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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

小林武史×小橋賢児 トークセッションレポート「バーチャルがリアルを拡張し、カルチャーが都市を変えていく」

2023年2月に開催された、「City-Tech.Tokyo(シティテックトウキョウ)」のレポートをお届けする連載企画。

 

第4弾の今回は、小林武史氏と小橋賢児氏によるトークセッション「Culture×City論 –食・アート・エンタメで彩るサステイナブルなまちづくり–」の様子をレポートする。

アート、食。「自然の一部である自己」を感じる「都市」計画

都市をとりまくインフラはどんどん便利にアップデートされ、メタバースやDXの浸透により、これまでの常識では考えられなかったことが可能になっていく時代。私たち人間がその恩恵を享受する一方で、気がつくと、都市を囲む景色の画一化が進んでいることも否めない。どこの街も駅前は似たような景色、初めて降り立った街のはずなのにどこか既視感がある……。そのさまに、なんだか寂しさを感じることもある。

 

だからこそ、カルチャーのパワーが必要だ。同セッションでは、カルチャーのパワーで都市のあり方をより価値あるものにするさまざまな目的のプロジェクトを仕掛ける、音楽プロデューサー・小林武史氏と、イベントプロデューサー・小橋賢児氏という、クリエイティブの第一人者である二人の話が伺えた。

 

小橋氏「僕自身も東京で生まれ育ったのですが、それこそ若いときは本当にいろんな文化があったなと思うんですよね。バブルが崩壊してDCブランドブームがなくなり、原宿の地価が下がったことによって、若者が裏原宿という『場所』を開拓した。そこでアパレルを始めた子が、今やパリコレに出るようなメゾンブランドを立ち上げたり。そういった『文化が形成されるさま』を見てきました。どんどん『都市化』が進む中で、海外のすごいものや新しいものが入ってくるんですけど、一方でいろんなものが均一化されていったような気がします」

 

「カルチャー」×「都市」の事例としてまず紹介されたのが、小林氏が代表を務める株式会社KURKKUが手がける、千葉県木更津市の複合施設「クルックフィールズ」。約9万坪の広大な敷地では、そこで育まれた農畜産物をダイレクトに味わえたり、生命の循環を表現するアートに触れられたりと、多様な暮らしの拠点を提案している場所だ。

 

小林氏「コミュニティとしても機能する、新しい概念の『村』を作りたい、と思ったのがはじまりです。僕ら人間が今ここにいる根源は、太陽の光にあります。僕自身、スタジオに閉じこもって太陽と縁遠い暮らしをしていた人間でした。だからこそスキューバダイビングなどで、太陽が人間に『豊かさ』や『繋がり』を供給してくれると実感するんです。それを、表現したいと思いました。僕たちが知り得ていることは宇宙視点だと一端ではありますが、そういうものを表現できるものが音楽やアートだったりもします。人間は、それを表現するところまできました。それはすごいおもしろいことだと思うし、矛盾の中で進化してきた僕たちだからこそ提案できることがあると思っています」

 

「サステイナブルな場所を作る」がベースのコンセプトとしてありながらも、カルチャーに触れることで、日常とはまた違うスイッチを入れ、生きることの本質を学べる場所でもある。まさに、「いのちのてざわり」が感じられる場所だ。

 

小林氏「木更津は、自然も多いですが東京にも近い、いわゆる『自然』と『都市』が共生できる場所です。ここなら、人間も自然の一部でもあることを体感できるプラットフォームとなり得る。この場所が、人々に気づきを与えられる場所になれたら」

人の心を震わせるイベントで、「都市」を作り上げていく

総じて「都市」と「自然」は対極で語られがちだが、実はこの二つは隣り合わせにあり、共存するべきものだ、と小橋氏。人間が進化の過程で生み出したテクノロジーが都市を発展させた事実と、人間が自然に還るということは両立できるというのだ。

 

