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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

『バズリズム LIVE V 2023』に星街すいせいやMori Calliopeら「いずれは東京ドームでVTuberライブを」

VTuberという言葉と存在は一般化してきており、市場規模も日々拡大している。ClaN Entertainmentはもともと、その舞台裏を支える新事業として、日本テレビから生まれた。立ち上げた入社2年目だった社員はいまや代表取締役社長となり、ネットワークを駆使しながら企業とVTuberを繋ぐサポートを行うなど、新たなビジネスを構築している。全国ネットのテレビ局がVTuberをターゲットに新規事業を立ち上げた背景は。そしてVTuber市場の規模が拡大し続けている理由は。同社を率いる若き経営者、大井基行氏に話を伺った。

「2018年には1,000人規模だったVTuberですが、2023年の現在は2~3万人ほどと急増しています」と語るのは、ClaN Entertainmentの大井基行代表取締役社長。現在29歳、デジタルネイティブと言われる世代の若き経営者だ。

 

ClaN Entertainmentはもともと、日本テレビ内の新規事業として立ち上がった。事業の主軸を担った大井氏は当時、まだ入社2年目だったという。多数の社員を抱える大手テレビ局で、新入社員と称してもおかしくない若手社員が、いかにして新規事業の立ち上げというビッグチャンスをつかんだのか。

 

「ちょうど当時、日本テレビ内で新規事業を推進しようという動きがあり、運がよかったのがあります。ただその次は熱量だと思います。社会人としてスキルも経験もなかったので、本気度で勝負するしかない。会社にその熱量を伝えることに注力しました。もともと入社前から新規事業に携わりたいという思いがあって。それが初めてVTuberに出会ったときに『これだ!』と思ったんです。そこからは同期とともに企画書を書き、多くのVTuberやプロダクションなどの関係者に会うために日々足を運びました」

当時、VTuber黎明期だったのも功を奏したという。全国ネットのテレビ局とはいえ、当時社内を見渡してもVTuberについて精通した人材は稀有だった。ベテラン社員には知見がなく、だけど伸びているジャンルだからこそ、社内でも「だったらやってみてはどうか」という風向きになったという。大きく手を挙げる人のところにチャンスはめぐってくる……そんな好例なのかもしれない。

VTuberが持つ魅力は。そしてそこに足りなかったものは

そもそも大井氏が新規事業の対象としてVTuberに着目したのはなぜだろうか。

 

「初めてみたVTuberはキズナアイでした。真っ白い空間で腹筋をしているというコンテンツだったのですが、アニメキャラクターではあるものの、動き方が人間っぽいんです。その新鮮さ、すごさを、理屈抜きで感じました。直感的にこのコンテンツが次の時代を創ると思ったのです」

 

その直感は正しく、現在も着々とVTuber市場は拡大している。2016年の「キズナアイ」の登場で本格的に花開いたと言われるその市場は、いまや800億円規模ともいわれるほど拡大した。

 

ただしビジネス面で見れば当初から順風満帆だったわけではない。最初は日本テレビのグループ会社であるタツノコプロと協業し、「ヤッターマンプロジェクト」としてVTuberを立ち上げ、運営していた。チャンネル登録者数もそれなりにいたが、それだけでビジネスを展開していくには限界も感じた。収益をあげていくには、スケールする事業が必要だと思われたからだ。

 

そんななか、2020年に「V-Clan」を立ち上げ、約300人ものVTuberをネットワーキングしてサポートする活動をスタート。すでにVTuberの数も増え、存在自体の認知度は高まってきていた。ただしそれをいかにビジネスにつなげるか、いわばVTuberの事業面のサポートという部分ではまだ開拓の余地があったため、自社でイベントを行って露出の機会を創出したり、また企業とVTuberを繋いでコラボレーションしたりするなどの事業を展開した。

「多くのVTuberにおいて、コンテンツの製作面では長けていました。ただビジネス面だったり、プロモーションする際のサポート体制がなかったりと、リソースに欠けている面がありました。VTuberもいわばタレントビジネスであり、やり方によってはもっと多角的な展開ができるはず。彼らに日本テレビが持つノウハウやサービスを提供したら、もっと面白いことができるという思いがありました」

前例のないビジネスモデルの構築を目指して

そして2022年4月には株式会社ClaN Entertainmentとして日本テレビからスピンオフした。「人生を変える、エンターテイメントを」をスローガンに、VTuberを中心にバーチャルとリアルを繋ぐエンターテインメントを提供する企業となった。

 

「『ClaN Entertainmentはどこの会社に近いのですか』と聞かれることがあるのですが、あまり類似企業がなくて。純粋なVTuberのプロダクションでもないし、配信プラットフォームの運営会社でもない。新しい業界で、前例を人に聞きようもなく、変化のスピードも速い、だからこそ日々面白いですね」

 

実際、ClaN Entertainmentの事業はユニークだ。事業は「C+」を中心としたクリエイターネットワーク事業、仮想空間「メタバース」を活用した番組やイベント制作を行うメタバースコンテンツ事業、さらにはそのメタバースやVTuberを活用したプロモーション施策を実施するメタバースソリューション事業に分かれ、企画提案からコンテンツ製作、プロモーションまで幅広く手掛ける。

