NEWS

ENILNO いろんなオンラインの向こう側

メニュー サイト内検索
閉じる

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

若者のTV離れで2030年の業界はどうなる? 「境界線を引くのではなく掛け算で」

日本テレビからスピンアウトしたClaN EntertainmentではVTuberと企業を繋ぐ新たなビジネスを構築している。経営を担うのは、まだ20代の大井基行代表取締役社長。デジタルネイティブであり、オンラインを活用した新たなエンターテインメントを切り開いている同氏は、テレビの未来をどう考えているのだろうか。

日本テレビから2022年にスピンアウトした株式会社ClaN Entertainmentでは、VTuberのネットワークを組織し、コンテンツ制作を行い、企業に対してVTuberを活用したソリューションの提供を行っている。オンラインが主な活躍の場であるVTuberであるが、マスメディアである日本テレビとは競合とならないのだろうか。

 

そもそもYouTubeというプラットフォームの台頭により、テレビの影響力がなくなってきているとも言われる。「若者のテレビ離れ」という言葉も耳にして久しい。本格的に高齢化が進み時代が変遷する2030年には、さらにテレビの影響力は弱まるのではないだろうか。

 

「そもそもどこまでをテレビとするか、その境界線自体があいまいになっていると思っています。リアルタイムでテレビ番組を見ていればそれは『テレビ』なのかもしれないけれど、じゃあTVerやHuluで見る番組はテレビなのかネットなのか。その境界はあいまいで、どちらとも言えると思うんです」

 

確かにリアルタイムでなくてもテレビ番組を観る機会は圧倒的に増えた。公式YouTubeチャンネルを持ち、コンテンツの一部を放映するテレビ番組もある。

「テレビには、これまで積み上げてきた膨大なコンテンツと、その歴史の中で培ってきた信頼があります。それをオンラインで上手く活用する方法はまだまだあるのではないでしょうか」

世界からアクセスできるエンターテインメントの強さ

もともと大井氏自身、初めて触れたエンターテインメントはテレビだったという。小学校1年生のとき、初めて自分でお年玉を使って買ったのが、ドリフターズのDVD。平成生まれとは思えない、「昭和のテレビっ子」のような志向だ。

 

中学生の頃にはさらに行動力を身に着けて、お笑いのライブを見に行ったり、SMAPの魅力に触れてファンクラブに加入したりと、エンターテインメントの魅力に引き込まれる。

 

「観る側から創る側の面白さに触れたのが高校時代でしたね。文化祭で各クラスがそれぞれミュージカルをやるという少し変わった高校だったのですが、そこで主演や監督を務めて、エンターテインメントに関わる仕事を意識するようになりました」

 

芸術科があったわけではない高校だが、文化祭のミュージカルに懸ける本気度は評判で、その経験を機にエンターテインメント業界に進む人もいるという。大井氏もその経験に触発され、大学時代には「ハリウッドを見たかったから」とUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に留学。本場のエンターテインメントの質の高さに触れた。

 

「日本テレビでVTuber事業を立ち上げたのも、日本の強みを活かした新しいエンターテインメントであるVTuberは、アメリカなど世界でも勝ち筋があると思ったことが理由の一つです。実際オンラインでのコンテンツが中心なので、世界中からアクセスできますし、そこでファンになる国外の人も増えている。ClaNとしてのグローバル展開も常に考えています」

オンラインの世界で存在感を増す「日本産エンタメ」。世界との距離はさらに縮まって

日本の漫画に始まり、アニメやゲームはもはや世界で市民権を得ている。VTuberの世界で見ればいまや日本が世界最大の市場規模を誇るが、だからこそ日本発のカルチャーとして今後世界で拡大する可能性はある。

ClaN Entertainmentでは日本酒のメーカーとVTuberとのコラボ企画を行ったことがある。こうした伝統・現代の日本のカルチャーを象徴するような企画は、日本の文化に興味がある外国人にも受けそうだ。

さらには自由度の高いVTuberだからこそできることもあると大井氏は言う。

 

「VTuberには多様性があります。現在の日本ではアニメ風のキャラクターのVTuberが多いですが、例えば韓国ではK-POPアイドル風のキャラクターも出てきていますし、子供向けではクマのキャラクターである『クマーバ』もいたりします。また平均年齢80歳のグループである『メタばあちゃん』も話題になりました。今後も多様なVTuberが生まれてくる流れは止まらないと思います」

 

言語のカスタマイズはもちろん、各国で好まれそうなビジュアルを展開することも、自由度の高いVTuberなら可能だ。世界に名だたるVTuberが誕生する日も遠くないのかもしれない。

 

一方で近年若者が海外を目指さず、内向き志向だと言われることもある。ただし大井氏はそれには否定的だ。

 

「むしろオンラインの世界が一般的になっているからこそ、世界との距離はどんどん縮まっていると思います。内向き志向と言われているかもしれませんが、オンラインによって実際に海外に行かなくても世界を感じられる機会は増えていますし、若い人たちの考え方はむしろグローバル化しているのではないでしょうか」

境界線を引くのではなく、「掛け算の法則」を

世界に向かって発信する際に武器になるのが、日本テレビというバックグラウンドだろう。実際7月に行われた「バズリズム LIVE V 2023」は日本テレビ系音楽番組「バズリズム02」から生まれたバーチャルライブ・イベントであり、テレビでのイベント告知も行われた。

また日本テレビではVTuberが多数出演、仮想空間で収録する次世代型音楽番組「MUSIC VERSE」を毎月最終木曜日24:59から放映中で、ClaN Entertainmentはこの番組の制作を務めている。

同番組はTVerで見逃し配信を行っているほか、配信プラットフォーム「SPWN」にて地上波では未公開だったシーンやフルコーラスを有料配信している。地上波のテレビを楽しんだ上で、さらに深く楽しみたいファン向けのコンテンツが用意されているのだ。制作側から見ると、地上波でカットしたシーンが、オンライン上で収益を生むという新たなビジネスが生まれている。

 

「テレビだからオンラインだからと境界線を引くのではなく、それぞれの良さを認識して、うまく融合させることが重要です。引き算をするのではなく、掛け算にしていくことがこれからさらに求められますし、まだまだ面白いことができると思っています」

大井基行

Motoyuki Oi

ClaN Entertainment代表取締役社長

慶應義塾大学卒。2017年に日本テレビ放送網株式会社に入社。2018年に社内ベンチャーとし てVTuber事業「V-Clan」を立ち上げ、責任者として事業運営を行う他、「プロジェクトV」など多数の番組やイベントのプロデューサーも務める。2022年4月1日に 日本テレビの新会社としてClaN Entertainment社を設立し、日本テレビグループ史上最年少で、代表取締役に就任。座右の銘は中居正広さんの言葉から、「成功は保証されていないが、成長は保証されている。」

新着記事

お問い合わせはこちら

CLIP 暮らしにリプする IT・インターネットをより楽しむためのエンターテイメント情報満載

Netflix FreaksはNetflixをとことん楽しむための情報メディア。Netflixの最新情報や厳選したおすすめ作品・レビューを紹介しています。

OPTAGE BUSINESS