約がなくなるということは、より物事を叶えたい方向に進められる第一歩にもなりうる。と同時に、自分の進むべき方向性をより突き詰めた生き方をしていかないと時代の波に乗り遅れてしまうかもしれない。

 

「なにかものを作ったり、トレンドに紐づいたファッション系のものとかそういうものは、一気にデジタルのほうに行ってしまって、その土地でしか得られないようなものは、みんなその土地に行ってしまうのではないかなと。ここでも僕はこの『二面性』が、とっても大事だと思うんですよね。どちらかに偏りすぎるのも、よくないと思います。メタバースの中で物体のないものにお金をかけたり、ほとんど画面の中でヘッドフォンつけて過ごしたり。映画で見るように、脳の中にチップが入って……みたいなことって、絶対これから起こるでしょう。目をつぶったら別人格で違う世界に行くことが、できるわけですよ。そうなると、どっちがリアルか分からなくなってくる。2030年はまださすがにそういう状態にはならないでしょうけど、そっち側に寄っていくであろうから、そのときに備えて僕も、リアルな現場とバーチャルな現場を、意識して分けていきたいですね。意識できなくなる前に……」

 

非日常が、日常の延長線上にあることが徐々に当たり前の世界になっていくだろう未来は、私たちはオンラインとオフラインをきちんと切り分けながら生きていく必要がある。

 

「今までの人間の倫理感も含めたハードルがバーンと一気になくなるのがデジタルで、そうすると逆にその反動で、リアルがめちゃくちゃ古風になっていくのかもしれない。『リアルに草取りしたぜ!』『俺、クルマ運転したんだぜ!』みたいな」

 

自動運転が当たり前になれば、人間が車を運転しなくなるだろう。2030年の時点では、どこまで「当たり前」の概念が変わり、会話の変化が繰り広げられているかが楽しみだ、とナガオカ氏は語る。

根付かない。そんな「多拠点生活」の課題をバーチャルで解決

コロナ禍で、リモートワークが定着した。それを皮切りに「東京にいる必要がない」「東京でなくとも仕事ができる」と思った人が、一斉に地方へと移住した。47都道府県に1カ所ずつ拠点をつくりながら、物販・ 飲食・出版・観光を通して、地域の「個性」と「息の長いその土地らしいデザイン」を見直すプロジェクトを進めるナガオカ氏も、当然この波には乗っている。

「実際に『4拠点生活』をやってみて、難しさにも直面しているんです。なぜかというと、ご近所づきあいができないんですよ。転々としていると、その土地に本質的に入っていけない。例えば地方で集落に住みたくても留守が多いと仲間に入れてもらえない。仲間に入れてもらってはじめて、面白いことが待っているのに。家借りるときも『いない間、草取りはどうするの?』なんて言われるんです。最終的な賃貸条件が、『草取りができるか』。4拠点生活では物理的に無理なタイミングがあるために、借りられないことも多くて……」

 

最近では、「暮らすように住む」がウリの地方創生を目的としたシェアリングエコノミーのサービスなども増えている。とはいえ、実際に地に足をつけて住んでいこうと思うと、課題は山積み。自分の視点から見ると可能性が広がりそうな多拠点生活も、実際にやってみると「住んでる人側から見た自分」が浮き彫りに。

 

「その土地に住んでる人が僕を見る目線は、僕がその土地に行きたいと思えば思うほど気にかけないといけないものです。でもそれが、バーチャル上であれば、草取りする必要もないじゃない? いろいろな課題感がクリアできることもあるかもしれないですね」

 

リアルで叶わなかったことをバーチャルで叶えられる。そういった事例が、これからの未来にはいろいろな分野において起こりうるだろう。

 

「バーチャル上の中で取るコミュニケーションとリアルなコミニーションは、種類も違えば情報量的にも全く違うものです。2030年ぐらいは、その2つが混在しているような状態かもしれませんね」

より五感を刺激するものがロングライフデザインになっていく

少し先のさらにデジタルが数歩も進んだ世の中におけるプロダクトデザインの価値は、どのように変わっていくのだろう。

 

「デジタルにおけるプロダクトデザインは、より思想的なものに。リアルにおけるプロダクトデザインは、『触り心地』だとか『使い心地』だとか、より五感に訴えかけるものに。そういう形で、棲み分けられていくのかもしれませんね。そして、その中間も現れるでしょう。例えばメタバース上でも使えるし、リアルでも使えるという意味でのロングライフデザインみたいなものとか。この家電はリアルな機能としてはこれしかないけど、メタバース上に行くとめちゃくちゃ機能が増えるとか」

 

私たちがストーリーがあるものに惹かれ、それを愛し続けていくのは未来も変わらない。メタバース上にもモノが溢れたら、より選択肢が増えると同時により選択眼も磨かれるのかもしれない。

「そのものが持つ思想が大切になってくるでしょうね。そうではないと、ロングライフデザインになっていかないというか。作ったデザイナーの背景、産地の材料の調達方法、ヒストリーがあればあるほど、残っていくものによりなるでしょう。そうではないものは、どんどん『バーチャル化』していく。そういう意味では2030年頃はその棲み分けが過渡期で、注目すべきちょっと面白い時代かもしれないですね」

 

これからはロングライフデザインが、よりくっきりと際立っていき、そうじゃないものは淘汰されていく。「触れる」「使う」ということに、私たちはより敏感になっていく。よりモノを選ぶ目線が肥えていき、だからこそ、ロングライフデザインは長く残り続けていくものになるだろう。

 

ナガオカケンメイ

Kenmei Nagaoka

デザイン活動家・D&DEPARTMENT創設者

その土地に長く続くもの、ことを紹介するストア「D&DEPARTMENT」、常に47都道府県をテーマとする日本物産MUSEUM「d47MUSEUM」、その土地らしさを持つ場所を2ヶ月住んで取材していく文化観光誌「d design travel」など、すでに世の中に生まれ、長く愛されているものを「デザイン」と位置づけていく活動を展開。2013毎日デザイン賞受賞。毎週火曜夜にメールマガジン「ナガオカケンメイのメール」 配信中。

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