過去最大規模の試みとなったバーチャルライブは、リアルとバーチャルの融合の極み

数々の事業を手掛ける同社だが、中でも直近でエポックメイキングとなったのは、2023年7月に行われたバーチャルアーティストとリアルアーティスト双方による祭典「バズリズム LIVE V 2023」。

 

きっかけは人気VTuber「星街すいせい」が、日本テレビ系音楽番組「バズリズム02」に出演したこと。同番組では毎年横浜アリーナでライブイベント「バズリズム LIVE」を開催しているが、星街すいせいの番組出演を機に、そのVTuber版バーチャルライブの企画が立ち上がった。そして「今聞きたいバーチャルシーンの音楽」と題し、ホロライブから星街すいせい、Mori Calliope、大空スバル、また.LIVE、KAMITSUBAKI STUDIOから人気VTuberが登場、最新鋭のCG技術を使ってニコニコ生放送などで配信された。

 

「これだけの規模のバーチャルライブは社内事業の時代を含めても、初めての試みです。技術的にも5年前では絶対にできなかったと思います。会社として成長を感じたイベントでしたし、多くの人に支えられて成立したものだと思います。多くの反響を頂きましたし、市場の成長も感じました」

さらにはこのバーチャルライブではキヤノン株式会社が提供する「ボリュメトリックビデオ技術(自由視点映像)」とバルス株式会社独自のシステムにより、星街すいせい×フジファブリック、Mori Calliope×Creepy Nutsというリアルとバーチャルアーティストのコラボも実現した。

 

実際にこのライブを見たが、バーチャルアーティストたちがいつものように自然体で動くのに対し、むしろリアルのアーティストや司会者であるバカリズムらが、「バーチャルライブってこんな感じなの?」と、最初は少し戸惑っているようにも見えた。それが時間とともにだんだんとしっくりバーチャルの世界になじんで来る様子が感じ取れて、実にリアルなライブ感があった。

 

Mori Calliope×Creepy Nutsのライブにいたっては、双方ラップのスキルが高いことに加え、Mori Calliopeが早期からのCreepy Nutsファンということも手伝って、息の合ったゴージャスなステージに。VTuberだ、リアルのアーティストだと境界線を引く必要もない時代がやってきたのだと高揚感を覚えた。

 

 

「リアルとバーチャルの融合は、会社設立当初から掲げているテーマです。たとえバーチャルな空間であっても、ワクワクするリアルな体験との接点は必要です。その意味でも、またテレビとインターネットが融合したという意味でも、今回の『バズリズム LIVE V 2023』は新しいエンターテインメントの扉が開いた感じがしました。ClaN Entertainmentならではの強みが生きたイベントだったと思います」。

先日は代々木アニメーション学院とタッグを組み、“リアル×バーチャル”なVTuberプロジェクト「ぱらすと!」を始動すると発表。選考オーディションを実施、合格したメンバーは、それぞれバンドを結成し、協働してVTuber活動を行うというもの。普段はVTuberとしてゲームや雑談など、それぞれのメンバーが好きなことを行いながら、音楽ライブでは自ら衣装を着て、ライブのステージに立ち、リアルだからこその臨場感あるパフォーマンスを目指す。バーチャルの配信者としての活動と、リアルアーティストとしての活動を両立させる、新しいプロジェクトだ。

埋もれた才能がVTuberとして開花、世界的スターになる未来を描く

VTuberは今日も新たなコンテンツとして成長を続け、市場は着々と拡大している。当初の大井氏の目論見通り、彼ら彼女らは次の時代を創りつつある。多くの人、特にZ世代を中心とした若者にVTuberが受け入れられているのはなぜだろう。

 

「人の本質に合ったコンテンツだということです。VTuber側からすると、見た目に限定されずに活躍できる場がある。見る側からすると、毎日のようにライブ配信を行っているVTuberも多く、キャラクターという憧れが具現化したような存在にリアルタイムで触れられます。好きになる要素が揃っているのですよね」

 

コロナ禍で巣ごもり需要が増加したのも、VTuber業界の市場拡大の後押しになったという。さらにはモーションキャプチャーの技術的革新も加速度的に進んでいるため、今後も多くのタレントがVTuberとして参入してくると見込んでいる。

 

「これまで埋もれていた才能が、VTuberとして開花して世界的な大スターになることを実現したいと思っています。ClaN Entertainmentではそうしたクリエイターの方々の活動をサポートして、人生の新たなストーリーを描いていけたらと思っています。その中で、イベントでは東京ドームでVTuberのライブを実現したいと思っています」

大井基行

Motoyuki Oi

ClaN Entertainment代表取締役社長

慶應義塾大学卒。2017年に日本テレビ放送網株式会社に入社。2018年に社内ベンチャーとし てVTuber事業「V-Clan」を立ち上げ、責任者として事業運営を行う他、「プロジェクトV」など多数の番組やイベントのプロデューサーも務める。2022年4月1日に 日本テレビの新会社としてClaN Entertainment社を設立し、日本テレビグループ史上最年少で、代表取締役に就任。座右の銘は中居正広さんの言葉から、「成功は保証されていないが、成長は保証されている。」

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