小橋氏「人間にとって一番必要なのは、特にこのコロナ禍で顕著になったと思うのですが、『心』の部分です。そんな『心』を震わせるものこそが、カルチャーでありエンターテインメントです。例えば、地方の文化としての祭りや都市におけるイベント。日本人は特に、周りの目を気にして同調圧力を感じ、自分をさらけ出せないことが多くあります。イベントという、日常から離れた非日常空間で実感する圧倒的な解放や感動により、普段の思考から外れ、閉ざしていた感情に気づくことがある。そういった意味で、都市におけるエンターテインメントの必要性は大きいと思うんです」

 

地方には古くからの文化である祭りがあるように、同じように都市には心を震わせるエンターテインメントがある。

 

小橋氏「都市にこそ、イベントが必要です。そして、その華やかな部分だけではなく、それを作り上げていくプロセスが大切です。地方における『祭り』とは、その地域の中で、世代を超えて、時代を超えて、繋がっていく。そして文化が継承されていく。都市も同じです。『エンターテインメント』を介して、都市が作り上げてられていくことをより実現していきたい」

バーチャルがリアルを拡張し、カルチャーが都市を変えていく

「シティテック」という言葉ひとつをとると、テクノロジーの力で街を便利にする文脈が語られがちだが、本当に、そうなのか。

 

小橋氏「テクノロジーとは、ただ世の中を便利にするだけのものではなく、私たちの『リアル』を拡張してくれるものです。例えば『メタバース』と『リアル』はバーサスで考えられがちですが、いろんな『都市』があるように、『メタバース』という一つの場所ができただけだと考えるとわかりやすい。そしてリアル世界だとルールとして不可能なことも、メタバースでなら実現し得ることもあります。小林さんが『クルックフィールズ』といった一つの『村』を作ったように、村を作ることだってできるわけです」

 

ダイバーシティが叫ばれているご時世だが、メタバース上では、多様であることが当たり前だ。さまざまな国籍、さまざまな文化。いろんな考えがそこにはある。そんなメタバース上だからこそ、リアルな声を発することもできたりする。そうしてテクノロジーは人のメンタリティをも、覚醒させる。

 

小林氏「垣根をいかに、取り払うか。同時に、コミュニティをいかに大切にしていくか。僕らが深層でどう繋がっていくか。みたいなことを実感できる場を提供していきたい」

 

小林氏総合プロデュースのもと、2023〜2024にて千葉・房総で開催予定の芸術祭では、100年後の未来を見据え、アートとクリエイティブとテクノロジーの力を社会に還元するプロジェクトが行われる。自然の循環、カルチャー、テクノロジー。これらが無数に掛け合わさり、人間の本質をゆさぶっていく。それにより構築される『都市』こそが、本当の意味で持続可能であるのかもしれない。小林氏や小橋氏が紡ぐプロジェクトに、これからも注目したい。

小林 武史

Takeshi Kobayashi

Mr.Childrenやback numberなど数々のメガヒットを生み出している日本を代表する音楽プロデューサー、キーボーディスト。2003年、持続可能な社会に向けた活動を担う非営利組織「ap bank」を設立し、環境プロジェクトへの融資や野外音楽イベント「ap bank fes」を開始。東日本大震災後には被災地での復興支援活動を開始し、宮城県石巻市・牡鹿半島で総合芸術祭「Reborn-Art Festival」を開催する。2019年には循環型農業施設「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」をオープンさせ、持続可能な社会への取り組みにいち早く先鞭をつけてきた総合プロデューサー。

小橋 賢児

Kenji Kohashi

1988年に子役としてデビューし、NHK「ちゅらさん」など数多くの作品に出演。2007年に俳優活動を休止し米国留学などの後、映画、イベント制作を開始。12年に映画「DON'T STOP!」で監督デビュー。以降は、「ULTRA JAPAN」などを日本で実現させ、クリエイティブディレクターも務めた。17年からは花火エンターテイメント「STAR ISLAND」の総合プロデュースや、500機のドローンを使用したショー「CONTACT」を仕掛けた。東京2020パラリンピック競技大会では、閉会式のショーディレクターを務め、2025年に開催予定の日本国際博覧会(大阪・関西万博)催事企画プロデューサーに就任。

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