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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
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「ボーイングやエアバスと同じ安全基準」、車が空を飛ぶ時代の日常とは

2023年2月に開催された、「City-Tech.Tokyo(シティテックトウキョウ)」のレポートをお届けする連載企画。

 

第3弾の今回は中国・EHang社のRichard Liu氏、日本・SkyDrive社の福澤知浩氏、ドイツ・Volocopter社のHon Lung Chu氏によるトークセッション「実用化が進む”空飛ぶクルマ”の新事情」の様子をレポートする。

eVTOL業界おける最先端企業3社の新事情

「空飛ぶクルマ」と聞くと、アニメ『ドラえもん』や映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の世界を連想する人も、多いかもしれない。同セッションは、そんな夢の膨らむ「空飛ぶクルマ」の具現化と叫ばれている「eVTOL(イーブイトル)」について語られた。

「eVTOL(イーブイトル)」とは、「electric Vertical Take-Off and Landing」の頭文字をとった略称。つまり、地上から垂直移動での離着陸が可能な機体のことを指す。このeVTOLの先駆的な企業である、日本・中国・ドイツの3社が同セッションに集結した。

日本・SkyDrive社は、2020年には世界初披露の1人乗りの機体「SD-03」で、公開飛行試験を成功させた。2025年に開催される大阪万博では、「SkyDrive式SD-05型」のデザインを発表予定。大阪ベイエリアでのエアタクシーサービス開始を目指している。

 

「eVTOLを開発する会社は、世界におよそ400社あります。eVTOLでも小型や大型、さまざまですが、私たちSkyDrive社は、小型のeVTOLのパイオニア的存在であるEHang社に追いつくべく頑張っております」(SkyDrive社・福澤氏)

その中国・EHang社とは、世界においてこの自立型無人航空機(AAV)としては、最先端をいく会社。都市や郊外において乗客や荷物を運ぶ新しい交通システムである「UAM(Urban Air Mobility)」の分野で初めて、2019年にNASDAQに上場した。同社のeVTOLの主力製品である「EH216」が、日本国内で初の有人飛行実験に成功したのは、つい最近の2023年2月のこと。国土交通省の認可のもと、大分県大分市の田ノ浦海岸にて操縦士を乗せることなく、2人の乗客をのせて飛行した。

「私たちは世界をリードするAAVの技術で、安全で自律的かつ環境にやさしいUAMを全ての人に提供します。AAVはリラックスした『ポイントtoポイント』の飛行体験を提供します。飛行はコマンドコントロールセンターによりリアルタイムで制御され、変化する飛行条件にも迅速に対応して安全を確保します。充電には太陽電池パネルが装備されるなど、クリーンエネルギーによって駆動するのもこれからの時代にふさわしいポイントです。移動手段としてだけではなく、快適なプライベート空間で観光体験も楽しめるという、全く新しい視点を提供するのです」(EHang社・Richard Liu氏)

そしてドイツ・Volocopter社は、世界初となるエアタクシー発着場「ボロポート」の試作モデルを、シンガポール湾岸部にて公開した。ボロポートは2021年の商用化を目指し、向こう2~5年で国内に複数カ所のボロポートを整備する計画。

 

「我々のミッションは、サステナブルなUAMを全ての人に届けることです。初の飛行実験は、遡ること2011年。それ以降、40もの都市にて1,500ほどのテストフライトを行ってきました。そして2019年の10月、コロナ禍の直前には、シンガポールのマリーナ・ベイ地区を巡るエアタクシーのデモフライトを行いました。私たちはパイオニアとして、新しい産業を作りました」(Hon Lung Chu氏)

Volocopter社が展開するのは、3つのタイプのエアタクシー。1つ目は、パイロット1人と乗客1人が乗れる「ボロシティ」と呼ばれるエアタクシー。来年にはパリとシンガポールで商用運行を開始する予定だ。アプリを使用し、エアタクシーを予約することもできる。

2つ目は、「ボロドローン」と呼ばれる物流目的のロジスティックスバージョン。完全に電動型で、200kgまでを運ぶことができる。

3つ目は、「ボロリージョン」と呼ばれる4人乗りのもの。

 

「ボーイングやエアバスの安全基準と同じく、10億時間のフライト時間に対して初めて一つ事故が起きるという確率で設計されています。つまり、最高基準の安全基準を守っているということになります」(Hon Lung Chu氏)

 

