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大都市・東京は気候変動や直下地震にどう備える。DXやAIで災害は防げるのか?

2023年2月に開催された、「City-Tech.Tokyo(シティテックトウキョウ)」のレポートをお届けする連載企画。

 

第2弾の今回は、東京都政策企画局・藤崎哲朗氏によるトークセッション「災害の激甚化に備えるTOKYO強靭化プロジェクト」の様子をレポートする。

水害を可視化し、都民と都市の被害を最小に

出典:東京都

 

気候変動による災害に、首都直下地震。私たちを脅かす大規模災害への対策として、東京都は2022年12月に「TOKYO強靭化プロジェクト」を策定。総事業予算として15兆円を見込み、2040年代の東京の姿を想定した具体的な計画のもと、その先の100年も安心して暮らすことのできる強靭な都市へと東京をレベルアップさせる計画を立てた。同トークセッションでは、これまで構築した防災インフラをさらに強化することに加え、AIなどの最新テクノロジーを駆使していくという、プロジェクトの具体対策事例の一端が紹介された。

「気候変動に伴い、世界は多くの災害に直面しています。とくに水害は甚大です。2022年6月、パキスタンではモンスーンがもたらした例年の10倍以上の降雨により、大洪水が発生し国土の3分の1が水没しました。またアメリカでも、2021年に大型のハリケーンアイダが上陸し、高潮、雨、風、竜巻により750億ドル以上の被害が出ました。風水害から都市機能をいかに守り抜くかという点は、東京だけでなく世界中の大都市にとっても共通の課題となっています」(藤崎氏)

昔から台風による被害で悩まされてきた東京。水害被害を減らすべく、これまでに河川の拡幅や堤防の整備や調節池の整備を行ってきた。一方で、気候変動により2050年頃までに世界の気温は1.5℃~2℃上昇、東京の降雨量は1.1倍に。2100年までに海水面は約60cm上昇すると予測されている。

 

「これまで行ってきたインフラの整備により、過去と同規模の台風が東京に上陸しても浸水数や河川の氾濫数は大幅削減を達成しました。しかし、今後気候変動が更に進行し、より強力な台風上陸が想定されている中で首都機能や経済活動を維持するには、東京における防災対策をよりレベルアップし、安全を未来に引き継ぐことが重要です」(藤崎氏)

同プロジェクトにおける水害対策として挙げられたのは、道路や公園の地下に洪水の一部を貯留し河川からの氾濫を防ぐ「地下調節池」の整備をさらにスピードアップさせ、貯留能力の倍増を目指すこと。海水面上昇に備え、防潮堤や河川堤防の嵩上げの整備を段階的に進めること。そうしたインフラの強化に加え、さらにテクノロジーを掛け合わせた取り組みをしていく。

例えば、AI知能により水位予測によって水門ゲートを操作することで、より迅速かつ的確に河川氾濫対策が可能に。また、現実世界の情報を仮想世界にコピーしさまざまなシミュレーションを行う技術「デジタルツイン」上にて、都市での水害をシミュレーション。起こりうる被害を事前に知ることで、防災訓練を強化する。

出典:東京都

 

このようにインフラとテクノロジーの二面から強化を加速させることで、激甚化する風水害から、都民および都市機能を守るプロジェクトを進めている段階だ。

首都直下地震が起こっても「助かる」都市へ

出典:東京都

 

「自然災害は、水害だけではありません。次に私たちが考えていかなくてはならないのは、大規模な地震への備えです。ご存じの通り、2月にトルコでマグニチュード7.8の大地震が発生しました。この地震で倒壊したり取り壊しが必要になったりした建物は、少なくとも17万3,000棟以上。被害は今もなお拡大しているようです」(藤崎氏)

 

日本においても、2011年に発生した東日本大地震の記憶はいまだ新しい。また、30年以内に70%の確率で発生すると政府が発表している「首都直下地震」では、個人レベルの防災が叫ばれている。そんな中、都市インフラの観点からはどういった対策が考えられているのだろうか。

