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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

VRアーティストせきぐちあいみ「高齢者=デジタルに弱いと決めつけない」高齢者を豊かにするVR

デジタルアート界をけん引する、VRアーティストのせきぐちあいみ氏。日々最先端のデジタルアートに触れ、そして創造している彼女は、来るべき未来をどう見ているのだろうか。

高齢者の割合がさらに増加し、社会の変革期となると言われる2030年。VRアーティストのせきぐちあいみ氏は、これから世界はどうなると感じているのか。

 

「2030年問題と言われることはありますが、2030年になったから急に変わるわけではないと思うんです。もう変化は今からすでに始まっている気がします。そこに向けて何かをするというよりも、今から先を見ていく必要がありますよね」

高齢者施設とVR……実は相性抜群

せきぐち氏の活動は、最先端のテクノロジーを使ったアートでありながら、社会とも繋がっている。もともとおばあちゃん子だったというせきぐち氏は、しばしば高齢者施設を訪れ、そこでもVRの可能性を感じているという。

 

「例えば介助が必要な方などは、気軽に外出ができなかったりします。けれどもそういう方にVRヘッドセットをつけて様々な世界を見せると、本当に感激されるんです。リアルでは難しくても、VRでは世界中の色々な場所に行けます」

介護とテクノロジーの融合が期待される現代、VRにも大きな活躍の場がありそうだ。そのためには高齢者=デジタルに弱いと決めつける必要はないとせきぐち氏は言う。VRに関しては、多くの場合つまづくのは登録するときだけで、いざVRヘッドセットをつけてしまえば、年齢に関係なく楽しめるのが常だという。

 

「介護施設に行くことがよくありますが、先進的な施設ではVRを導入しだしているところもありますし、使いこなせる職員の方がいたりします。活用方法は幅広いと思うので、これからはさらに導入する施設が増えるといいなと思っています。例えば日々のレクリエーションに取り入れることもできるし、なかなか会えない孫とVR空間で会えたり、お墓参りに行くこともできたりする。どこにいても楽しみが増えます」

死後もメタバースの世界で生き続ける

高齢者だけでなく、足が不自由な人にも、大きく動かずしてさまざまな世界を体感できるVRは有効だ。せきぐち氏はこれまで障がい者を対象としたVRアートプログラムのスーパーアドバイザーを務めた経験もある。

 

「だからこそ私自身、これからもずっと活動を続けていきたいと思っています。テクノロジーはさまざまな可能性を広げてくれます。これから自分が高齢者になっても、もし体が動かなくなっても、たとえ病室にいても、世界につながる体験ができるからです」

 

さらに言えばこの世から存在しなくなった後のことも考えているという。

 

「こうして作品を発表しているのも、後世の世界になんらかの爪痕を残したいという思いがあります。さらに死んだ後も、せきぐちあいみはメタバースの世界で生きていて、そこに行けば過去の作品も観られる、会話もできる……そんな世界になってほしいし、現実になってきているのです」

日本だけでなく世界を見る重要性

デジタルによってますます世界が近づいていく現代、日本だけでなく世界を見ることも需要だとせきぐち氏は語る。これまでアメリカ、ドイツ、フランス、ロシアなどで幅広い活動を行ってきた。ロシアでは技能五輪の閉会式で、地元のシンガーとコラボレーションして広大なステージでライブペイントパフォーマンスも披露している。ドバイにはしばし滞在して展示会を開催したところ、初めてVRアートに触れる老若男女から多くの質問をもらったという。

世界に活動の場を広げる原動力は、「より広い世界に、VRアートの世界の素晴らしさを知ってほしいから」

 

「そもそも日本のパスポートはかなり制約が少なく、世界中どこにでも行けます。日本独自の文化に興味を持ってくれる人も多いし、沢山のチャンスがあると思うんですね。日本にいるとさまざまな課題と感じることが、世界に出るとまた違った見え方をすることもあります。そういう外からの視点がまた刺激になって、新たな作品が生まれたりします」

 

一方で日本人は外国語が得意ではない人が多く、それが機会損失になっているのではと懸念する。せきぐち氏自身も壁を感じることがあるそうで、語学の勉強中だという。

AIがアーティストに代わる!? そうならないために必要な「人間らしさ」

そんな海外での活動を手助けしてくれるのもまた、テクノロジーだ。特に文章の翻訳に関してはChatGPTを活用する場面が増えてきたという。「これまでのツールよりも抒情的な表現に強く、アートに関わる活動を説明するのに適切な表現を提案してくれると感じています」

 

AIの進化はこうしたサポートをしてくれる一方で、AIがイラストを描いたり、また作品を創ったりする能力も備わってきている。アーティストとしてAIを脅威に感じることはないのだろうか。

「AIにすべてがとって代わられる時代がきたら……と考えることもあります。実際、技術的にできることはどんどん増えていくでしょうし。ただそれでもやはり『人間しかできないこと』は残ると思うんですよね。『触ってみる』とか『感じる』とか。だからこそ例えばライブペインティングではダイナミックな動きをしたり、そうしたフィジカル面も重要だと思っています」

ライブならではの良さ、人間らしい表現を伝えるため、せきぐち氏はアトリエにこもって作品を発表するだけでなく、展示会など多くのステージに立ち、パフォーマンスする。キレのある動きから見たことがないデジタルアートが生まれる様子は他に類を見ないもので、もちろんAIには到達が難しいだろう。

「テクノロジーはどんどん進化していきますし、さまざまな可能性を秘めています。それといかにうまく付き合っていくか、その可能性をどう広めていくかは、人間にかかっていると思います」

 

来るべき未来を見据えながら、今日もリアルとVRの世界を創造していく。その絶妙なバランス感覚とクリエイティビティは、来るべき2030年を明るいものにしてくれそうだ。

せきぐちあいみ

Aimi Sekiguchi

VRアーティスト

2016年よりVR空間に3Dのアートを描くVRアーティストとして始動。翌年に世界初のVRアート個展を開催。アート制作やライブペインティングのステージ公演を国内や海外で行う。

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