2020年ではJALと協力関係を結び、2021年には「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」に参加。日本の航空企業とも連携を図っている。

eVTOLが解決する未来の課題。緊急時にも活躍

空飛ぶクルマが常用化することで、都市が抱える課題はどのような観点から解決されるのか。これらは安全レベルが非常に高く「次世代の航空機」とも呼べる。現在は、移動手段としては、列車や自動車がメインとなっているが、混雑や乗り換え、渋滞の問題もある。しかしeVTOLであれば駅や道路が不要。インフラが不要なので、コストダウンに繋がる。

 

「垂直離着機ですので、ヘリコプターと同じようにスムーズに狭いスポットから簡単に垂直に離陸することができます。そして、多くの航空機はほとんどがエンジンおよびジェネレーターで動く中、eVTOLはモーターで動きます。電気自動車と同じです。離着時のノイズがなくとても静かなので、近隣住民を騒音問題で困らせることもありません」(福澤氏)

UAMは、緊急対応時にもその手腕を発揮する。現在救急車やヘリコプターに頼っている医療スタッフや物資の緊急輸送を短縮することができ、高層ビル火災などの問題にも対応が可能だ。救助時間を大幅に短縮することができその結果、犠牲者を減らすこともできる。

 

「既存の輸送手段を置き換えるのではなく、より利便性高くそして効率の良い、そしてまた安全な手段である新しいオプションを提供するというふうに考えていただいていいと思います」(Hon Lung Chu氏)

 

現在では高度が低い区域での垂直離着機はまだ少ないが、eVTOLの稼働が一般化することにより、低高度の区域において、より効率よく、より早く、より安全に、人々を目的地まで運ぶことが可能になる。

航空業界と足並みを揃え、新しい移動手段へ

説明を聞く限りでは、どうやらすごい技術だということは理解できる。とはいえ実施に空飛ぶクルマが当たり前のように飛ぶ未来は、想像を絶する。空を見上げると、高速道路かの如く、クルマが行き交う景色が見られるのか。そこにも課題点がいくつかあるという。

 

「空を飛ぶわけですから、規制の観点で重要なのが航空業界との軸合わせです。航空における安全基準を満たしているかどうか審査する国際航空安全評価(IASA)という機関のもと、開発に向けて進めております。空路の問題、バーティポートなどのインフラ、パイロットや技術者の標準も作っていかなければなりません」(Hon Lung Chu氏)

担保された安全性、UAMの観点、観光としての魅力もある。そんな、新時代の移動・輸送機関が現実になるのも、もうすぐのこと。そのためには一般市民にeVTOLの認知を広げ、その仕組みをわかってもらうことが重要だ。100年前に人々が自動車を受け入れたのと同様、一般化するには中期的に考えていかなければならない。


とはいえ、eVTOLが頭上に見られる日は、そう遠くない。新たな可能性を多く秘め、都市の課題解決にも繋がる。そんな夢のようなツールが増えていくことを、ワクワクしながら期待したい。

福澤 知浩

Tomohiro Fukuzawa

東京大学工学部卒業後、2010年にトヨタ自動車に入社し、グローバル調達に従事。同時に多くの現場でのトヨタ生産方式を用いた改善活動により原価改善賞を受賞。2018年に株式会社SkyDriveを設立し、「空飛ぶクルマ」と「物流ドローン」の開発を推進。経済産業省と国土交通省が実施する「空の移動革命に向けた官民協議会」の構成員として、「空飛ぶクルマ」の実用化に向けて政府と新ルール作りにも取り組む。Forbes JAPAN「日本の起業家ランキング2023」のTOP20に選出、MIT Technology Reviewの「Innovators Under 35 Japan 2020」を受賞。

Richard Liu

2017年よりEHangのCFOを務める。21Vianet Group, Incの財務グループ副社長兼新規事業グループ最高財務責任者を務めた経験を持つ。1996年に上海交通大学で工学の学士号を、2003年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校アンダーソン経営大学院で経営管理の修士号を取得。中国公認会計士協会会員。

Hon Lung Chu

シンガポールでVolocopter初の商業エアタクシー・サービスを立ち上げ、この新しい移動手段の最も有望な市場の1つを開拓した責任者。Volocopter以前は、カリフォルニア州サンタモニカに本社を置く無人交通管理(UTM)企業であるAirMapのAPACビジネスオペレーション責任者として、都市型エアモビリティの業界を経験。また楽天、Twilio、Googleで米国とアジアにおけるビジネスと技術の分野で活躍した経験もある。デューク大学にて電気・コンピュータエンジニアの教育を受け、ハーバード・ビジネス・スクールにてMBAを取得。

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