 

大規模な地震対策として挙げられたのは、まずは現状で耐震性が不十分な住宅への耐震化支援の拡充について。これまでの10年においても、こういった住宅への耐震化を支援することで、住宅の耐震化割合は約81%から92%に改善されている。同プロジェクトでは、向こう20年を目処に、さらに耐震化を強化。主に木造住宅が密集する地域について建て替えへの促進支援し、「燃え広がらない」という視点での対策も強化していく。

 

さらにAIを維持管理に活用することや、ドローンやSNSを活用した被害把握にも取り組む。万が一の場合は、応急活動を支える交通網や通信が確保され、救援救助が迅速に行えるようなしくみを整える。このようにあらゆる視点やフェーズにて強化を図り、大地震が起きても「倒れない・燃えない・助かる」都市を形成していく。

DXを駆使し、災害時も生活や都市機能を存続

ビジネス分野では今や当たり前となりつつあるDX(デジタルトランスフォーメーション)の波。デジタル技術によってもたらされる革新的な変容は、防災分野でも着々と取り組みが進められている。

 

「人工衛星による観測データで地形の改変が行われた箇所を抽出することで不適正盛土を検知し、土石流災害を未然に防ぐことができます。また、情報共有をより密にすべく、国や民間のシステムと連携させて災害情報共有システムを強化。市街地にスマートポールを整備し、データ収集・分析・情報発信の拠点とします。さらには災害時の事業継続に繋げるべく、業務システムやサーバーのクラウド化を進めています」(藤崎氏)

スマートポールとは、5Gアンテナ基地局、高速Wi-Fi、非常用バッテリーなどの機能を搭載した新しいインフラのこと。デジタル技術を防災分野にも生かすことで、いざ被災してしまっても、生活する上での安心を手に入れられる工夫を構築していく。

「また、具体的なイメージができていない事項ではありますが、スタートアップ企業の技術力で、具体化を図っていきたい事項がいくつかあります。それが『バーチャル都庁』の確立や『デジタルツイン』による意思決定支援、災害時の状況把握の強化と情報発信の自動化などです」(藤崎氏)

 

興味深いのは、「バーチャル都庁」というワード。読んで字の如く、デジタル空間に移転しておくバーチャル上の都庁だ。大規模災害があっても都庁が機能停止することがないよう、スマートフォン上でリモート対応、分散対応させるという。さらには仮想空間でシミュレーションした「デジタルツイン」上での予測を、重要な意思決定に活用することも見据えている。起こりうる被害を可視化することで次のリスクを予測し、対策を練ることで被害を最小化する。被災時はドローンやセンサーの自動的発動により、物理的距離の縮小に努める。

 

このように、災害対策においても「最先端のテクノロジー」と「多彩なアイデア」は必要不可欠なものとなっていく。

 

「みなさまから協力いただきながら、国際経済都市である安全・安心な東京を、さらにレベルアップして、世界中から多くの人々が集う東京をつくり上げていきます」(藤崎氏)

 

都とスタートアップ企業が協業し、未来の東京をより災害に強い都市へと構築していく。そう遠くない、未来だ。

 

藤崎 哲朗

Tetsuro Fujisaki

1998年度に土木技術者として都庁に入都し、これまでに都市整備局、建設局、下水道局などにおいて、防災を中心とした都市づくりを経験。都市整備局では、震災後の火災を未然に防ぐ木密地域の解消に向けた不燃化特区の取組を実施。過去には、JICA専門家として発展途上国の都市インフラ問題を解決するため、ドミニカ共和国へノウハウを提供する技術支援を実施。そのほか、2020年オリンピックでは、東京の都市力を招致動につなげ、開催決定後は、組織委員会において、会場計画の策定や会場運営を担当。現在は、政策企画局にて、100年先も安心を目指すTOKYO強靭化プロジェクト策定を担当。

  • 公式Facebookページ

取材:松崎愛香

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