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NFT作品が1,300万円で落札! 日本の伝統美を継ぐVRアーティスト「新しいから良いわけではない」

最新のテクノロジーを活用し、VRの世界に独自のアートを構築する、VRアーティストのせきぐちあいみ氏。以前には初のNFTアート作品が1,300万円で落札されたことでも話題になった。デジタルアートのパイオニアは日進月歩のテクノロジーと、日々どう向き合っているのか。一方でリアルな世界、そしてフィジカルも重要と語るその極意は。滞在先のドバイからインタビューに参加してもらった。

これまでなかった職業をクリエイトする

日々テクノロジーが進化しているこの世界では、10年前、20年前にはなかった職業が新たに生まれている。せきぐちあいみ氏の肩書である「VRアーティスト」もそうだろう。せきぐち氏はVR空間に自由自在に絵を描き、美しき世界を日々表現している。そこに至るには、どんなきっかけがあったのだろうか。

 

「VRに初めて触れた瞬間に『これは人類の可能性を広げてくれるものだ』と確信したんです。既存のアートとは違って、VRには360度にわたって別世界を創ることができるおもしろさがあります。子供のころから絵を描くのは好きだったのですが、今まで描けなかった『空間』に絵が描けることに驚きました」(せきぐちあいみ氏、以下同)。

 

それからというもの、日々の時間の多くをVR空間に絵を描くことに費やしたという。ただ始めから職業になると思っていたわけではない。「最初はひたすら楽しくて夢中で描いていた感じでした。それを発表していくうちに、少しずつ仕事が入ってきて……という流れです」

初めてVRアートに触れたときの直感と感動は、今も変わっていない。むしろ活動を続けていくなかで、VRの持つ可能性を日々実感している。せきぐち氏は日本のみならず、世界各国で作品を発表しているが、そうしたシーンでも驚くことがよくあるという。

 

「初めて作品に触れた方々の反応は、国が変わってもあまり変わらないんです。しかもお年寄りでも子供でも変わらない。世界中の人が皆、『ワオ!』と驚きをもって喜んでくれます」。観客はVRヘッドセットなどのデバイスを通してVR空間に入り込み、作品を体感する。多くの人が初見でまず、その美しさと没入感に驚くという。

発表の場で重視する、リアルなインパクト

さらにせきぐち氏はライブペインティングも数多く行っている。リアルな場でインパクトある作品を発表するのに、心がけていることがあるという。それはフィジカル面もあわせた世界観の構築だ。

「VR空間だけでなく、リアルを含めたトータルの世界観を重視しています。例えばこの世界観なら金髪のウィッグを被った方がいいとか、海外の場合だと『日本から来ました』というのが伝わる、和風のドレスを着たりとか。ライブペインティングでは線を描くにも大きく手を振って、ダイナミックな動きを見せることも気を付けています。イベントの前に、会場にカメラを設置して自分の動きを確認することは必須です。実は甘いものが好きなので、太ったなと思ったら体を絞ったりしています……!」

 

VRアーティストとしての活動を始める前は、役者やアイドル、ダンサーとして、さまざまな芸能活動を行っていた。こうしたキャリアがあってこそ、せきぐち氏のパフォーマンスには華がある。キレのある動きからVR空間に美しい世界が続々と生まれていく様子は、アーティストとして唯一無二の存在感を放つ。

日本の伝統美を継ぎ、日本のデジタルアート界に知見を活かす

せきぐち氏がVR上に創造するアートは、デジタル作品ながらどこか懐かしさを感じさせる。それは例えば神社や金魚や藤の花といった、和のモチーフがあることも一因だ。

「もともと日本の文化、寺社仏閣などが純粋に好きで、作品の中に取り入れています。日本文化では周囲の空間を含めて美を表現することが多い。例えば生け花や日本庭園など、空間ありきで美を表現しています。だから360度の空間を創作できるVRと相性がいい。自分の作品を作る上でも、日本美術の配置やセオリーを参考にすることはありますね」

 

さらに自然美と人工美の調和も、日本の伝統から学ぶことが多いという。「日本の文化は細部まで作り込まれていながら、周囲の木々や季節といった自然と調和しています。だから私は、自然をモチーフにしながらも現実ではありえない世界を創造していきたいと思っています。それが実現できるのもVR空間だからですよね」

 

こうした表現力はすべて独学で身に着けてきた。前例がないだけに、誰かに師事して……というわけにもいかなかったからだ。

 

「すべてがセルフプロデュースです。作品づくりはもちろん、イベントや展示になれば何をどこに置くといった空間づくりにも関わっています。さらにVRヘッドセットなど機材の準備も必要ですし、それも自分で管理しています。何十キロもある重い荷物を持っているので、よく驚かれることがあります」

新時代のアートを創りながら、せきぐち氏には地に足がついたからこその説得力がある。だから同氏は経済産業省の「Web3.0時代におけるクリエイターエコノミー創出に係る研究会」委員や、内閣府知財事務局「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題への対応に関する官民連携会議」構成員などに選出されている。新しく生み出されるデジタル世界をどんな方向性にすべきか、その知見を持つ数少ない人材だからだ。

 

地域との関わり合いも深い。現在、日本各地で観光や教育面でVRやARといった新しいテクノロジーを利用した取り組みがなされている。コロナ禍の2021年には、ARを使って鳥取砂丘に月面都市を描くというプロジェクトに参加した。同年には福島県南相馬市の「みなみそうま未来えがき大使」にも就任している。

初のNFTアートが1,300万円で落札。ただし「新しいから良い」わけではない

その活動を支える背景には、彼女の作品が世界でも高い評価を得ていることが挙げられる。2021年には初出品したNFTアートが、たった1日で1,300万円で落札されたことが大きな話題になった。

 

「自分でもびっくりしましたし、ありがたいことだと思いました。NFTの仕組みには可能性があると感じていたし、いずれ必要なものだと思っていましたが、思ったより時代が早く到来した感覚がありました。やはりパンデミックがあって、一気に進んだのではないでしょうか。現在は一時に比べたら落ち着いていますが、ブロックチェーンやNFTは、デジタル社会の中で便利なものです。これからはもっと一般的になるのではないでしょうか」

 

こうした新しいテクノロジーやサービスには「とりあえず触れてみよう」と思うタイプだというせきぐち氏。ただし「新しいから良いわけではない」と警告を鳴らす。

 

「そのテクノロジーがどんな可能性があって、どんなおもしろさがあるかということが大事だと思います。新しいものに関して『いち早くやれば儲かりそう』と思って足を踏み入れる人も少なくないですが、そういう人たちは儲からないとわかると、サーっと引いていきますね……」

 

せきぐちあいみ氏を先見の明があったと評する声は多いが、それだけでなく情熱と意欲があったからこそ、現在の地位を確立できたのだろう。

 

「アートの世界で仕事ができることは、本当に幸せだと思っています。人に新しい刺激を与えるのがうれしいし、生きがいです。時にはうまくいかなくて壁に当たることもありますが、だからといってやめるという選択肢はないですね。死ぬまでやりたいと思っています」

 

これからやりたいと思っていることについて尋ねると、こんな答えが返ってきた。

 

「いずれは月や火星など、地球以外の場所でも展示を行ってみたいですね。さまざまな技術を駆使すれば、できないことはないのではと思っています」

せきぐちあいみ

Aimi Sekiguchi

VRアーティスト

2016年よりVR空間に3Dのアートを描くVRアーティストとして始動。翌年に世界初のVRアート個展を開催。アート制作やライブペインティングのステージ公演を国内や海外で行う。

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